9月の別名「長月」って何が長いの? 秋を感じさせる和名の由来と種類、季節行事を紹介【日本語の雅を味わう】

9月の別名としては、「長月」の他にも「菊月」「紅葉月」などが知られています。月名の意味や由来を知ると、日本の季節感をより楽しめるでしょう。9月を表すさまざまな別名とその由来、関連する行事などを見ていきます。

9月の別名「長月」の由来

9月の別名にはさまざまなものがありますが、一般的によく知られているのは「長月(ながつき)」です。どのような由来がある言葉なのか、見ていきましょう。

季節の変化や気候などさまざまな由来を持つ

長月という別名を見聞きして、「何が長いのか」不思議に思う人は多いでしょう。さまざまな説がありますが、代表的な由来は秋の深まりとともに日が暮れるのが早くなり、夜の時間を長く感じるという意味の「夜長月(よながづき)」です。

他にも、雨が長く降り続く長雨の季節だったので、「長雨月(ながめづき)」が「ながつき」に転じた説などがあります。また、稲が生長する季節であることから、穂長月(ほながづき)・稲刈月(いねかりづき・いながりつき)が由来とする説も知られています。

旧暦の長月は新暦の10月ごろ

旧暦と新暦では暦の種類が違うため、月名や日付にずれが生じます。旧暦では、月の満ち欠けをもとにした太陰太陽暦が使用されていました。新暦で使用されているのは、太陽暦の一つであるグレゴリオ暦です。

旧暦は一年ごとに季節と月日のずれが大きくなることから、閏月(うるうづき)で調整していました。一方、新暦は太陽の動きに合わせて作られているため、旧暦よりも季節と月日のずれが少なくなっています。

現代の暦と比べて旧暦は季節が1〜2カ月遅くなるので、旧暦の9月は現代の10月ごろの季節感です。

「長月」以外の9月の別名

旧暦と新暦には1~2カ月のずれがあり、9月の和風月名は現代の10月ごろの自然や行事に関係しています。このことを踏まえ、長月以外の別名もチェックしてみましょう。

菊に関する月名

菊の開花時期は品種によって異なりますが、9〜11月ごろに咲くことが一般的です。旧暦の9月は菊の花を楽しめる季節だったので、菊に関する月名が多いといえます。

菊月(きくづき)・菊開月(きくさきづき)・菊咲月(きくさきづき):菊が咲く時期だったことから
菊見月(きくみづき):菊が咲いている様子を眺めて楽しむ月であるため

また、9月9日は重陽(ちょうよう)の節句です。「菊の節句」の別名があり、江戸時代ごろから民間の年中行事の一つとして行われてきました。菊の花を飾り、菊の花びらを浸けた酒を飲むなどして不老長寿を祈願します。

紅葉を思わせる月名

旧暦の9月は秋が深まり、紅葉が見頃を迎えます。このため、樹木が色づく様子に関連した月名も豊富です。

紅葉月(もみじづき):本格的に紅葉が始まる季節だったことから
色取月(いろとりづき)・彩月(いろどりづき):木々の葉が色づく様子が由来
梢秋(こずえのあき):旧暦では7~9月が秋に当たる。梢は木の幹や枝の先のことで、梢の「すえ」に末(すえ)をかけ、秋の末である9月を指すようになった

紅葉を楽しむ季節のイベントといえば、紅葉狩りが知られています。紅葉狩りは、野山などに行って紅葉を観賞することです。鎌倉時代にはすでに登場する言葉で、短歌などでも秋を表す単語として使われます。

稲に由来する月名

旧暦の9月は稲が成熟期を迎えて稲穂を実らせる時期であり、稲の様子に由来する月名も多く見られます。

穂長月(ほながづき):穂が長く伸びている様子に由来
稲熟月(いなあがりつき):稲穂が熟している様子から
稲刈月(いなかりづき)・小田刈月(おだかりづき):稲を刈り取る時期という意味

なお、日本各地で稲刈りを体験できるイベントが行われています。米がどのように栽培され、食卓に届くのかを子どもに伝えるよい機会ですから、興味があれば参加してみるとよいでしょう。

農業や食べ物の価値を学べるとともに、親子の思い出作りにもなります。中には栽培したお米を持ち帰ることが可能なイベントもあるので、チェックするとよいかもしれません。

9月はお月見シーズン

新暦の9月は特に月が美しく見えるといわれ、お月見シーズンとしても知られます。「中秋の名月」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。中秋の名月の意味や、十五夜の楽しみ方を紹介します。

中秋の名月とは

一般に旧暦の8月15日を「十五夜」と呼び、月を愛でる風習があります。2024年の十五夜は、新暦の9月17日です。この日に見える月は、「中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)」と呼ばれます。

2024年は月の近くに土星が見えるので、探してみましょう。十五夜のころは里芋の収穫時期であることから、地方によっては芋名月(いもめいげつ)と呼んで、里芋をお供えすることがあるそうです。

また、旧暦の9月13日の夜を「十三夜」と呼び、十三夜にもお月見をする風習があります。2024年の十三夜は、新暦の10月15日です。

十五夜の過ごし方

十五夜にはススキを飾り、月見団子をお供えする習わしがあります。昔は月が農耕をつかさどる神だと考えられていたので、お供えをして豊作を祈願したといいます。

十五夜にお供えする団子の数は、15個です。床の間か、月が見える窓辺などにお供えしてから食べましょう。月見団子は比較的簡単に作れるので、手作りもおすすめです。

団子粉などに水と砂糖を加えながら混ぜ、耳たぶ程度の硬さになるまでこねます。ひと口大に丸めたら沸騰したお湯に入れ、団子が浮いて3分後に冷水で冷まして完成です。

団子に成型する作業なら、子どもも一緒に挑戦できます。好みであんこやきな粉などを加えてもおいしくなります。

▼関連記事はこちら

「十三夜」とは?2024年はいつ? 十五夜との違いや意味・由来を解説
十三夜という、十五夜以外のお月見の日を知っていますか? 日本には、秋になるとお月見を楽しむ風習があります。そして、お月見といえば十...
「十五夜」の食べ物とは? 月見団子の作り方や地域による違いも解説!
十五夜の食べ物、何食べる? 2024年の十五夜は9月17日(火)です。十五夜は、秋の収穫への感謝と豊作への願いを祈る行事として受け継がれて...

秋の深まりを感じさせる9月の別名

9月の別名は気候や季節を感じさせる名前の他にも、菊・紅葉・稲に関連するものなどが豊富です。それぞれの由来を知ると、日本の文化に対する理解が深まります。

9月9日の重陽の節句、紅葉狩り、稲刈り体験など、旧暦の9月にまつわるさまざまな行事もあわせてチェックしましょう。

9月は中秋の名月を楽しめる季節でもあるので、家でお月見を体験するのもおすすめです。ススキを飾り団子を食べるなどして、家族で行事を楽しんでみてはいかがでしょうか。

こちらの記事もおすすめ

「月待ち」って何? 二十三夜・十五夜の内容や信仰風習が興味深い!
月待ち(つきまち)の意味と時期 月待ちは、いつごろに実施されていた行事なのでしょうか。まずは、行事の概要と当時の開催時期について解説します...

構成・文/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事