昭和22年から始まったPTA。今、その活動の意味が問われるところに来ていると思います
先日、今年小学1年生になるお子さんを持つお母さんから、こんな相談が寄せられました。
「子どもの入学説明会で【PTAについて】というお知らせが配布されました。そこには、PTAには入学と同時に自動的に加入になる。会費も学用品費と合わせて引き落とされ、役員は在学中に必ず1回すること、とあり驚きました。うちの小学校は加入率100%らしく、入らないことで嫌がらせされたり子どもが差別的な扱いをされたら嫌だなぁ…とは思うのですが、大体の人はイヤイヤ大変な思いをしながらやっているようです。そもそも加入は任意だということも知り、それならPTAに入らなければいいのにと思いました。加入しないことを選ぼうか迷っています。愛子先生はどう思いますか」
私は、そもそも今の時代にPTAが必要なのかと疑問に思っています。けれど、日本人って長く続いた文化を崩す事が苦手な民族です。
保護者(Parent)と教職員(Teacher)からなる団体(Association)が「PTA」。もともとは戦後(昭和22年)、マッカーサー率いるGHQが奨励した組織です。その目的は、民主主義を学校と家庭が共に推進することでした。
まさに、発足した当時から私の母はPTA活動をはじめ、5人兄弟の末っ子の私が小学生の時は副会長を務めていました。子どもたちの栄養状態を改善するための給食運動など、当時のPTAは学校を動かすような活動をしていました。実際、給食員が不足していたために、母は給食を作る手伝いに学校に行っていました。親の手を借りなければ、子どもたちの健康を保てなかった時代だったのですね。
他にも、行事のあり方など、古い学校文化を変革しようと先生たちともかなりぶつかり合いがあったようです。学校におけるPTAの役割がとても大きかったのです。
一方で、真摯なやり取りから良い関係を築くこともできたようで、母には子どもが卒業してからもお付き合いが続いていた先生が随分といました。
時代は変わって、今、PTAという組織が子どもにとって必要なのかと問われたら、私は、もうその時代は終わったのではと思うのです。親たちが入って子どもたちのために何かやることってあるのかしら?それに、親が入ることで学校が混乱することもあるし、PTAは子どもの育ちに役立ちますか?と聞きたい。
今の「PTA問題」は町内会と似ている。入らなければ煩わしいことから逃れられるかもしれないけれど…
「やりたくないけど、やらなくてはならないPTA」ということで、今、小学生のお母さんたちを悩ませる「PTA問題」を考えた時、あれ、これって「町内会」と似てると思いました。
「りんごの木」の園舎の一つは、住宅街の中の普通の一軒家なので町内会に入っています。町内会費を納めているし、ごみ当番も回ってきます。月に1回、日曜の朝に掃除の日があり、その日は、「りんごの木」の活動を知ってもらうためにも、地域の人たちとの大切なコミュニケーションタイムとして参加してきました。
近年、住民がだいぶ増えたのですが、聞くところによると、後からきた人たちは町内会に入らないのだそう。入っていないから、ごみは出すけど、片付け当番はしないし、もちろんお掃除の日にもやってこない。煩わしいことから逃れられるし、それって得じゃない、と思うかもしれないけど、何か困ったことがあった時、頼れるご近所さんという関係はすぐには作れません。町内会に入っていることで、面倒なこともあるけど、その分、人とのつながりは生まれます。
PTAも同じですよね。入ったら煩わしいかもしれない。でも気の合う人と出会って、人との絆が生まれる場になるかもしれない。
リスクはあるかもしれない。だけどPTAに加入しないことで子どもに負い目を感じる必要はありません
本来、PTAは任意加入なのだし、自由参加を謳っているところも増えてきたと聞きます。それぞれの価値観で判断をすればいいのです。だから、入らないという選択ももちろんしたっていい。
しかし、入らない選択をするのは少数派でしょう。嫌がらせや差別はないと思いますが、入らないことでPTA主催の行事などの案内が来ないとか、主催の講演会に参加できないとか、不都合は起こりえます。多数派に属さないと言うのは、親も子もリスクはあることは考えておくべきだと思います。
でも、少数派を選んだことで、子どもに悪いと思ったりはしないでください。潔く加入しない道を選んだ、あなた自身の価値観で決めたことなのですから。親自身がブレずに自分の人生を引き受けていれば、子どもは黙って親を引き受けるものです。それに、少数派の親を持つと、子ども自身も少数派でいることに慣れてきます。
母の時代はPTA活動に参加する方が少数派でした。だから、私もそのあおりを受けて、PTA活動が気に入らなかった先生から心無いことを言われたり、クラスの男の子からいじめを受けたりしたこともありました。でも、母が自分の考えに自信を持って行動しているとわかっていたから、母にはそのことは言えなかった。
後年、その頃を振り返った母から「あなたも私のせいでいじめられていたこともあったのかもね」と言われてびっくりしました。母もわかっていたのです。そんな母に育てられて、少数派でも恐くないという自分が育ったと思っています。
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記事監修
保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて半世紀。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。親向けの最新刊に『保育歴50年!愛子さんの子育てお悩み相談室』(小学館)がある。
構成/Hugkum編集部