脳の「報酬系」を刺激しやる気をアップ!ドーパミンによる活性化の仕組みと方法を解説

私たちが心地よさや幸せを感じるのは、脳内の「報酬系」が活性化するためです。やる気ホルモン「ドーパミン」と関連があり、脳内のメカニズムを活用すれば、やる気をコントロールできる可能性があります。報酬系が活性化する仕組みや方法を見ていきましょう。

報酬系とは何か?

「報酬系」とは、脳の神経回路の名称です。報酬と聞くと、仕事や役割に対する対価を思い浮かべる人が多いかもしれません。報酬と命名された理由やドーパミンとの関連性を解説します。

脳内の神経回路の1つ

報酬系は、脳内にある神経回路の一つです。報酬系という名称は、アメリカの心理学者ジェームズ・オールズによって命名されました。

そもそも「報酬」とは、行動を誘発する要因となるものです。空腹の人にとって、おいしそうなごちそうは報酬といえるでしょう。オールズらはラットの実験を通じ、脳内に報酬を求めるような感覚を生み出す神経系があることを発見しました。

報酬系は、中脳から大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)の側坐核(そくざかく)を経て前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)に至ります。報酬系を構成する細胞(ニューロン)は、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質を含んでおり、ドーパミンが側坐核に放出されると報酬系が活性化することがわかっています。

ドーパミンは「幸せホルモン」のひとつで、意欲や達成感に関わる脳内物質。ほかに脳の興奮を抑えリラックスさせるセロトニン、愛情や社交性に関わるオキシトシンなどがある。

報酬系ホルモン「ドーパミン」の特徴

ドーパミンの別名は、「報酬系ホルモン」「やる気ホルモン」「幸せホルモン」です。人が生きるために必要なやる気や幸福感、喜びなどをもたらします。

例えば、ある行為によってドーパミンが放出されると、人は報酬を得られたかのような幸福感や達成感を覚えます。脳はその感覚を学習し、再び報酬を得るために、その行為を繰り返し行うようになるのです。

報酬系のサイクルは、人間が生きるために必要不可欠なものです。しかし中には、アルコールやたばこ、ギャンブルに快楽を感じ、依存症になってしまう人もいます。

常習性のある行為は、報酬系に関与する「ドーパミン」の分泌を促すことが原因

報酬系が活性化するシーン

脳内でドーパミンが放出され、報酬系が活性化するのはどのようなときでしょうか? 代表的な三つのシーンを、具体的な例を挙げながら解説します。

予期せぬ幸運に恵まれたとき

最もわかりやすいのが、予期せぬ幸運に恵まれたときです。

宝くじで高額当選したり、馬券が大当たりしたりすると、「まさか当たるとは思っていなかった」と誰もが興奮状態になるでしょう。このとき、脳内ではドーパミンが大量に放出されています。

また、意外な人からあいさつをされる、褒められるといったシーンでもドーパミンが放出されます。めったに人を褒めない先生や上司から高評価をもらうと、思わずうれしい気持ちになるはずです。

うれしいことを期待しているとき

ドーパミンは、報酬や快楽が得られた瞬間にだけ放出されるわけではありません。不確実ではあるもののうれしいことが起こる可能性があるとき、またはうれしいことを期待しているときにも放出される事実がわかっています。

●誕生日に友人と会う約束をして、プレゼントをもらえるかもしれないとき
●宝くじを購入して、当たるかもしれないとワクワクしているとき
●好きな人に偶然会えるかもしれないと期待しているとき
●実現したらうれしい夢や目標を描いているとき

報酬系を意識的に活性化させたいのであれば、ワクワクするような夢や目標を掲げるのが有効といえます。

よいことが必ず起こるとわかるとき

よいことが確実に起こるとわかっているときにも、ドーパミンが放出されています。具体的には以下のようなシーンです。

●数日後に旅行を控えているとき
●表彰や昇進が決まっているとき
●通信販売で欲しいものを注文し、届くのを待っているとき
●好きなアイドルのライブに行く予定があるとき

普段から、自分にとってうれしい予定を多く入れるようにすれば、意識的にドーパミンの放出を増やせるでしょう。また、新しいことに挑戦したり、好きなことに熱中したりしているときも報酬系は活性化しています。

報酬系を刺激してやる気をアップさせるコツ

やる気が起きるのは、ドーパミンの分泌によって脳内の報酬系が活性化されるためです。この脳のメカニズムを利用すれば、自分はもちろん、子どものやる気も引き出せる可能性があります。

適度にごほうびを与える

やる気を引き出すには、適度にごほうびを与える方法が有効です。ごほうびをもらえるかもしれないという期待や、ごほうびをもらえたときの喜びにより、脳内の報酬系が活性化されます。

ごほうびというと、お金・食べ物・賞状・旅行といった「目に見えるもの」をイメージしがちですが、人から褒められることや喜ばれることも、ごほうびに該当します。

一方で適度にごほうびを与える方法は、外部からの働きかけによる「外発的な動機付け」です。一時的なやる気は引き出せても、長続きしない傾向があります。

スモールステップから始める

やる気の素であるドーパミンは、達成感を得たときにも放出されます。そのため小さな目標やタスクを設定し、一歩ずつ成功体験を積んでいく方法も有効です。

目標を設定する際は、現在の能力よりも少しだけ上を意識します。高すぎる目標はやる気を失わせ、低すぎる目標は達成感がありません。

子どもの場合は、このスモールステップの成功体験により、内側から自然にやる気を引き出すことができるでしょう。目標をクリアするごとに、肯定的な言葉を掛けてあげるのもポイントです。

意欲や興味など、内面の要因によって生まれる動機付けは、「内発的動機付け」と呼ばれます。すぐに効果は現れませんが、外発的動機付けに比べてやる気が長続きします。

報酬系の仕組みを知り、やる気を引き出そう

報酬系は脳内にある神経回路の一つで、やる気や幸福感をもたらすドーパミンと関係しています。ドーパミンが放出されて報酬系が活性化すると、次第にその行為が習慣化していきます。

報酬系は依存症と結び付けられるケースもありますが、メカニズムを理解した上で正しく活用すれば、自分自身や子どものやる気を引き出せるかもしれません。報酬系を刺激する際は、外発的な動機付けと内発的な動機付けをバランスよく活用することが大切です。

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構成・文/HugKum編集部

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