イスラエル支持の米国さえ、イスラエルに不満を募らせている
昨年10月7日以降、イスラエルとイスラム主義組織ハマスとの戦闘が激化し、イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けています。
両者の軍事力の差は歴然としていますが、イスラエルはハマス殲滅の軍事作戦を徹底し、ガザ地区で容赦のない攻撃を厭わず、パレスチナ側の死亡者数は3万5000人を超えています。ガザ地区の人口が約200万人だということからも、攻撃がどれほどのものかが分かるでしょう。
攻撃を停止しないイスラエルに対する国際社会からの批判が当然のごとく拡大し、これまでイスラエル支持に撤してきた米国さえも同国に不満を募らせています。
全米各地の大学で起きた反イスラエルデモ
そして、最近は全米各地の大学で学生による反イスラエルデモがエスカレートしました。これまでのデモを巡る逮捕者は2100人を超え、暴徒化した学生らは警官隊と衝突し、乱闘騒ぎにまで発展しました。
5月は各地の大学で卒業式が行われますが、たとえばミシガン大学ではデモ隊が卒業式を妨害し、治安当局に会場から排除され、バージニア大学の構内では警察がデモ隊を排除し、デモ隊のテントが撤去され、一部が警察に拘束されました。南カリフォルニア大学は4月、卒業式で総代を務めるイスラム教徒の学生によるスピーチが中止されたといいます。
なぜ反イスラエルデモが起きたのか?
なぜ、全米の大学ではここまで反イスラエルデモが拡大したのでしょうか。その背景は多々あるでしょうが、1つに若者たちの強い経済的不満があります。米国でも若者たちの間で経済格差や雇用は大きな社会問題となっており、大学の学費を払えない学生も多くいます。バイデン政権の4年間で経済は何も良くならなかったと不満を持つ若者が多く、トランプ政権の4年間の方が良かったと判断し、今回の選挙ではトランプに投票するという動きも広がっています。
バイデン政権のイスラエル擁護
バイデン政権は今日のイスラエルに不満を強めていますが、依然としてイスラエル擁護の姿勢は大きく変わっていません。こういった若者たちによる反イスラエル感情が鮮明になるのは、再選を目指すバイデン大統領にとっては良くない兆候と言えるでしょう。
世界における学生デモは?
日本国内で現在の若者たちがある問題で抗議デモを過激化させるなどは考えにくいでしょうが、米国をはじめ欧州や中東、アフリカなど諸外国で若者たちが政府に対する不満で暴力をエスカレートさせることは頻繁に発生しています。
特に、これまでにイランやチリ、ペルーなどではガソリンや小麦など生活必需品の値上げ、地下鉄など公共交通インフラの値上げによって一気に若者たちの抗議デモが拡大し、国内の治安が悪化したことがあります。
日本では考えにくいですが、今後も若者たちによる暴力的な抗議デモはあちらこちらで起こると考えられます。
この記事のPOINT
- ①全米の大学でのイスラエルデモの背景には、若者達の強い経済的不満がある
- ②上記経済的不満を理由としてバイデン政権にNOを突きつける学生も多く、トランプ氏の再選を望む人が増えている
- ③バイデン政権は今日のイスラエルの体制には不満を持っているが、依然としてイスラエルを擁護。より一層学生の反イスラエル感情が増幅している状況である
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。