米国中心の世界秩序が変化
今日、世界ではウクライナ戦争やイスラエル・パレスチナ紛争などが続き、台湾周辺では軍事的緊張が続いています。そして、今年は米大統領選挙、もっと言えばトランプ氏の再選というシナリオが想定され、トランプ氏再選の場合、来年以降にどのような化学反応が生じるかに注目が集まっています。
では、2030年代、2040年代はどのような世界になっているのでしょうか。まず考えられるのが、「経済のグローバル化と世界の分断が並存する世界」です。冷戦時代、世界は米国主導の自由主義と、ソ連主導の共産主義という2つの世界に分かれ、両陣営は外交や経済など様々な分野で対立しました。その後、1991年にソ連が崩壊したことで、自由経済や資本主義が世界中に拡大。政治が経済に介入せず、経済を自由に回していく環境のもと、経済のグローバル化や企業のグローバルビジネスが急速に拡大したのです。
しかし、2010年あたりから中国の台頭が顕著になり、一昨年はロシアがウクライナ侵攻を開始。米国自身が内向きになっていることもあり、米国中心の世界秩序(経済のグローバル化)は徐々に勢いを失っていき、世界は分断への時代に突入しています。
分断の時代にも自由経済は続く
冷戦時代と違い、中国は経済や貿易においてグローバルなサプライチェーンに深く組み込まれており、中国と米国、中国と諸外国は経済や貿易で相互依存関係にあり、世界が分断の時代に突入したからといって経済のグローバル化、自由経済がなくなるわけではありません。米中の対立が深まり貿易を完全にストップすれば、両国とも大きな経済的被害に遭い、共倒れになります。分断の時代に入ったからといって、これまでの経済のグローバル化を止めることはできません。よって、2030年代、2040年代には、経済のグローバル化と世界の分断が並存する世界が我々を待っている可能性が高いでしょう。
グローバルサウスのシェアはますます拡大
もう1つは、グローバルサウスの台頭です。今日、世界では米中露などの大国が対立し合っている構図ですが、今後は中国やロシア以上に、インドに代表される途上国と呼ばれてきた国々の影響力が世界で飛躍的に高まるでしょう。今後の世界経済シェアでも、欧米によるシェアはより縮小し、グローバルサウスのシェアはますます拡大することが予想されています。2030年代、2040年代には、米国も一極、中国も一極、欧州も一極、グローバルサウスも一極というように、世界の力がよりいっそう分散化した世界が我々を待っているかもしれません。
これまでの流れが続くわけではない
実際、どのような世界になっているか、これはなってみたいと分からない部分もあり、ここで紹介したようなシナリオにならないかもしれません。しかし、確実に言えることは、我々日本人はこれまでのような経済秩序が中長期的に続くと誤認せず、米国がいつまでも昔のように世界でリーダーシップをとる米国ではないということを認識する必要があるでしょう。
この記事のPOINT
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①世界が分断の時代に向かっても、経済のグローバル化は続く
②インドを筆頭に、グローバルサウスが台頭する時代に
③私達は、これまでの状態が続くわけではないことを認識する必要がある
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。