補助金・助成金・交付金・給付金とは?
申請するともらえるお金には、補助金・助成金・交付金・給付金などがあります。それぞれにどのような違いがあるのか、疑問に思う人は多いでしょう。まずは、共通点や相違点を確認しましょう。
名前は似ているが目的や対象は異なる
補助金・助成金・交付金・給付金は、一定の要件を満たした場合に、国・地方自治体などから支給されるお金です。名前は似ていますが、目的・支給対象・管轄・金額・審査の有無などが異なります。
例えば、補助金は主に事業者に支払われるお金であるのに対し、給付金は個人を対象とするものが多くあります。言葉の違いについて、国が定義を定めているわけではありませんが、それぞれの意味と違いを理解しておくと、自分たちに合った制度を見つけやすくなるでしょう。
ほとんどは返還の必要がない
個人や企業がまとまったお金を必要とする場合、ローンを組んだり、金融機関の融資制度を利用したりすることが多いでしょう。それらのお金は、約束した期日までに返済する必要がありますが、補助金・助成金・交付金・給付金のほとんどは、返還する必要がありません。
自己資金を投入する必要がなく、金銭的負担が軽減されるのがメリットといえますが、支給の要件に該当しなくなった場合や不正受給が発覚した場合、本来の使途以外で使用した場合などは、返還を求められるケースがあります。
事前の申請を忘れずに!
それぞれの共通点は、事前の申請が必要なことです。基本的に「申請しなければもらえないお金」であるため、国・地方自治体が発信する情報を小まめにチェックして、早めに申し込む必要があります。
特に補助金や交付金には、計画書の提出や審査が設けられているケースが多く、支給までに1年以上の期間を要するものも珍しくありません。
なお給付金の中には、市町村から提供された所得情報を基に国が独自に給付を判定する「申し込み不要」の制度もあります。
補助金の基礎知識
補助金は、主に事業者の取り組みを資金面でサポートする制度で、経済産業省や地方自治体などが管轄しています。目的や特徴、補助金の具体例をチェックしてみましょう。
目的と特徴
補助金とは、国・地方自治体が一定の政策目標を達成させるために支給しているお金です。国の補助金であれば、経済産業省が主体となる場合が多いでしょう。
個人向けの補助金もありますが、大半は企業や個人事業主などの「事業者」が対象です。事業拡大や設備投資、経営改革などを目的とするものが多く、助成金や給付金よりも支給額は高額になるのが通常です。
予算や採択件数、申請期間などがあらかじめ決まっており、審査にクリアした者のみに補助金が支給されます。審査では、「制度の趣旨や目的に合致しているかどうか」が重視される傾向があります。
補助金の一例
補助金の種類は多く、毎年のように実施されているものもあれば、数回で終了するものもあります。代表的な補助金をいくつか紹介しましょう。
●IT導入補助金
●CEV補助金
●事業再構築補助金
IT導入補助金は、経営上の課題を解決するためのITツールを導入する企業を対象に、目的に応じた5種類の補助金が用意されています。
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)は、電気自動車をはじめとする「環境に優しい車」の普及を目的に設けられました。補助対象車両を購入した人は、車両ごとに決められた補助金を受け取れます。
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために事業再構築を支援する補助金です。業種の転換や新たな分野への進出など、大胆な挑戦をする中小企業などに対し、一定の補助金を支給します。
助成金の基礎知識
助成金は、補助金と似ている部分がありますが、支給の目的や管轄する主体が異なります。具体例を挙げながら、助成金の特徴を詳しく解説します。
目的と特徴
助成金は厚生労働省の管轄となるものが多く、雇用の維持や労働者の処遇改善、能力の開発などに取り組む企業が対象となることが多いです。
助成金を受け取るには一定の要件を満たす必要がありますが、経済産業省が実施する補助金と違って、厳しい審査は行われないのが一般的です。
例えば、65歳以上の高齢者や障害者、母子家庭の母といった就職が困難な人を継続的に雇い入れた場合、一定の要件を満たせば「特定求職者雇用開発助成金」が支給されます。
助成金の一例
助成金の種類は多岐にわたります。随時申請が可能なものと申請期間が決まっているものがあるため、スケジュールをよく確認しておく必要があります。以下は、助成金の一例です。
