小3で天文宇宙検定2級に合格・沖本正太郎さん「天文学者になって世界で活躍したい!」【「好き」を突き詰めた検定キッズたち】

今回から新連載【「好き」を突き詰めた検定キッズたち】がスタート! この連載では、好きなことに全力で向き合い、自らの知識やスキルを試すために検定に挑戦する子どもたちを紹介していきます。
検定に挑戦する過程は、子どもたちが新しいことに挑む力や自己管理能力を育む貴重な体験です。親が子どもの興味を大切にし、一緒に目標を追いかけることで、家族の絆も深まるのではないでしょうか。
第1回の登場は沖本正太郎さんです。小学3年で天文宇宙検定2級に合格し、現在は1級取得を目指して勉強を続ける沖本さん。N高等学校の研究活動や天文学のセミナーにも積極的に参加するなど、夢はますます広がっています。

8歳のとき天文宇宙検定2級に合格!

沖本正太郎さんは、2020年11月、小学3年のときに第10回天文宇宙検定で2級と3級を同時に受験し、見事に両方に合格しました。当時8歳で、2級の受験者の中では最年少。合格率36.2%という難関を突破し、10歳未満での2級合格は4年ぶりの快挙でした。

現在、中学1年生となった正太郎君は、2級合格直後から挑戦し続けている1級合格を目指すほか、さまざまな挑戦を続けています。

――天文宇宙検定は、1級と準1級は同じ試験を受けて、70%以上の得点を取得すると1級に合格し、60%以上70%未満の得点であれば準1級に合格となります。今年6月に受けた第17回の結果はいかがでしたか?

正太郎君:準1級まであと1歩の54点でした。あと2〜3問で準1級合格の60点に届くので、次こそは頑張りたいです! 1級合格を目指していますが、まずは準1級を突破しなければなりません。

天文宇宙検定の勉強で使ったテキストと参考書。大学レベルの内容も含まれる。
天文宇宙検定の勉強で使ったテキストと参考書。大学レベルの内容も含まれる。

――天文宇宙検定1級の問題は大学の理工学部卒業レベルで、1級合格率は1.6%、1級受験者のうち4.7%が準1級と超難関です。どのように準備していますか?

正太郎君:1級は本当に難しいです。過去問題集を解いて、わからないところをテキスト『極・宇宙を解く』(恒星社/厚生閣)で勉強しています。2級で出てくるケプラーの法則やシュテファン=ボルツマンの法則も、1級ではさらに難問になります。

知識問題で点を稼ぎ、計算は取れる問題に絞って解くようにしています。検定の問題は4択なので、ある程度絞り込んで答えを見つけることができるようになってきました。

第16回 天文宇宙検定(2023年11月19日)の受験者統計データ

――小学3年生のときから難しい計算に挑戦してきたのはすごいですね。どうやって解けるようになったのでしょうか?

正太郎君:2級のケプラーの法則やシュテファン=ボルツマンの法則では「3乗」や「4乗」を使わなければなりません。学校では習っていなかったので、計算間違いをしないように気をつけながら、繰り返し問題を解きました。
最初は苦戦しましたが、小学生の頃から、「公文」で連立方程式を解くほど数学が得意だったので、計算のコツをつかむとすいすい解けるように。
初めて2級の過去問を解いたときは34点でしたが、5か月後には2級の合格ラインに届くほどになりました。

コロナ禍の休校がきっかけで、大好きな宇宙の世界の腕試しに検定チャレンジ

幼稚園の頃の沖本正太郎君。「ライフパーク倉敷科学センター」(岡山県)で宇宙の展示について解説しているところ。
きっかけはコロナ禍の休校期間。もともと天文系の図鑑が大好きだった。

――天文宇宙検定を受けようと思ったきっかけは何ですか?

正太郎君:2020年4月、コロナ禍の休校で時間ができたので、母が「学校の宿題以外にも、天文宇宙検定っていうのがあるよ」って薦めてくれたのがきっかけでした。
僕は5歳から『宇宙 講談社の動く図鑑MOVE』(講談社)が大好きでほぼ暗記していたので、絶好の力試しだと思ったんです。

――最初に受験したとき、自信はありましたか?

