【出産育児一時金 直接支払制度】手続きガイド! 制度利用に必要な条件と書類、注意点まで

出産には当然ですが、お金がかかります。厚生労働省保険局の調査によれば(2019年度のデータ)、全国平均が46万円となっています。しかし実は、その高額な出産費用を支援してくれる出産育児一時金制度があります。出産育児一時金について、さらには出産育児一時金の「直接支払制度」について、厚生労働省などの公的な情報を基にまとめます。

出産育児一時金  直接支払制度とは?

よく「出産一時金」といわれるものですが、正式には「出産育児一時金」といいます。このお金が支払われる制度を「出産育児一時金  直接支払制度」と呼んでいます。

出産育児一時金  直接支払制度とは?どんなお金?

出産は一般的な疾病とは異なるため、健康保険に加入している人でも健康保険を使うことができません。そこで出産した人に「出産育児一時金」を支払おうというのがこの制度の主旨です。

出産した人が加入している健康保険組合に、医療機関が直接出産費用の請求を行い、健康保険組合が出産育児一時金を医療機関に支払います。出産費用が出産育児一時金を上回った場合は、医療機関が差額分について出産した人に請求する仕組みです。

出産育児一時金の金額はこれまで42万円でしたが、2023年4月からは50万円に引き上げられました。

参考:全国健康保険協会

制度の目的は?

出産育児一時金 直接支払制度が始まったのは、出産に関わる経済的負担を軽減するためです。

厚生労働省保険局の調査によると、2019年度で出産費用は平均460,217円かかっています。公的病院なら443,776円と平均より低いものの、私的病院なら481,766円と、平均以上かかる場合もあります。出産では医療機関を利用することになるため何かとお金がかかりますが、これだけ高額のお金が必要となると、経済的な影響は小さくありません。そこで国が出産する人の経済的支援をしよういうのが、この制度なのです。

参考:出産育児一時金について(厚生労働省)

制度の対象者はだれ?

出産育児一時金を受け取るためには、一定の条件を満たしている必要があります。それは、主に次の2つです。

1)本人または配偶者が健康保険に加入していること
出産育児一時金は、健康保険から受け取れる給付金のため、健康保険組合に加入していることが条件です。本人が加入しているほか、配偶者が加入して扶養家族であることが必須の条件です。

2)妊娠4か月以降の出産であること
妊娠4か月(85日)以降の出産であることも条件のひとつです。もし流産、死産、中絶などがあった場合でも、妊娠4か月を過ぎていれば給付対象となるのです。

制度の利用方法:手続きのステップ

出産

出産育児一時金は自動的に受け取れるものではなく、申請しなければもらえません。必要書類と手続きのステップを見ていきましょう。

必要な書類と提出先

必要な書類は、次の通りです。

  • 健康保険証
  • 医療機関等から交付される合意文書(写し)
  • 出産費用の領収書(写し)

提出先は出産した医療機関です。

申請から受給までの流れ

申請するプロセスは次の通りです。まず入院するときに、出産育児一時金の直接支払いの申請と受取にかかる代理契約を医療機関と結ぶことになります。

  1. 入院するときに、保険証と申請に係る書類を医療機関に提出する
  2. 出産後、出産費用の明細書が医療機関から本人に交付される
  3. 医療機関が健康保険組合に請求を行う
  4. 健康保険組合から医療機関に出産育児一時金が支払われる
  5. 差額分が本人に請求される

制度利用のメリット

出産育児一時金 直接支払い制度を利用するメリットは、以下のようなものです。

出産にかかわる費用を立て替えなくていい

出産にかかわる50万円近い費用を自分で準備するとなると、その負担は決して小さなものではありません。しかし出産育児一時金直接支払制度を利用すると、出産にかかる費用を立て替えておく必要はありません。

健康保険組合から医療機関に直接一時金が支払われるため、出産した本人にはその差額分しか請求されません。妊娠、出産というプロセスの中で、経済的な不安を抱えることがなくなります。

手続きが簡単

出産育児一時金直接支払制度は、手続きが簡単ということもメリットです。揃えなければならない書類が多かったり、手続きが煩雑で時間がかかったりすると、出産という大きな出来事の中で負担が大きくなるでしょう。

しかし出産育児一時金 直接支払制度は、入院時に医療機関に健康保険証を提示して、必要な書類にサインするだけです。手続きがとても簡単で、手間もかかりません。

出産費用が50万円未満のとき差額を受け取れる

出産育児一時金で受け取れるのは、50万円です。出産費用が50万円よりも低かったら、その差額分を受け取ることができます。

必要書類を提出する必要はありますが、差額分が指定の口座に振り込まれるため、産まれた赤ちゃんの必要用品購入などにあてられます。

制度利用上の注意点

出産
「出産育児一時金直接支払制度」の注意点もチェックしよう

メリットの大きい出産育児一時金 直接支払制度ですが、いくつかの注意点があります。

制度利用のための条件はある?

出産育児一時金 直接支払制度には、利用するための条件があります。先にご紹介したように、健康保険に加入していることと、妊娠4か月以降の出産であることが条件です。これを満たしていない場合は、出産育児一時金を受け取ることはできません。

制度利用の注意事項

出産育児一時金 直接支払制度を利用するためには、医療機関に必要な書類を提出して手続きを行う必要があります。入院後に手続きを行う場合がほとんどですが、医療機関にどのようなプロセスが必要になるか、事前に確認しておくと安心できるでしょう。

出産育児一時金 直接支払制度についての疑問を解決

出産育児一時金 直接支払制度に関する、素朴な疑問について見てみましょう。

出産費用が50万円未満だった場合、手続きが必要?

出産育児一時金 直接支払制度は、事前に申請しなければ受け取ることができません。出産費用が、出産育児一時金の50万円を超えない場合でも、きちんと申請しておく必要があります。

海外で出産した場合はどうなる?

海外で出産した場合でも、出産育児一時金 直接支払制度の利用条件を満たしていれば、出産育児一時金を受け取ることが可能です。ただし出産した人が出産後に日本に帰国してから、申請を行うことになります。また出産した海外の医療機関や、出産した国の公的機関から発行された出生証明書とその和訳が必要になります。

詳しくは、管轄の自治体か健康保険組合に問い合わせましょう。

直接支払以外の方法はないの?

出産育児一時金は、この記事でご紹介した直接支払制度の他に「受取代理制度」と「産後申請」もあります。

「受取代理制度」は、小規模な診療所や助産所で出産した場合に、医療機関が本人に代わって出産育児一時金を受けられる制度です。また自分で出産費用を支払った後に申請するのが「産後申請」という方法です。

事前にチェックして賢く利用しよう

出産には大きなお金がかかります。また出産した後にも、子育てには何かとお金が必要になります。そんなときに、出産育児一時金は心強い存在となってくれます。決して難しい手続きが必要なわけではありませんから、事前にどうやって申請したらいいのかを確認して、条件を満たしているなら賢く利用しましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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