『小学館の図鑑NEO 音楽 DVDつき』3つの魅力
【その1】300種類以上の楽器の演奏が聞ける
スマホやタブレットから二次元コードを読み取ると、そのページに掲載されている楽器を演奏している音源や動画を視聴することができます。合計300分以上! そのほとんどがこの本のために録音・撮影したものです。ピアノなどのなじみのある楽器から、見たことのない不思議な形の楽器まで、どんな音が鳴るのか気軽に聴き比べることができます。
【その2】世界中の音楽と楽器を網羅。多様性豊かな音楽の世界へ誘う
音楽と聞いて多くの人が思い浮かべるのはクラッシックやピアノ、ヴァイオリンなどの楽器かもしれません。この本には、ヨーロッパたけでなく、アジア、オセアニア、アフリカ、アメリカ大陸と、世界中の音楽や楽器が掲載されています。楽器ってこんなに種類があるの? 地域によって演奏の雰囲気が違う! など幅広い音楽の世界を発見できます。
【その3】ドラえもんがナビゲートするDVD付き
特典のDVD(5番組70分)では、マイクなしでも音が響くコンサートホールの秘密、楽器のつくられる様子のクイズ、大人気の曲『にじ』を使って子どもたちの歌のお悩みを解決していく上手な歌い方のレッスンなど、本編とは異なる角度で音楽の魅力を紹介します。
音楽を通じて子どもが興味を広げるきっかけつくりたい――担当編集者の思いとは
新しい音楽の世界との出会いをもたらしてくれる『小学館の図鑑NEO 音楽 DVDつき』。子どもはもちろん、学校を卒業してから音楽と接点がなくなってしまった大人にもおすすめの一冊です。HugKum編集部は、この本を編集した小学館図鑑編集部の大藪百合さんに、この本に込めた思いや、おすすめの楽しみ方について伺いました。
世界中の音楽を一冊にまとめた本がなかった
――音楽の図鑑をつくろうと思ったきっかけを教えてください。
大藪:私の息子は3歳からヴァイオリンを習っています。最初は楽しく弾いていたのですが、途中で難しくなり壁にぶつかった時期がありました。そのときに、広い意味で音楽を楽しもうと、様々なジャンルのコンサートに行くようになりました。コンサートに行くと、ヴァイオリンに似た楽器がいろいろ演奏されていて、ヴァイオリンの仲間はほかに何があるのだろうと親子で調べるようになりました。やがて、弦楽器の構造や、歴史、どうやって音が出るのかと探究するうちに、別の楽器にも興味が湧いて、息子より私のほうが夢中になってしまいました(笑)。やがて、各楽器の本やオーケストラについての本はあるけれども、世界の音楽を一冊にまとめた本はないことに気が付きまして、それならば、「図鑑NEO」で作ろうと思いました。
――なぜ二次元コードから音を聞けるようにしたのですか?
大藪:現代の子どもは好奇心の種を見つけることさえできれば、インターネットなどでいくらでも調べることができます。写真だけでなく、音からも新たな音楽や楽器の魅力に出会う機会をできるだけ増やしたいと思って、DVDとは別に、二次元コードから手軽に音源を聞くことができるようにしたいと思いました。もちろん、私自身が音を聞きたかったという純粋な理由もあります。
先入観のない子どものうちに広い世界と出会ってほしい
――とくにこだわったポイントはありますか?
大藪:これからの時代に合った新しい図鑑をつくりたいと思い、世界中の文化の多様性を尊重することを心がけました。ピアノやヴァイオリンだけでなく、世界各地の楽器や音楽をできるだけ平等に扱っています。先入観のない子どものうちに、世界に触れることが大切だと考えているからです。
もう一つこだわったのが、できるだけ現役の演奏者に愛用されている現在も音の出る楽器を掲載し、その写真に写っている楽器そのものの音を聞けるようにすることです。そのために、ほとんどの楽器を新規で撮影・録音することになりました。
――刊行までにどれくらいの時間がかかったのでしょうか?
