相手に失礼になる贈り物って? カタログギフト、ふるさと納税返礼品はOK?「縁起」と「マナー」のポイントをチェック

日本には、独特の「贈り物のマナー」があります。心がこもっていることがいちばんですが、相手の好みや立場、ものが持つメッセージ性も考慮しなければなりません。相手に失礼な贈り物の特徴や、押さえておきたい基本のマナーを解説します。

贈り物をするときの基本のマナー

お中元やお歳暮、結婚祝いなど、日本には贈り物をする習慣が根付いています。相手が親しい友人であっても、贈り物をするときの基本のマナーは守りましょう。

相手の立場や好みを考える

贈り物をもらい、「自分の好みじゃない…」と戸惑った経験はありませんか? 自分の趣味嗜好を優先して贈り物を選ぶと、相手に使ってもらえないばかりか、迷惑になる可能性があります。

以下のようなパターンが、相手の好みを考慮しない贈り物の例です。

●相手の好みを聞かず、成人女性にぬいぐるみや人形を贈る
●自分が愛用しているブランドの服やかばんを贈る
●お酒が飲めない人に「ビール飲み比べセット」を贈る
●ゴルフをしない人にゴルフグッズを贈る

贈り物は「相手に喜んでもらいたい」という心遣いが大切です。事前に好みをリサーチした上で、立場や年齢に見合ったものを選びましょう。

贈り物をするタイミングを見計らう

贈り物をするタイミングにもマナーがあります。

お祝いごとの場合は、「報告を受けたらできるだけ早く渡す」のが基本です。相手の迷惑にならないように、適切なタイミングを見計らいましょう。

ご祝儀以外に結婚祝いを贈る場合は、遅くても結婚式の1週間前までに手元に届くようにします。新郎新婦の荷物が増えるため、式当日に渡すのは避けましょう。

お見舞いは、入院直後や手術前後は避けるのがベターです。出産祝いや引っ越し祝いは、相手の状況が落ち着いてから渡すようにします。手渡しする際は、あらかじめ相手の都合を伺い、日時を約束しましょう。

生ものは相手の都合を聞いてから

お歳暮やお中元の定番といえば「食品」です。お世話になっている相手に、高級ハムや生鮮食品などの「生もの」を贈りたい人もいるでしょう。

しかし交友関係が広い人の場合、あちこちから贈り物をもらい、消費期限内に食べきれない可能性があります。生鮮食品は傷みやすいため、保存場所にも注意しなければなりません。

生ものを贈るときは、事前に相手の都合を聞きましょう。手渡しなら、「生ものですので冷蔵庫にお入れください」と一言添えると親切です。生クリームやフルーツを使った生菓子は、消費期限が1日程度なので、贈り物にはあまり向いていません。

相手に失礼な贈り物の特徴

相手の好みだからといって、何を贈ってもよいわけではありません。相手に失礼な贈り物としては、「縁起が悪いもの」や「価格帯が相手に見合っていないもの」が挙げられます。

縁起が悪い

日本人の中には「縁起」を気にする人がいるため、語呂の悪いものやネガティブなイメージがあるものは避ける必要があります。

例えば、包丁やはさみなどの刃物類は、「縁を切る」と解釈されやすく、大切な人への贈り物にはふさわしくありません。漢字で「手巾(てぎれ)」と書くハンカチも「手切れ(縁を切る)」を連想させます。

数字の「4」と「9」は、「死」と「苦」と発音が同じです。ネガティブに受け取る人もいるので、箱詰めのものを贈るときは、4個入りや9個入りは避けましょう。くしの贈り物も、「苦」「死」と同じ発音の文字が入っているため、縁起が悪いと見なされます。

価格帯が相手に合っていない

高級すぎる贈り物は、相手の負担になります。だからといって相場を大きく下回ると、気を悪くするでしょう。年齢・立場・自分との関係性などを考慮した上で、相場から大きくかけ離れないようにする必要があります。

例えば、親戚に贈るお中元・お歳暮であれば、3,000~5,000円前後が妥当ですが、上司や取引先へは、5,000~1万円前後とするのがよいでしょう。いつもお世話になっている人への贈り物は、価格帯を上げるのが一般的です。

避けるべき贈り物をシーン別に紹介

いくら相手が喜びそうでも、シーンによっては避けたほうがよい贈り物があります。特に、お祝いの場面では、語呂が悪いものやネガティブなイメージが強いものは贈らないようにしましょう。

結婚祝い

弔事(ちょうじ)の印象が強い日本茶や白いタオルは、結婚祝いでは避けるのが無難です。お茶を贈るのであれば、ハーブティーやコーヒーを選びましょう。

食器やグラスなどの割れ物は「仲が割れる」を連想させるため、かつては結婚祝いに不向きとされていました。しかし近年は、割れて数が増えることを「子孫繁栄」と解釈する人もおり、必ずしもタブーとはいえません。

「三途の川への橋渡し」として避けられてきた箸も、近年では「夫婦円満」や「二人三脚」を表す縁起の良い贈り物とされています。

異性の友人への結婚祝いとして、洋服やかばん、アクセサリー類を贈るのはNGです。誤解を招きやすい上、もらったほうも複雑な心境になります。妊娠をしていない新郎新婦にベビー用品を贈るのも避けましょう。

引っ越し祝い・新築祝い

引っ越し祝いや新築祝いで避けたいのは、「火(火事)を連想させるもの」です。

●赤いもの全般
●ライター
●灰皿
●キャンドル

相手からのリクエストがない限り、掛け時計や絵画、鏡なども控える必要があります。飾るときに壁に穴を開けなければならないものは、相手の迷惑になる可能性が高いためです。開店祝いや開業祝いでも、これらの贈り物は避けましょう。