正太郎君:2級の出題範囲が「宇宙」で、『MOVE』の内容と重なっていたので60%くらい自信がありました。でも、3級は「星座」がメインで少し不安がありましたね。
難易度は2級のほうが高いんですが、僕にとっては3級のほうが難しく感じました。どちらも合格できて、本当に嬉しかったです。

何度も挑戦している天文宇宙検定の問題。

相棒は大学レベルのテキスト 「分からないことさえも面白い」

――難しい数式や知識が出てきても、途中で嫌になりませんでしたか?

正太郎君:『極・宇宙を解く』は大学レベルなので読んでも分からないこともありますが、全てではなくても、分かるところはしっかり理解しています。それでも、分からないこと自体が面白いので、嫌になることはありません。
試験も問題自体が面白いので、毎年合格を目指しつつ、楽しみながら受けている感じです。

――本当に星や惑星が好きなんですね。

正太郎君:星のデータを見ていると、「こんな星なんだな」と想像できるのが楽しいです。また、「この星にはこんな性質があるんだ」と新しい発見をするのも面白いですね。最近は、小惑星や準惑星といった分野にも特に興味を持っています。

昔から競争相手は母。ともに受験も

幼稚園の頃の沖本正太郎君。「ライフパーク倉敷科学センター」(岡山県)で宇宙の展示について解説しているところ。
幼稚園の頃の沖本正太郎君。「ライフパーク倉敷科学センター」(岡山県)で宇宙の展示について解説しているところ。

「僕は競争が大好き」と正太郎君。モチベーションを高めるために、競争相手になったのは母の敦子さんでした。

――どんなふうに競争をしているんですか?

敦子さん:公式問題集のこの章を20~30分で何問正解できるかを競争しています。全然勝負にならなかったら楽しくないので、ちょうど1、2問差で正太郎が勝つぐらいがちょうどいいんです。
普通にやってたら宇宙の問題では勝てないんですけど、4択なので難しい問題もなんとなく正解できることがあって、そこは大人の力ですね(笑)。

正太郎君:僕一人だったら、やる気が続かなかったと思います。宇宙のことを考えたり図鑑を読んだりするのは好きなんですが、検定の勉強となると別で、一人で問題を解くのはしんどい。でも、母と一緒にやると負けないぞと思って楽しいんです。

――中学1年の息子さんと一緒に勉強するなんて、なかなか難しいと思いますが、どうやって良好な関係を築いているんですか?

敦子さん:2級の勉強を始めたのが小学2年生のときで、そのころから一緒にやってきたのがよかったかなと思います。高学年になってからいきなり始めようと思っても難しかったかもしれません。
正太郎は今、天文宇宙検定2級、漢検2級、英検3級、数検3級を持っています。天文宇宙検定と漢検は私も一緒に受けました。
何でも一緒にやっているわけではなく、自分も勉強してみて面白いなと思ったものだけです。数検、英検は正太郎一人で受けてもらいました(笑)。

中学に入り、勉強は学年上位。でもスケジュール管理が苦手

「岡山天文博物館」(岡山県)で望遠鏡を覗く小学2年の正太郎君。
「岡山天文博物館」(岡山県)で望遠鏡を覗く小学年2の正太郎君。

小学校時代に取った検定の数々を武器に、自己推薦で中学受験に挑戦した正太郎君。見事に合格し、4月からは中学校生活を送っています。

――学校生活と好きなことの両立で大変なことはありませんか?

正太郎君:宿題をやった後、1時間ぐらいゲームをして、晩ご飯までの時間やお風呂に入る前に言語学の勉強をしたり本を読んだり。天文宇宙検定の約1か月前には母と勉強を始めます。大変という感じは今のところないです。

――初めての定期テストはどうでしたか? うまく乗り切れましたか?

正太郎君:中間テストが学年4位で、期末テストは9教科で学年1位と、結構いい順位が取れたので嬉しかったです。
テスト期間中は、ある程度課題をこなしてから前日に教科書の内容を暗記するようにしています。英語と数学は検定で鍛えていたのでスムーズにいきました。理科は、天文以外の分野があったりで、1回目のテストが微妙だったんですが、期末で頑張って学年2位になりました。

――順調に中学校生活が切れているのですね。あえてお聞きしたいのですが、正太郎君が苦手なことはありますか?

