改正道路交通法で「モペット」はどう扱われている? 交通違反にならないためのモペット基礎講座

ペダル付きオートバイの総称である「モペット」は、これまで道路交通法上での扱いがはっきりしていませんでした。しかし、2024年に行われた法改正でモペットの扱いが規定されたのをご存じでしょうか。道路交通法でのモペットの扱いと交通ルールを解説します。

そもそもモペットってどんな乗り物?

道路交通法上のモペットの扱いや交通ルールを理解するには、まずモペットがどのような乗り物なのか、知っている必要があるでしょう。モペットの購入を検討している人に知ってほしい、モペットの基礎知識を解説します。

モペットとは「ペダル付き原動機付自転車」

モペットは、ペダルが付いた原動機付自転車を指す言葉です。発祥地であるヨーロッパでは「motor」と「pedal」をかけ合わせ「モペッド」とも呼ばまれすが、日本では「モペット」の表記が普及しました。

電動のモーターを積んでいて、モーターの力のみで走ることもできれば、ペダルをこいで自転車のように走ることもできます。利便性の高さや手軽さから、都会に住む若者を中心に普及を見せている乗り物です。

この乗り物に関する交通ルールを考える上で大切なのが、「モペットは原動機付自転車(原付き)に分類される」という事実です。見た目は自転車によく似ていますが、あくまでも交通ルール上では原付きと同じ扱いを受けます。

電動アシスト自転車との違い

見た目はよく似ているものの、電動アシスト自転車とモペットとは雲泥の差がある乗り物です。

両者の大きな違いは、モーターのみでの走行が可能かどうかです。電動アシスト自転車はモーターのみで走行はできません。あくまでもモーターは人の力を補助するのが役割で、走行するには必ず人がペダルをこぐ必要があります。一方モペットは、モーターのみで走行可能な乗り物です。

上記のような特徴から、電動アシスト自転車は道路交通法上の自転車(軽車両)に、モペットは原動機付自転車に分類されます。電動アシスト自転車は自転車なので乗るために免許は要りませんが、モペットは原付きなので免許が必要です。

モペットの問題点

モペットはその特徴から、大きな問題点をはらんでいる乗り物です。問題点を抱えるモペットは、近年、社会問題と化しています。これから乗るかもしれない人に知ってほしい、モペットの問題点を解説します。

自転車と思い込んで乗る人が後を絶たない

問題点としてまず挙げられるのが、モペットを自転車と勘違いして気軽に乗り始めてしまう人がたくさんいる点です。「モペットは原付きである」という基本的なルールが世の中に広まっていないため、このような事態に陥っていると考えられます。

警視庁は、「モペットは自転車ではなく原付きである」という通達を出してきました。政府もポスターやリーフレットを発行して啓発活動を行い、「モペットは原付きである」という事実の周知に努めています。しかし、なかなか広まっていかないのが現実といえるでしょう。

売る側の責任感の欠如

必要な装備を備えておらず、公道を走れないモペットがインターネットで手軽に買えてしまうのも問題です。このような車体の販売ページには、「公道走行不可」と書かれているケースが多いものの、小さな注意書きまでしっかり確認する消費者がどれだけいるかは未知数といえるでしょう。

インターネット上で売られているモペットの中には、「原付き」という表示がずっと後ろのほうに書かれていて、まるで「自転車の延長線上にある乗り物」かのように売られているものもあります。

さらに悪質なケースでは、販売ページに「免許不要で乗れる」との説明を載せている業者もいるほどです。

モペットに関する改正道路交通法のポイント

重大な問題点を抱えるモペットに関しては、数々の事故が報告されています。これを受け2024年11月に「改正道路交通法」が施行されました。改正道路交通法で規定された「モペットの扱い」を解説します。乗る予定があるならしっかりチェックしておきましょう。

モペットの運転も「原動機付自転車の運転」に含まれると明文化

改正道路交通法では、2条1項17号においてモペットも原動機付自転車と同じ扱いをすることが明記されました。具体的には、モーターに加えてペダルを使って人力で走行させることができる原動機付自転車(モペット)の運転についても、道路交通法の定める「原動機付自転車の運転」に含まれると明文化しています。

改正前までは不明瞭だったモペットの扱いが、今回の改正で「原動機付自転車の運転」に関する定義が明確化されたことで、「モペットは原動機付自転車である」というルールが法律で定義されるに至ったといえます。

出典:e-Gov 法令検索|道路交通法2条1項17号(令和6年11月1日施行)

