算数が苦手で子どもに質問されても分からない! そんなとき親が言ってはいけないNGワードは?【算数教育のプロがアドバイス】

子どもが「この問題を教えて?」と算数の教科書を持ってきたら、どのように対応しますか? なかには算数が苦手な保護者の方で、子どもに教えてあげられないことを悩んでいる方もいらっしゃると思います。お友達は親が教えているなんて話を聞くと、「私のせいでうちの子は遅れを取らないだろうか」と不安になりますよね。
今回は「親が算数が苦手な場合にどう対応するか」についてお伝えします。
 
執筆/今木智隆(『小学生30億件の学習データからわかった 算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』著者)

親自身が算数が苦手なことを子どもに伝えるべきか?

子どもが高学年になってくると、小数の計算や桁の多い掛け算・割り算が出てきたり、文章問題も複雑になってきたりと、大人でもちゃんと考えて解かないとすぐに教えられないような内容が増えてきます。

「教えてあげられるギリギリがこの辺りかも…」となったとき、自分が算数が苦手でこれ以上は教えられないということを子どもに伝えるべきでしょうか?

苦手であることを無理に隠す必要はない

算数が苦手なことを伝えるべきかどうかは、「どちらでも良い」という回答になります。

子どもに算数が苦手だとあえて言わなければならないものではありませんが、ただ、強がって分かっているフリをしてまで、苦手であることを無理に隠す必要もありません

例えば「えー!算数はあまり得意じゃなかったけど、解けるかなぁ……。難しい勉強をがんばっているんだね!」というように、分からないことを気まずく思ったり引け目に感じたりせず、サラッと伝えてみると良いでしょう。

伝えるときはニュアンスに気を付ける

このとき少し気を付けたいのは、伝えるときのニュアンスです。伝え方によっては、子どもの算数学習に対する意欲を下げてしまうこともあるからです。例えば次のような言い方をしたとき、子どもはどう感じるでしょうか。

「算数は分からないから私に聞いても無駄だよ(自分でやってね)。」

とても突き放されたように感じると思います。親は分からなくてもいいと思っているのに自分はなぜ勉強しなければいけないの?と疑問に思うかもしれません。「自分にとっても難しい問題だけど一緒に考えてみるよ」という姿勢が伝わる言い方ができると良いですね。また、

「私も算数は苦手だったから、(あなたも苦手なのは)しょうがないよ。」

この言い方はどうでしょうか。もしかしたら、親は子どもを励ますつもりで言っているのかもしれませんが、子どもによっては「できなくてもしょうがないんだ」と苦手意識を強くしてしまう可能性があります。

お子さんに算数が苦手だったことを伝えるなら、私「は」苦手だったという言い方をして、私「も」苦手だったと子どもを巻き込む言い回しにならないよう注意しましょう。

苦手な算数を子どもにどうやって教える?

では、家庭での学習はどのように見届ければよいでしょうか。「周りの友達は親が勉強を教えている」と聞くと不安に思うかもしれませんが、実は親が教えることには参考記事のような弊害もあるのです。

▼参考記事

親の教え方が子どもの成績を下げる⁉ 教育熱心な家庭で起こりがちな「逆効果」とは【10億件の学習データで検証】
「友達のおうちでは、パパとママが勉強を教えてくれるんだって。いいなあ」と羨ましがるうちの子。勉強を見てあげたい気持ちは山々だけれど、うちは両...

苦手な子の気持ちが分かるのは有利

親が算数が得意な場合、熱心に教えるあまり「どうして分からないの?」などと子どもが理解できないことを責めてしまうことがあります。

その点、自分も算数が苦手だったと自覚する親は「難しいよね」「何度聞いても分からないこともあるよね」「どうして分からないの?って、それはこっちが聞きたいよね」と、算数が苦手な子ども側の気持ちを理解してあげることができます。

親が共感して自分の味方でいてくれるというのは、子どもにとって心強いことです。親が苦手なことはデメリットばかりではないことも、あわせてお伝えしたいです。

先生のように教えなくてもよい

親は「先生」である必要はありません。ですので、勉強を先生のように教えてあげなくてもよいのです。

このように聞くと、保護者が算数が苦手であっても何も問題ないことを分かっていただけると思います。おうちの方は「教える」以外の方法で、お子さんの学習をサポートしてあげることができます。

親が教えなくてもいい! 学習の理解を助ける3つの方法

では具体的にどのような方法で学習をサポートすればよいでしょうか。

❶ 問題文を一緒に読み上げてあげる

文章問題が分からないときは、国語の音読のように、問題文を声に出して一緒に読んであげましょう。

1文ごとに立ち止まって、「ここまでは分かる?」「りんごを2つ買ったんだって」などと問題文の内容を確認します。このように進めると、ただ文章を一緒に読んであげただけなのに、進めている途中で子どもが自ら「そういうことか!」と解き方に気付くことも多いです。ぜひ試してみてください。