●キャリアアップ助成金
●若手・女性リーダー応援プログラム助成事業
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む企業が対象です。非正規雇用とは、パートや派遣労働者といった正規の雇用契約を結んでいない労働者を指します。
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業は、東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する助成金制度で、女性または39歳以下の若手男性が対象です。都内商店街で開業する場合、事業所整備費や店舗賃借料の一部が助成されます。
交付金の基礎知識
「補助金や助成金はよく見かけるが、交付金はあまりなじみがない」という人は少なくないはずです。交付金の主な支給対象は地方自治体です。どのような目的でお金が活用されているかを理解しましょう。
目的と特徴
交付金は、国・地方自治体が特定の目的のために支給するお金です。ただし実務上は、「国が地方自治体に対して支給するお金」を指すのが一般的です。補助金や助成金に比べると規模が大きく、数億円に上るケースも珍しくありません。
交付金を受け取った地方自治体の多くは、交付金の内容に沿った事業を企画し、地域の企業や団体にその運営を委託します。内容としては防災・地域活性化・インフラ整備・復興など、地域経済の活性化や地域課題の解決に関するものが多く見受けられます。
交付金の一例
国から地方自治体に支給される交付金の一例としては、以下のようなものがあります。
●地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
●出産・子育て応援交付金
地域脱炭素移行・再エネ推進交付金は、脱炭素の取り組みを積極的に行う地方公共団体に支給されます。脱炭素とは、温暖化の原因の一つである温室効果ガスの排出量をゼロにすることです。交付金を受けるに当たり、複数年度にわたる交付金事業計画を作成する必要があります。
出産・子育て応援交付金は、妊婦や子育て家庭への支援事業を行う地方自治体に交付されます。相談支援と経済的支援を組み合わせた事業を行うことが前提で、地方自治体から民間企業への委託も可能です。
給付金の基礎知識
国・地方自治体から支給されるお金の中で、個人との関わりが深いのが「給付金」です。実際に、育児休業給付や介護休業給付を受けたことがある人もいるのではないでしょうか? 目的と特徴を見ていきましょう。
目的と特徴
給付金は有事のときに支給されることが多く、補助金・助成金・交付金に比べて手続きがスピーディーです。個人が申請できるものが多いのも特徴でしょう。
基本的に審査はなく、要件を満たしていれば誰でも受給できます。ただし後から不正が発覚した場合は、給付金の返還を求められる点に注意が必要です。
支給された給付金の使途は限定されておらず、個々の事情に基づいて自由に活用できます。子育て世帯への給付金であれば、生活費に充てたり、子どもの将来のために貯金したりといった使い方が可能でしょう。
給付金の一例
給付金は、随時行われているものと臨時的なものに分かれます。代表的な給付金は以下の通りです。
●育児休業給付
●介護休業給付
●住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金
育児休業給付や介護休業給付は、雇用保険の被保険者が対象です。育児や介護で会社を休業する必要がある場合、一定の要件を満たすと給付金が受け取れます。
住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金は、新型コロナウイルス感染症の影響で家計が急変した人を支援する給付金で、現在は受け付けが終了しています。住民税均等割が非課税の世帯などを対象に、1世帯当たり10万円が支給されました。
国や自治体の制度を上手に活用しよう
補助金・助成金・交付金・給付金は、一定の目的のために支給されるお金です。名前が似ており共通点もありますが、目的や対象、受給のしやすさなどが異なります。基本的に事前の申請が必要なため、情報を知らない人はお金を受け取れずに終わってしまう可能性が高いでしょう。
国や自治体の制度を活用できれば、金銭的な負担が軽減されます。それぞれの特徴や違いを把握した上で、自分たちに合った制度がないかどうかを調べてみましょう。
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構成・文/HugKum編集部