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「まだ宿題やってないの?」こんな声かけばかりしていませんか
「まだ宿題やってないの?」
「いつまでゲームをしているつもり?」
このように、子どもにいつも同じような声かけをしていませんか? こんなことが続くと、言われた子どもも言った親もモヤモヤした気持ちになってしまいますよね。子どもがルールを守れるようになるためには、どのように接するのがよいのか、モンテッソーリ教師あきえ先生に聞きました。
学校から帰って来た子どもはとても疲れているという前提
子どもは毎日学校に行き、すべてを出し切った疲れた状態で家に帰ってきます。私たち大人も同じく、仕事などをやり切って帰っていますが、子どもよりも見通しがもてるので家事や育児をする余力を持たせていることが多いですよね。
しかし、子どもは帰ってきた時点でヘトヘトなので、「〇〇をしなくては!」という意志力が弱くなってしまうことがあります。まずはそこを理解することが大切です。
もうひとつは、児童期になると「もっと楽にできないかな?」などとより簡単に楽にできる方法を探る傾向にあります。さらにゲームやYouTubeは「もっとやりたい」と思わせるような工夫がされているので、そこを途中で切り上げるのは、子どもにとってはとても難しいこと、という前提を持つことも大切です。
その上で、子どもがルールを守れるようになる2つのポイントをお話します。
ポイント① 一緒にルールメイキングする
乳幼児期は「ここまではいいけど、ここからはだめよ」といった制限を設けて、子どもが守れるようなルールを作ることが大切でしたが、児童期に大切なのは「自己決定感」。もちろん乳幼児期も「自己決定感」は大切なため、選択肢を出して子どもが自分で決められるようにすることが大切です。しかし、児童期になると対話したり、話し合ったりして一緒にルールを決められるようになるため、ぜひ少しずつ一緒に考えて、ルールを作ってみてください。
ケース1:放課後にやっているゲームの時間を決める
親子で話し合い、帰宅後から夕飯までの時間に1時間ゲームをやってOKということになりました。
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母「1時間という時間はどうやってはかるの?」
子「タイマーをかける」
母「わかったよ。じゃあ、タブレットのタイマー機能を使って、1時間設定してからゲームをしようね」
このように決めていたものの、実際にやってみると「いいところだからもうちょっと」などと、時間を引き延ばすことが多くなりました。
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母「1時間を過ぎてしまうことが多くなっているから、もう一度ルールを見直してみようか?」
子「ゲーム中はタイマーを見ることができないから、終わりの時間に気づくことができない」
母「そうなんだ。じゃあ、お母さんが5分前になったら声をかけようか?」
子「うん! そうしてほしい」 -
★ルールがうまくいくポイントは?
- ゲームやタブレット使用についてのルールを決める時、その端末を使わない時は見えないところ(引き出しやボックスなど)に入れて、見えないようにするのも有効です。視界に入るところに置いておくと、「やりたい」と思うきっかけになることがあります。
ケース2:おやつの時間に食べてよいお菓子の量を決める
遊びながらお菓子を食べていると、ついお菓子を食べ過ぎてしまうため、量を決めることに。
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子「1日3個まではどう?」
母「いいよ。このお菓子ボックスの中から3個まで食べていいことにしようね」
子「わかった!」
このように決めていたものの、4個食べたり5個食べたりしていることも……。
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母「最近、お菓子の量が増えているよね?」
子「何個食べたかわからなくなっちゃうんだもん。1日ずつ食べるものを分けようかな?」
母「そうだね。食べる分だけ袋に分けておけば、間違えることがなくなりそうだね」 -
★ルールがうまくいくポイントは?
- お菓子など、食べる量を制限したいものは、子どもが目で見てわかるよう、はっきりと量を示してあげることが有効です。大人が思う「ほどよい量」と子どもが思うことが同じだとは限りません。
このように、一度決めたルールがうまくいかなかった時は、新しいルールメイキングし直したり、お試し期間を設けてたりすることも大切です。
ポイント② 決めたルールに対して子どもの合意を取る
大人が怒った状態で決めるのはNG
ルールメイキングする時に私たち大人が怒っていると、子どもは圧を感じて合意せざるを得ないこともあります。決めたルールに子どもが納得していないと、結局またルールを守れなくなることがあります。そのため、話し合いをするときには、怒った状態ではなく、子どもが話したいと思えるような心理的安全性の高い雰囲気をつくることが大切です。
家族で一つのルールを共有しよう
お互いが納得できるように、大人も子どもも落ち着いて話せるタイミングで、話し合うことがおすすめです。そして、ルールに関して「お母さんとお父さんで言っていることが違う」となると、ルールを守ることが難しくなるので、家族で一つのルールを共有することも大切です。その際は、お互いに尊重し合い、権利を侵害しないよう、気をつけるようにしましょう。「1日にしていいゲームの時間は1時間」「おやつの量はこの袋に入っているだけ」など、子どもにもわかりやすい仕組みを作ることは、ルールを守れるようになる近道にもなります。
子どもがルールを守れないことは悪いことではない
素直に言っても怒られない、守れるよう伴走してくる信頼関係が大切
我が家の小2の娘は、約束を守れない日々なのですが(笑)、私はその姿を見て「いいじゃん、いいじゃん!」と思っています。決められたことを守ることは大切ですが、守れないことも必ず出てくると思います。守れなかった時、それを素直に言っても怒られない、守れるように伴走してくれるという信頼関係を親子で作っておくことは、長い目で見ると大切なことです。
大人の自分は守れている?
そして、例えば「タブレットを見るのはは30分」などとルールを作っているにもかかわらず、大人はいつもスマホを見ていて、子どもからつっこまれるなんてこともよく聞きます。もちろん、相手に要求するのであれば、自分の行動も見直さなくてはいけないこともあります。しかし、仕事や然るべき用事でスマホを使っていることもありますよね。そんな時は、「今、仕事のメールを返信するね」「習い事の来月の予定をチェックしているよ」などと、子どもにコミュニケーションを取っていきたいですね。
中学生くらいからは、脳の発達の関係で、自制するより衝動性が一時的に上回ります。そのため、児童期にはやらなかったような危険なことをやってみたくなることがあります。しかし、そんな時も親子の信頼関係ができていれば、きちんと打ち明けてくれることでしょう。そして「あなたがしたいと思うことが悪いのではなく、そういう発達段階なのよ」と話してあげることができます。
児童期のルールメイキングはその先の親子関係においても重要
守ってもらいたいルールがあるからこそ、親の言い分を押しつけたようなルールを作ってしまうことがありますよね。しかし、児童期に親子でしっかりとルールメイキングすることは、親子の信頼関係につながっていくということがわかりました。その先の人生において、子どもを困ったり悩んだりした時に、正直に話してくれるようになるよう、今から考えていきたいですね。
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記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
取材/本間綾