大藪:つくろうと覚悟を決めてから5年くらいですね。撮影だけでも3年かかっています。300種類以上の楽器のリストをつくり、その演奏者を探します。楽器をスタジオにお持ちいただいて、一つに対して数時間かけて撮影しますので、気の遠くなる作業でした。
撮影が大変だった楽器 TOP3
――楽器の撮影は難しそうですね。
大藪:木、金属、漆、布など、いろんな素材が使われていて、形も大きさも多種多様なので、それぞれの個性をかっこよく引き出すためのライティングが大変でした。カメラマンが大変だった順に3つ紹介しますね。
- 第3位 パイプオルガン
コンサートホールなど建物に組み込まれているのではなく、楽器全体が見えるパイプオルガンを探しました。大きくてスタジオに運び込めないので、ロケをしたのですが、設置されている聖堂のなかがとても暗かったので、大量に照明機材を持ち込んで撮影しました。これは日本の聖堂のためにつくられたオルガンなので、七宝焼で装飾が施されています。こういったところまできれいに写るようにこだわっています。
- 第2位 スーザフォン
ブラスバンドで使われる楽器です。自立しない楽器のほとんどはテグスで吊って撮影しているのですが、スーザフォンは分解できる構造なので、吊り方によってはパーツがはずれてしまいます。重心も不安定ですし大きくて重いし、金属なので映り込みもあり、素敵な楽器ですが撮影は大変でした!
- 第1位 コントラバス
これも大きくて不安定な点で苦労しました。かなりの重量なのに、足元のエンドピンのみで支えています。この楽器に限りませんが、大変高価なものが多いので、その点でも冷や汗が出ました。さらに、木製の楽器の表面には、職人による絶妙なカーブがつくられていて、それを1枚の写真で表現するのが大変でした。普通に撮るとのっぺりしてしまうのですが、この写真は楽器の持ち主である音楽家があまりの美しさに感激してくださいました。カメラマンの腕に感謝しかありません。
インドの国宝級ミュージシャンも登場
――さまざまな国の演奏家が写っていますが、海外でも撮影したのですか?
大藪:海外に行くこともありましたし、来日中の演奏家にお越しいただくこともありました。キューバは音楽大国で素晴らしい音楽文化があるにもかかわらず、なかなか新しい写真や動画でよいものが見つけられませんでした。ですので、キューバやメキシコではロケをしました。
ガタムというつぼのような楽器を演奏しているのは、インドの国宝級のミュージシャンのT.H.ヴィック・ヴィナーヤークラムさんです。来日するという情報をキャッチして、小学館に恐れ多くも来ていただきました。インド音楽界隈では、この図鑑どうなっているんだ!? 子ども向けかと思ったら、本格的すぎるぞ!? と、ざわめいたそうです(笑)。
――この方は、初見で映像を見た時でさえ、ただならぬ感じがして惹き込まれました。楽器を演奏する子どもの写真もありますね。
大藪:実際にその楽器を習っていて弾ける子にこだわって撮りました。ポーズで吹いているわけではありません。たとえば、この写真の尺八を吹く子ですが、本気で演奏に向き合っていないとこの表情にはなりません。
マリー・アントワネットが聞いた伝説のヴァイオリンも
――カバー裏にはヴァイオリンのストラディバリウスが掲載されていますね。私でも知っているほど大変有名な楽器ですが、これも新規で録音したのですか?
大藪:はい。この本のために録音しました。ストラディバリウスは、イタリアのストラディバリ家がつくったヴァイオリンのことで、そのなかでもアントニオ・ストラディバリがつくったものが人気です。そのアントニオのつくったうちの一つが、掲載した「サン・ロレンツォ」で、マリー・アントワネットお抱えのヴァイオリニストが所有していたことから、マリー・アントワネットが音色を聞いたと言われています。それをヴァイオリニストの川久保賜紀さんに、演奏していただくことができました。独特な味わいのある音色は、ほかのヴァイオリンのものとは異なります。
実は存在した!? 50年近く前の音楽の図鑑
――音楽の図鑑はこれまでにもあったのでしょうか?
大藪:音楽の企画を準備している頃に、50年近く前の『学習図鑑シリーズ26 音楽の図鑑』を発見しました。小学館が立ち上げた学習図鑑の最初のシリーズのうちの一冊です。日本の音楽教育では、ヨーロッパのクラシック音楽が中心で、それ以外の音楽は少ししか扱われないことが多いのですが、この本では世界中の音楽を扱おうという意図が感じられます。私の目指す方向性と同じだと思って感動しました。
国という枠を取り払うことで、楽器の東西交流が見えてくる
――「世界の楽器」の章でこだわったポイントは何ですか。
大藪:この章は、世界中にたくさんの楽器があることを見たり聞いたりしてほしいページです。国や地域という枠を取り払って、一つの見開きにいろんな国の楽器が掲載されているのが特徴です。
たとえば「ウード・琵琶のなかま」のページが象徴的です。表紙にも大きく掲載したウードは、「楽器の女王」と呼ばれるアラブの楽器で、弦楽器を語る上で避けることのできない重要なものです。この楽器がシルクロードを渡ってヨーロッパでは「リュート」という楽器になり、インドでは「ヴィーナー」になり、中国では「琵琶(ピパ)」、日本に伝わると「琵琶(びわ)」に変化する。音楽に国境はないことがよくわかります。元をたどれば同じなかまですが、地域ごとに使われている素材が変わり、奏でられる旋律も異なります。
――話では聞いたことがありますが、ビジュアルで見せられると説得力がありますね。
大藪:それぞれの楽器が似ていますよね。一冊を通じて音楽の世界の時間や空間の広がりを感じていただけたら嬉しいです。
「恐竜」の図鑑との意外な共通点
――楽器の並び順にもなにか意図がありますか?