引っ越し祝いや新築祝いでは、日用品や食品などの消耗品が人気です。趣味嗜好をあまり問わない上、気軽に受け取ってもらえます。

お見舞い・快気祝い

病気やけがのお見舞いをする際は、花を贈ることが多いかもしれません。ただし、根っこが付いた鉢植えの花は「寝付く(根付く)」という言葉に関連するため、避ける必要があります。以下に挙げる花も、縁起が悪いとされています。

●シクラメン:死や苦を連想させる
●キクやユリ:お葬式のお供えに多い
●ツバキ:花が散る際に首から落ちる
●真紅の花:血を連想させる

快気祝いでは、「病気やけがを残さないように」という願いを込めて、消耗品を選ぶ人が多いようです。「病を洗い流す」の意味で、洗剤や入浴剤を贈るのもよいでしょう。

目上の人に失礼になる贈り物とは?

お世話になった上司や恩師に贈り物をする際は、失礼に当たるものを事前に確認しておきましょう。何も知らずに贈ると、相手を不快な気持ちにさせたり、関係性にひびが入ったりする恐れがあります。

現金・商品券

ご祝儀や香典などを除いて、目上の人に現金や商品券を贈るのはマナー違反です。「お金に困っている」という状況を連想させる上、「好きなものを買いなさい」という上から目線のニュアンスも感じられます。

ただし近年は、お中元に商品券を贈るケースが増えています。目上であってもごく親しい間柄であれば、大きな問題はないでしょう。相手に誤解を与えたくないときは、お菓子やプチギフトに商品券を添えて渡すのがおすすめです。

靴下・スリッパなどの足の下に敷くもの

新築祝いや引っ越し祝いとして、スリッパや玄関マット、じゅうたんなどの日用品を贈りたいと考える人も多いでしょう。

しかし、足の下に敷いて使うものは、「相手を踏みつける」「見下している」「踏み台にする」というメッセージに捉えられかねないため、目上の人への贈り物には適していません。

靴下や下着などの、「下」が付くものも避けたほうがよいとされています。ごく親しい間柄でなければ、同僚や後輩にも贈らないほうが無難でしょう。

文房具・時計などのビジネスアイテム

ビジネスパーソンにとって、万年筆・ボールペン・時計・かばん・ネクタイといったビジネスアイテムは、もらってうれしい贈り物かもしれません。

ただし、「もっと精進しろ」「仕事や勉学に励め」という上からの目線のニュアンスになるため、目上の人や定年退職する人には贈らないほうがよいでしょう。

また、ベルトの贈り物には、「ふんどしを締めてかかれ」「気を引き締めて挑め」という意味があります。リクエストがあった場合を除き、職場の上司には贈らないほうがよいといえます。

贈り物に関する気になる疑問

近年は、贈り物のバリエーションが増えています。「ふるさと納税の返礼品は失礼?」「カタログギフトは喜ばれる?」など、贈り物に関する気になる疑問をまとめました。

ふるさと納税の返礼品を贈り物にしていい?

ふるさと納税をすると、各自治体から寄付金額に応じた返礼品がもらえます。寄付をした人が受け取るのが一般的ですが、ふるさと納税サイトで「別送」を選択すると、寄付をした人とは別の住所に返礼品が配送されます。

「返礼品をお中元として活用したい」という人もいますが、送り主名は自治体なので、相手にふるさと納税の返礼品であることを知られてしまうかもしれません。

目上の人や取引先など、失礼があってはならない相手には贈らないほうが無難です。どうしても贈りたい人は、送り主名を指定できる自治体を探しましょう。

カタログギフトにするのはあり?

カタログギフトは引き出物のイメージが強いものの、実はさまざまなシーンで活用できます。目上の人に贈ってもマナー違反には当たりません。グルメや体験型など、カタログの種類は多岐にわたるため、相手の好みに合ったものを用意しましょう。

カタログギフトは便利な反面、人によっては「手抜きしている」「思いがこもっていない」と感じることもあるようです。また、欲しい商品を探し、期限内にハガキで申し込まなければならない点において、高齢者など手続きがやや難しく感じる人もいるかもしれません。

贈る相手との距離感や人柄などを総合的に判断して贈るようにしましょう。

造花やドライフラワーを贈ってもOK?

造花・ドライフラワー・プリザーブドフラワーは、生きた花ではありません。風水では「運気を下げる」とされているため、風水にこだわる人には贈らないようにしましょう。供花・仏花は生花が基本ですが、どうしても生花以外を贈りたい場合は、遺族に了承を得るようにします。

お見舞いでは、「病気やけがを残さないように」という願いを込めて、後に残らないものを贈るのが一般的です。生花以外はあまり縁起が良くありませんが、衛生上の理由から生花の持ち込みを禁じている病院もあります。

花粉アレルギーを持つ人もいるため、生花の代わりにプリザーブドフラワーやハーバリウムを贈るのもよいでしょう。ハーバリウムとは、プリザーブドフラワーやドライフラワーをガラスの容器に詰め、透明なオイルを注入したものです。

失礼になる贈り物を押さえておこう

贈り物は、相手の好みはもちろん、立場や自分との関係性を考えて選ぶのが鉄則です。心がこもっていれば何でもよいわけではなく、贈り物が持つメッセージ性や縁起の良さも考慮しなければなりません。特に、職場の上司や恩師といった目上の人に対しては、細心の注意を払う必要があるでしょう。

贈り物のマナーやタブーは、時代の流れとともに変化します。昔は縁起が悪いとされていたものでも、今は定番の贈り物になっているケースもあります。情報を整理した上で、相手にふさわしい贈り物を選びましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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