【吉田うどんの探求】どうしてこんなに硬いの? 具はキャベツだけ? 自宅で食べられる基本レシピを紹介

「あまりに硬い麺でアゴが疲れる」との評判がある吉田うどん。太くて固く、みっちりとした質感がある麺は、うどんの概念を覆すほどの強いコシがあります。無骨なまでに硬い食感をもつ郷土食ですが、お家で作ることができます。工程をみていきましょう。

富士山の山頂へと登るルートのうち山梨県側からの道は、登山客の半数以上が利用し、「吉田ルート」と呼ばれています。この登山道沿いで提供される名物うどんが、吉田うどん。一度口に入れたら忘れることのできないほど、強い歯ごたえが特徴です。どうしてそこまで硬い麺が生まれたのでしょうか?

富士山「吉田ルート」へと連なる吉田口登山道

吉田うどんとは

噛むほどに味わいが出てくる太い麺には、この土地ならではのエピソードが詰まっています。

うどんを打つのは男性

周りを山に囲まれている山梨県は、耕地面積には恵まれてはおらず、稲作よりも畑作地で作ることができる小麦、大麦、菜種、豆などの栽培が盛んでした。

富士吉田からのぞむ富士山

さらに富士山麓の吉田地域は標高800m前後の寒冷な土地柄。富士山の火山灰による影響もあり、決して肥沃な土地とはいえません。

昭和初期、この土地で中心産業として栄えたのは、機織りによる繊維産業だったそうです。織物機を動かす女性の手を止めないように、また、絹織物を触る手が荒れないように、昼食の準備は男性に任されるようになったのです。

主に行商を担う役割だった男性達によって力いっぱい丁寧に練られたうどんには、歯ごたえとコシの強さが生みだされ、この土地の名物となりました。

自家製の小麦麺

山梨県といえばほうとうが有名ですが、その他にも、冷や麦などの麺類、すいとん、おねりといった、粉で作る食事が豊かです。小麦・大麦は毎日の食事に欠かせない穀物で、郷土料理として発展しました。

また、富士巡礼に訪れる参拝者に提供する食事としても、うどんは適していたことから、多くの人に受け入れられた、というわけです。

定番のスタイルは

麺を「すする」というより、「たぐる」ような食べごたえのある麺は、太さもコシも通常の倍はあります。これに、細切りのにんじん、キャベツをのせて食べるのが定番のスタイル。醤油を垂らした鰹だしのスープで食べると、キャベツの甘みが引き立ちます。

吉田うどんの一例

驚くほどシンプルな吉田うどんですが、なんと、現地のお店では”だし”ではなく、麺を湯がいた”茹で汁”が注がれているものがあるそうです。

トッピングは小松菜と、削り節のみ。そこへ、お好み量の醤油を自分の手で足す、というシンプルさ。荒く削った鰹節から徐々に旨味が滲みだしてくるのが、たまらないおいしさなんだとか。

それにしてもシンプルな具材です。ただし、キャベツは高原野菜ですから、地元で特産品として栽培されたものが新鮮なまま手に入ります。しかも、使われる水は富士山の伏流水という点が、さらにおいしさを引き出すのかもしれません。

吉田うどんの一例。つけ麺タイプの食べ方も。すまし汁仕立てのつけ汁に、キャベツと揚げ玉がトッピング。つゆ椀奥にあるのが後述の薬味「すりだね」。Photo by Hinayoshi, CC 表示-継承 4.0,Wikimedia Commons

吉田うどんのレシピ

吉田うどんのレシピは、県内の地域、ご家庭によってもさまざま。こちらは、ごく一般的なレシピです。ご参考にしてください。

麺の打ち方

うどんの生地は、小さなお子さんでも数を数えながら足踏みすると、楽しく作ることができますし、大人が抱っこしながら踏めば、コシの強い麺に仕上がります。ぜひ強い力で打って、本場の硬さを再現してください。休日の家族イベントにもおすすめ。

・材料

(4人分)