大藪:この本では音が出る仕組み別に5つに分類して掲載していますが、それぞれのグループのなかでシンプルなものから複雑なものになるように並べています。こうすると楽器の進化と多様化の過程も見えてきます。
自分の習っている楽器や知っている楽器を見るときは、ぜひ周りの楽器にも注目してほしいです。たとえば「ピアノのなかま」のページの前に、ピアノの源流となる「カーヌーン」というアラブやトルコ周辺地域の楽器のページがあります。ピアノの中身だけを取り出したみたいな楽器なので、関係がわかりやすいです。
逆に、一見似ているピアノとオルガンは、音のなる仕組みがまったく違うこともわかります。これは生き物の進化と似ています。サメとイルカは似ていますが、サメは魚類でイルカは哺乳類ですよね。異なるルーツを持ちながら、最終的に似た形に収斂進化していく。こういったことが私にとっては胸熱なんです(笑)。私が担当した『小学館の図鑑NEO 新版 恐竜』のノウハウが生かされています。
出会うことができたら、その先にも進める
――読者の子どもたちの反応はいかがですか?
大藪:読者アンケートに、好きな音楽のジャンルや楽器を答えていただく項目があるのですが、今回の本は、好きな楽器もページも見事にばらばらなんです。恐竜の本だったらティラノサウルス、昆虫だったらカブトムシと他の本では偏るのですが、この本はピアノやヴァイオリンが断トツで人気なわけではありません。もともと知っている楽器だけではなく、この本をきっかけにいろんな楽器に興味を持ってくれていることが嬉しいです。
――ここに掲載されている楽器は、習うこともできるのでしょうか?
大藪:巻末に協力いただいた演奏者の名前を掲載していますので、日本在住の方で教室を開いている方には習うこともできます。たとえばインドパーカッションの竹原幸一さんは、さきほど話題になったインドの国宝級の奏者に弟子入りした凄腕の方です。この方は、西葛西でガタムやムリダンガムの教室を開いています。もしこの図鑑で気に入った楽器が見つかったら、教室を調べてみたり、本物の音を聞きにコンサートへ足を運んでみてほしいです。
親子で音当てクイズや楽器作りもできる
――この本のおすすめの楽しみ方はありますか?
大藪:音当てクイズをするのがおすすめです。子どもだけでなく大人も楽しめると思います。音を流して、このページのなかのどの楽器か当てたり、楽器によって地域の特徴もあるので国を答えるクイズや、素材なども出題できますね。
ウクライナの楽器もロシアの楽器も載っていますし、アラブやユダヤの音楽も紹介しています。私の息子は、ニュースで出会った地域や国の音楽を聞いています。音を聞くと、記号としてしか認識できていなかった国を身近に感じることができるみたいです。絵本に登場する楽器を聞いてみたり、そんな使い方もできます。
ほかにも、音を聞きながらリズムを刻んでみるコラムや、家で簡単に作れる楽器の紹介など、読者が実際に手を動かすコーナーもありますので、ぜひ試してみてほしいです。
――最後に読者の方にメッセージをお願いします。
大藪:「図鑑NEO」のシリーズは、子どもたちに図鑑を出発点に世界へ興味を持ってほしいという想いでつくっています。音を聞いて、音楽そのものに興味を持つのはもちろん、歴史や国に興味をもってもいいのです。この図鑑が新たな好奇心の種との出会いの場になれば嬉しいです。
お話を聞いたのは
大藪百合さん
2010年、小学館に入社。マーケティング局宣伝グループで子ども向けの雑誌や本の宣伝を担当した後、図鑑の編集部に配属。これまでに『小学館の図鑑NEO』「新版 恐竜」「新版 宇宙」「新版 星と星座」などの編集を担当。1児の母。
絵画の図鑑の編集秘話はこちら
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小学館の図鑑NEO音楽の魅力が分かる!
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撮影/五十嵐美弥 取材・文/藤田麻希 構成/HugKum編集部