モペットに関する交通ルール

改正道路交通法で「モペットは原付きである」と法的に定められたことで、モペットに乗るには原付きの交通ルールを守ることが求められるようになりました。乗るなら必ず押さえておきたい、モペットに関する交通ルールを解説します。

運転免許が必須

モペットは原付きに分類される乗り物のため、運転するにはそれ相応の運転免許が必要です。運転免許を持っていなかったり、運転免許が停止されていたりする状態で乗ると、無免許運転として処罰されることになります。

原付き免許を持っているからといって、全てのモペットに乗れるわけではありません。600Wを超える出力があるモーターを積んだモペットに乗るためには、「自動二輪免許」が必要です。

また、運転免許を持っていない人もしくは免許停止中の人にモペットを貸した人も、「無免許運転幇助(ほうじょ)行為」として罪に問われます。無免許運転をした人に準じて罰が科せられるため、注意しましょう。

ナンバープレートを取得する必要がある

モペットは原付きなので、公道を走行するにはナンバープレートが必要です。購入した車体に乗って、すぐに公道に出ることはできません。

もし公道を走るつもりでなくても、モペットにはナンバープレートが必要です。ナンバープレートを取得したからといって、公道を走ることが許可されたわけではない点に注意しましょう。公道を走るには、「保安基準をクリアする」「保険に加入する」などの条件を満たす必要があります。

ナンバープレートを取得するには、まず必要書類を準備します。必要な書類は以下の通りです。

・軽自動車税(種別割)申告(報告)書兼標識交付申請書
・購入したモペットの情報を確認できる書類
・本人確認書類

上記の書類と併せて印鑑を持参し、市区町村の役所・役場に出向き、手続きを行いましょう。

ヘルメットを着用する

モペットは原付きなので、乗るためにはヘルメットの着用が必須です。

自転車に乗るときのヘルメット着用は努力義務となっています。着用したほうがよいものの、万が一着用していなくても道路交通法違反とはなりません。しかしモペットは原付きです。ノーヘル状態で乗車すれば、確実に道路交通法違反に問われます。

「一見すると電動アシスト自転車に見えるから」という安易な考えでヘルメットの着用をおろそかにしていると、しっかり反則金(違反点数1点)を取られ、後悔することになるでしょう。

出典:交通違反の点数一覧表 警視庁

装備を整える必要あり

モペットで公道を走るには、装備を整えて原付きとしての保安基準を満たす必要があります。必要な装備は以下の通りです。

・バックミラー(後写鏡)
・ウインカー(方向指示器)
・ヘッドライト(前照灯)
・クラクション(警音器)
・テールランプ(尾灯)
・ブレーキランプ(制動灯)
・速度計
・番号灯
・後部反射材
・消音器

上記の装備の中で、購入した車体に付いていないものがあれば、別途で購入して装着する必要があります。保安基準を満たさないまま公道に出てしまうと、整備不良として罰則が科されるため、注意しましょう。

保険の加入が必要

モペットで公道を走るには、自賠責保険・共済(自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済)への加入が必須条件です。

自賠責保険・共済とは、交通事故に遭ってしまった人を救済するために加入が求められる強制保険です。原付きであるモペットのユーザーにも加入が求められます。

より安心してモペットに乗りたいなら、自賠責保険・共済に加えて任意保険にも加入しておくのがおすすめです。自賠責保険・共済だけでは事故を起こしたときの支払金額に限度があるため、万が一のときの補償を充実させるには、任意保険が欠かせません。

歩道走行はNG

モペットは原付きなので、歩道を走ることは禁止です。もちろん自転車でもないので、自転車道を走ることも厳禁です。歩道を走った場合には通行区分違反となります。

自転車は、限定的に歩道での徐行運転が認められている乗り物です。しかしモペットの場合、モーターを止めて通常の自転車と同じようにペダルをこいで走行したとしても、モペットが原付きであることは変わらないので、交通違反に問われることになります。

ただし、モーターを止めた状態のモペットをそのまま押して歩道を歩く人は、歩行者扱いとなるため交通違反にはなりません。

モペットは決して「手軽な乗り物」ではない

モペットは一見すると電動アシスト自転車のように見える乗り物です。そのため、自転車と同じような感覚で購入・乗車してしまう人が目立ちます。しかし、モペットは原動機付自転車にカテゴライズされる乗り物です。乗るには原付きのルールが適用されます。気軽な気持ちで乗ると痛い目を見る可能性が高いので、注意しましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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