中力粉 400g
(または、強力粉 250g、薄力粉 100g)
水 160ml
打ち粉 適量(コーンスターチ、片栗粉など使用)
塩 大さじ1/2

・こね方

【1】 水に塩を入れて溶かし、粉に少しずつ入れて混ぜます。

水分量は、夏は少なめに、冬は多めに調節してください。
水分量は、夏は少なめに、冬は多めに調節してください。

【2】 ある程度混ぜたら、ビニール袋の中に入れ、1時間程度ねかします。

この時は、まだボソボソです。
この時は、まだボソボソです。

【3】ねかした生地をビニール袋に入れたまま足で踏んで、こねます。

フリーザーバックのLサイズを使用する場合は、1枚につき2人分の生地が適量です。
フリーザーバッグのLサイズを使用する場合は、1枚につき2人分の生地が適量です。

足踏みによって袋が破れないよう、袋を二重にしてください。厚手のビニール袋や、市販のお米が入っていた袋などの利用がおすすめです。

平らになったら、袋を開けて折りたたみ、再度踏みます。

3回ほどで、なめらかな生地に。
3回ほどで、なめらかな生地に。

【4】5回ほど繰り返して踏んだら、厚さ1cm程度になるまでのばします。

・打ち方

【1】生地を取り出して打ち粉を振った後、のし棒で厚さ5mm程度までのばしてください。

【2】生地を3つ折りにしてから、幅5mm程度に切ります。

・茹で方

【1】鍋に沸騰したお湯を用意し、茹でてください。標準的な湯で時間は12分です。

味見をして、歯ごたえを確かめながら調節してください。
味見をして、歯ごたえを確かめながら調節してください。

【2】茹で上がった麺を冷水でしめながら、ぬめりをとります。

食べる直前に、再度お湯につけて温めるとおいしいですよ。

つゆと具材

市販のめんつゆを利用しても十分ですが、地元で作られているつゆの作り方もご参考にしてください。

・材料

(4人分)

味噌 28g
醤油 24g
煮干しと鰹節のだし 1L

キャベツ 1/2個
塩 適量

・作り方

【1】煮干しと鰹節でひいただしに、味噌、醤油を入れ混ぜます。味をととのえてからは、弱火から中火程度にし、つゆを沸騰させないように。

【2】別の鍋に1/6程度湯を張り、塩をひとつまみ入れます。1/4にカットしたキャベツを鍋に入れて、フタをし、5分程度蒸します。

箸が刺さる程度になったら、取り出してください。

【6】流水で5分程度冷やします。

【7】芯を除き、5mm幅でカットしてください。さらに、それを半分の長さにカットします。

食べ方

人気漫画『美味しんぼ』にも登場したお店「渡辺うどん」では、半熟卵を汁に溶かしながら、具や麺にからめていただく「肉玉うどん」が人気なんだそう。

うどんにのせられた「肉」はなんと「桜肉」。馬肉を砂糖、醤油、酒で煮て、うどんにのせるのが定番だそうです。

吉田うどんの人気お取り寄せ

富士山の正面玄関とも呼ばれる、富士吉田市では、たくさんのお店が吉田うどんを提供しています。

吉田のうどん3人前 乱切り麺

どれくらい硬く太いのか、お取り寄せをして確かめてみてください。予想以上の硬さに、驚くはずです。

富士吉田 すりだね「激辛味」

この地域の定番の薬味「すりだね」とは、唐辛子、山椒、ごまなどをすりおろした激辛調味料です。独特の辛みがあり、吉田うどんには必ず添えられます。

お子さん向けではありませんが、茹でたパスタに和えるだけでペペロンチーノ風に楽しめる調味料。大人用の味変食材としてご利用ください。

富士登山と結びついた味

富士登山で疲れた体で、ゴリゴリと硬いうどんを食べるのが止められない、との声を耳にします。富士山頂という異世界での体験と、吉田うどんを食した体験が結びついて、生涯忘れられない味になるのかもしれませんね。

普段から、小麦粉の味がお好きな方には、特におすすめできるうどんです。お家で作るのも簡単なので、ぜひ一度作って味わってみてください。

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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)

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