ワーママの約半数が経験するマミートラックの現実
マミートラックとは?
産休・育休復帰後、女性社員が比較的軽い業務や補佐的な業務の担当となり、出世コースから外れてしまう状況。
昨今のデータ(※1)でも女性の約半数がマミートラックを経験しています。
では、マミートラックに陥ると実際どうなるのでしょうか?
同期や後輩よりも出世・キャリアアップが遅れる
産休・育休で出たり入ったりしているうちに、同期や後輩が先に昇進し、出世の階級に差が出てしまったという方は多いのではないでしょうか。
評価する側も産休育休を取らず働き続けた社員と同等に昇進させるには、それなりの説得材料が必要になります。まだ成果主義に基づく裁量労働制ではなく、働いた時間による評価が色濃く残る日本の雇用システムでは、産休育休をとる社員や時短をとる社員はどうしても不利になる傾向があります。
定時、もしくは時短で帰る社員が残業できる社員と同等 、もしくはそれ以上の成果を出せば昇進の確度が上がりますが、現実問題それはとてもハードルが高く一部の超優秀で周りのサポートが充実したパワフルなワーママしか成せないでしょう。
業務量が減り社内ニート状態になる
第一線を外れ、業務負荷の少ない部署に配属になったり、担当になったりするので、仕事のタスク自体は減ります。
定時、もしくは時短で早退する時間でちょうど収まる分量であればまだいいのですが、産前バリバリやってきた人ほど、仕事がすぐに終わってしまうので、会社にいるのに仕事がない状況に。周りが忙しそうにしている中で、自分だけ仕事がないというのは辛いものです。
最悪の場合、社内ニート状態となりどんどんメンタルが病んでしまいます。
やりがいがなくなりモチベーションと自己肯定感が落ちる
そして、会社にいても仕事が少なく、サポート業務ばかりでやりがいもなく、「自分っている意味あるのかな…」など、どんどん負のループに陥ります。
たしかに、仕事と育児の両立はしやすいかもしれないけれど、会社にいる時間がだんだん苦痛になってきます。やりがいがなくなり、仕事での達成感もなくなり、どんどんモチベーションと自己肯定感が落ちて、転職を考えるようにまでなる方も多いのではないでしょうか。
自分がマミートラックかも?と思ったらまず考えるべきこと
復職してから、「自分がマミートラックなのでは?」と思ったら、まず考えるべきことをご紹介します。
マミートラックのポジティブな面にも目を向けて見る
マミートラックのネガティブな面ばかりがメディアでも強調されますが、ここでポジティブな面も考えてみます。
もし、復職後も第一線で働いていたらどうでしょうか。定時までに仕事を仕上げなければいけないプレッシャーと戦い、定時までに仕上がらなかった仕事は持ち帰って深夜残業になっていたと思います。保育園の呼び出しがあった時は、急遽仕事の調整をしてダッシュで向かわないといけないはず。
マミートラックで仕事が減って物足りないかもしれないけれど、育児との両立の面ではストレスが少ないのではないでしょうか。「隣の芝生は青く見える」ものなので、一度フラットにメリット面も見てみましょう。
社内の先輩ワーママがどうなっているか観察してみる
自分がマミートラックかも?と思ったら、社内の先輩ワーママがどうなっていったか調べてみましょう。復職後数年はマミートラックだったかもしれませんが、お子さんがある程度大きくなったら、また第一線で活躍されていたりしませんか?