敦子さん:まだまだスケジュール管理が苦手で、忘れ物をすることもあります。中学では教科ごとに課題や小テストがありますよね。たまに宿題の問題集やプリントを学校に忘れてしまってできなかったり、小テストがあるのを聞き逃したりしてしまうことも。テストの前日に教科書を持ち帰るのを忘れて、範囲を確認できなかったこともありました。

――中学生の誰もがぶち当たる壁ですね。お母さまのサポートもあったのでしょうか。

敦子さん:本人は、課題は提出期限までに出したいし、テストも良い点を取りたいという気持ちが強いので、1年の1学期は私もできるだけ一緒に提出物や時間割を確認するようにしました。ちょっと行き詰ったときは、大好きな宇宙の本を読んだり惑星のことを考えたりすることで気分転換しているようです。

幼少期から興味の芽を観察。「お母さん、聞いて」の声をしっかり受け止める

お父さんと望遠鏡で月を観察する練習をしている、小学生の正太郎君。
お父さんと望遠鏡で月を観察する練習をしている、小学生の正太郎君。

――正太郎君は小さい頃から好奇心旺盛だったと聞きましたが、どんな感じでしたか?

敦子さん:そうですね。正太郎は2、3歳でひらがなやアルファベットを覚えて、幼稚園のときには『MOVE』をひとりでスラスラ読んでいました。最後まで読んだらまた最初から繰り返し読むほどで、すごく熱心でしたね。
よく「お母さん、これ知ってる?」って話しかけてきて、「これってどうして?」とか「どういう意味?」って聞いてきました。「お母さん、知らないから教えて」と言うと正太郎が自分で図鑑を調べて説明してくれるんです。

――それは素晴らしいですね。そういった好奇心をサポートするために、どんなことをされていましたか?

敦子さん:話すのも好きな子で、「聞いて、聞いて」というときはなるべく話をしっかり聞くようにしました。また、外部との関わりをサポートすることもあります。
小学1年生のときに「ニホニウムの原子量が本によって違うのはなぜ?」って聞かれたことがあって、私も答えがわからなかったので、理化学研究所にSNSで質問してみたんです。丁寧な返事をいただいて、それを題材にして小1の夏には自由研究にまとめました。疑問をそのままにしないで、一緒に解決するようにしています。
あとは、N高の他校生も参加できるコミュニティや高専、大学がやっているジュニアドクターのプログラムなんかを見つけて、興味があれば応募してみれば?って勧めることもあります。

――親として、つい口を出したくなることもありますか?

敦子さん:そうですね。例えば作文や志望動機を書くとき、本人に全部書かせた後、全く見ずに送らせるのはちょっと怖いので(笑)、「ちょっと見せてみて」って言うことがあります。日本語がちょっとおかしいところがあれば、「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」って言ったりしますが、極力、本人の考えを変えないようにしています。

COIASを同年代の人に広めるための研究がしたい

小学6年生の夏休みには「JAXAアカデミーキッズ」へ参加した。
6年生の7月、探究学舎「天文宇宙部」の企画でJAXA(神奈川県 相模原)を見学しに行った

正太郎君が今夢中になっているのは、中学1年からN高等学校の研究部に入部して始めた「未発見天体探索アプリCOIASを使った市民天文学の普及」に関する研究です。8月には、合宿に参加し、堂々と発表しました。

――高校生のみなさんに交じってのポスター発表はどうでしたか?

正太郎君:今関心のある学術トピックとして、未発見天体探索アプリCOIASの使い方や実績、自らが発見に貢献した仮符号天体を例に仮符号天体のデータの見方などを紹介し、今後の展望などを発表しました。
天文以外の、今まで触れてきたことのない分野の研究発表をしている人もたくさんいて、とても刺激的で楽しかったです。 全国にはすごい研究をしている中高生の方たちがたくさんいることがわかり、自分ももっと研究をがんばりたいなとモチベーションがあがりました。

――今後はどんな研究をしたいですか。

正太郎君:COIASの使い方をもっと探究して上級編の技術を習得したり、開発者の方にも取材するなどして、天文に興味のある一般の方、特に同年代の中高生の方たちにもっと広めていきたいと思っています。

――将来の夢を教えてください。

正太郎君:もちろん、天文宇宙検定1級に合格すること。そして、天文学と言語学両方オリンピックで銅賞以上を取ってみたいです。
でもやっぱり一番は、天文学者。国立天文台の本間 希樹(ほんま まれき)先生のように、国際的なプロジェクトを引っ張っていくような研究者になりたいです。

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