おうちの方は解き方が分かっていて、子どもが気付けない場合は、おうちの方が気付いたふりをして、「あっ、もしかしてここをこうすればいいのかもよ!」とヒントを与えてもよいでしょう。あくまで子どもが主体となって問題を解くことが大切です。おうちの方がしびれを切らして代わりに解いてしまうことのないように、上手に導いてあげましょう。

➋ 逆に「教えてほしい」と言う

2つ目は子どもに「分からないから教えて」という方法です。知識は人に教えることで言語化され、より理解が深まると言われています。本当は知っていても、わざと知らないふりをして尋ねてみるのもよいでしょう。

子どもは自分が教えてあげられることがうれしくて、一生懸命に考えて色々と説明してくれるはずです。ぜひたくさん褒めてあげながら、「すごいね! へぇ~そうなんだ! 知らなかった!」とオーバーリアクションで聴いてあげてください。

❸ 下の子の宿題を見てもらう

学習の理解を助けるという点では、お手伝いの一環として、きょうだいがいれば下の子の宿題を教えさせるという方法も有効です。

自分より年下の子に教えるわけですから、どう教えたら分かりやすいだろうかと説明の仕方を考えます。あれこれ教え方を工夫することで、本人の理解も深まるのです。

誰かに頼られたり、さすがだねと言われるのはうれしいものです。もちろん本人も自分の宿題や学習で忙しいので配慮は必要ですが、喧嘩にならない程度に、下の子に教えてあげてとお願いしてみるとよいでしょう。

子どもの話を聞いてあげることが大切

今回は、保護者が算数が苦手なとき、子どもにどう教えたらいいかについてお話ししました。おうちの方は先生のように上手く教える必要はありません。頑張って教えようとするよりも、子どもの話をしっかり聞いてあげることが大切です。

これは算数に限らず言えることです。子どもの興味を聞いてあげることで知識の定着度は高まります。苦手な分野があっても引け目に感じず、逆に子どもから教わる気持ちでコミュニケーションをとるようにすれば、何も問題ありません。学習が楽しくなるような声掛けやサポートをしてあげてください。

あなたにはこちらもおすすめ

算数のプロ・今木智隆さん、子どもを算数好きに育てるにはどうしたら?「日常の中で算数の土台づくり、我が家はこうしてます」
まずは子どもの性格、得手不得手を見極めよう 今木「やみくもに練習問題をやらせても、算数の力は伸びません。まずは、子どもの性格や得手不得手を...

記事執筆

今木智隆|RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。ユーザー行動調査・デジタルマーケティングのbeBitにて国内コンサルティング統括責任者を経験後、2014年、RISU Japan株式会社を設立。小学生の算数のタブレット学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムを考案。国内はもちろん、シリコンバレーのスクール等からも算数やAI指導のオファーが殺到している。

〈タブレット教材「RISU算数」とは〉

「RISU算数」はひとりひとりの学習データを分析し、最適な問題を出題するタブレット教材。タイミングの良い復習や、つまずいた際には動画での解説の配信を行うことにより、苦手を克服し得意を伸ばします。

期間限定のお試しキャンペーンはこちら≪

小学生30億件の学習データからわかった 算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法

https://www.amazon.co.jp/%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E7%94%9F30%E5%84%84%E4%BB%B6%E3%81%AE%E5%AD%A6%E7%BF%92%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%8B%E3%82%89%E5%B0%8E%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%82%8B-%E7%AE%97%E6%95%B0%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%B8%80%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%8230%E4%BA%BA-%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E7%A9%B6%E6%A5%B5%E3%81%AE%E5%8B%89%E5%BC%B7%E6%B3%95-%E4%BB%8A%E6%9C%A8%E6%99%BA%E9%9A%86/dp/4866516488?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2XEPO36S8BQQW&keywords=%E7%AE%97%E6%95%B0%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%B8%80%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%8230%E4%BA%BA%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E7%A9%B6%E6%A5%B5%E3%81%AE%E5%8B%89%E5%BC%B7%E6%B3%95&qid=1688366443&sprefix=%E7%AE%97%E6%95%B0%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%B8%80%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%8230%E4%BA%BA%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E7%A9%B6%E6%A5%B5%E3%81%AE%E5%8B%89%E5%BC%B7%E6%B3%95,aps,520&sr=8-1&linkCode=sl1&tag=shogakukanadk-22&linkId=f2f3842d97e51af0832d79735764b07f&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl
文響社より2023年7月6日刊行

構成/HugKum編集部  

編集部おすすめ

関連記事