これは会社の文化や方針によるところが大きいので一概には言えませんが、先輩ワーママが一度マミートラックに陥っても、また第一線に復活しているのならば、あなたも第一線に戻れる可能性が高いと思います。マミートラックが一過性のものなのかどうなのかを知ることで今後のキャリアの展望が見えてくるはずです。
早く抜け出したいと思ったらやるべきこと
それでもなお、マミートラックを抜け出したいと思ったら、次の3つの方法が考えられます。
① 会社や上司に相談し、自分の意志を伝える
マミートラックは意外と上司とのコミュニケーションであっさり解決するケースがあります。会社や上司がよかれと思って配属している可能性が高いからです。
ご自身の希望ややる気を伝えるのはもちろん、そのうえで何ができるかどうやって両立していくか真摯にアピールしましょう。
② 働ける時間が増えるようサポート体制を整える
働く時間が増えると、会社や上司も仕事を任せやすくなり、その結果評価につながる成果も比例して出しやすくなります。マミートラック脱出の糸口になるかもしれません。周りのサポートや、家事の外注化などで、働く時間を増やせるよう整えましょう。
③ 転職も視野に入れる
会社や上司に自分の意志を伝え、周りのサポート体制を整えても、それでも状況が変わらない場合は、転職を視野に入れましょう。最近は、フルフレックス、フルリモートを取り入れる企業も増えてきているので、マミートラックではなくても育児と両立しやすい環境も探せます。第一線でやりがいを持ちながら柔軟に働ける可能性もあります。
早く抜け出したいと思ったら、状況が変わるのを待つのではなく、ぜひ行動してみましょう。
マミートラック期を前向きに過ごす方法
では、ここからはマミートラック期を受け入れ、前向きに過ごす方法をお伝えします。バリバリ働くよりも余力が残しておけるので、ポジティブに上手く活用しましょう。
スキルも収入もやりがいも得られる副業に挑戦
マミートラックにはまり仕事量が減ったということは、終業前・終業後に体力が温存できるということです。朝早く起きる、もしくは子供の寝かしつけが終わった後の時間を利用して、副業にチャレンジするのはいかがでしょうか。
1日数時間だけでも、自分の好きな仕事ややりたかったことにチャレンジすると、やりがいも持て、収入もアップし、本業では得られないスキルも身に着けることができるので、一石三鳥です。
逆に、復職後も第一線で働いていたら、副業をする時間も精神的余裕もなかったと思います。本業1本で働くよりも、本業+副業の方が収入も増えるかもしれません。本業で生き生きできなくても、副業で生き生きしてメリハリをつけることができます。
バリバリ働けるようになるまで虎視眈々とスキルアップ
副業ではなく、資格試験やスキルアップに時間を充てることもおすすめです。また第一線で働くようになれば、勉強する時間も取りにくくなるので、今のうちに資格取得や勉強をしましょう。
資格やスキルアップがマミートラック脱出に役立つかもしれません。本業に関連した資格やスキルであれば、モチベーションが高いと評価されます。また自分の希望通りに働ける日に備えて虎視眈々と武器を磨いておきましょう。
自分の長期的なキャリアプランを見つめなおす
余力のあるマミートラック期に自分のキャリアを見つめなおすのもおすすめです。
人生100年時代と言われて久しいですが、定年の年齢も伸び、今よりもキャリアの寿命も長くなることが予想されます。今はキャリアが緩やかかもしれないけど、また働ける日も必ず来ます。
そして、キャリアの寿命が長くなれば、1社だけ経験する人はほとんどいなくなり、数社経験や職能も2つ、3つ持つのが当たり前になると思います。そんな時代なので、これから自分が仕事で何がやりたいか、どんなキャリアを築きたいか描いてみてください。そうすると、マミートラックが一過性のものであると気付くことができ、前向きにキャリアを描けると思います。
マミートラック期こそ前向きに過ごそう
世間的にも、マミートラックと聞くとネガティブな面ばかり強調されますが、マミートラック期をうまく活用できれば、きっと次のキャリアの扉が開くと思います。辛い、悔しい、物足りないなどのマイナスな感情が湧き、腐る気持ちも痛いほど分かります。しかし、それだと現状は何も変わらないので、未来へ視点を移しましょう。そうすることで、キャリアの展望もきっと明るくなるはずです。
マミートラックを腐って過ごすか、前向きに過ごすか。
どう過ごすかで、その先のキャリアが変わります。大きく飛ぶためには大きくしゃがむ必要があるように、今は準備期間と捉えて、虎視眈々と自分の希望通りに働ける日を楽しみに頑張りましょう。
※1:『子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究』 21世紀職業財団 2022 年https://www.jiwe.or.jp/application/files/4616/4371/0235/2022chosa_gaiyo.pdf)
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記事を書いたのは…
株式会社LASSIC代表取締役CEO。主に法人向けにマーケティングPR支援事業と個人向けにキャリアデザイン事業を展開し、自身も国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得。大手広告代理店勤務を経て、33歳で起業。自身が不妊治療と仕事の両立で悩んだ経験や“キャリア迷子”を経て独立した経験から、ワーママや女性のキャリア支援に尽力。会社設立から3か月後、第一子出産。現在は3歳&0歳の娘の子育てと起業に奮闘中。
※写真はイメージです