「補助金」とは
ガソリン補助金の基本的な知識を解説する前に、そもそも「補助金」とは何なのかを解説します。補助金がどういったお金なのかを理解しましょう。
特定の事業や活動をサポートするために国が交付するお金
補助金とは、国や地方自治体が事業を展開している人や団体に対して支給するお金のことです。国が重要だと判断した事業を行っている人や団体に支給されるお金を指します。
補助金を支給する目的は、国民の利益につながる事業や活動を支援することです。資金援助を通して事業活動を後押しし、理想の社会の実現を目指します。
補助金の財源は税金です。補助金は返済不要であるため、補助金を受けた人や団体は返済できるかどうかを気にせず、そのお金を自由に使うことができます。
ガソリン補助金とは

ガソリン補助金の基本的な知識を解説します。「ガソリン補助金って何?」と聞かれたときにわかりやすく説明できるようになりましょう。
ガソリンの価格を抑えるための取り組み
ガソリン補助金とは、正式名称を「燃料油価格定額引下げ措置」という国の取り組みのことです。2022年1月から実施されており、補助額はガソリンや軽油の市場価格に応じて週ごとに変動します。
ガソリン補助金が始まった理由はガソリン価格の高まりです。ガソリン価格の高まりは、ガソリンを使う一般消費者だけでなく、事業においてガソリンを使用するさまざまな業界に打撃を与えています。このような状況を改善するためにガソリン補助金が始まりました。
ガソリン補助金の仕組み
ガソリン補助金は、政府がガソリン価格に直接働きかけるものではありません。「石油元売会社」にアプローチし、間接的にガソリン価格を引き下げています。
石油元売会社とは、石油を原料とする製品の輸入・精製・販売を行う会社のことです。ENEOS(旧日本石油)・出光興産・コスモ石油などの企業が石油元売会社に当たります。
ガソリン補助金では、石油元売会社に補助金を支給します。その補助金を元にして、ガソリンスタンドやホームセンターに販売するガソリンの価格を安くしてもらうことで、一般消費者に届けるガソリンの価格を引き下げるのがガソリン補助金の仕組みです。
ガソリン補助金のメリット
ガソリン補助金のメリットとしてまず挙げられるのが、一般消費者が支払うガソリン代が安くなる点です。低コストでの移動が可能になります。
ガソリンを消費する業界で燃料コストが下がるのも、ガソリン補助金のメリットとして挙げられます。運送業・配送業・農業・製造業・建築業などの業界では、ガソリン補助金の恩恵を大いに感じられるでしょう。
ガソリン補助金はさまざまな製品の価格にも影響を及ぼしています。ガソリンの価格が下がると、生産コストや物流コストなどが抑えられるため、食料品や日用品などの価格が下がると考えられます。
終了の時期は明確に示されていない
ガソリン補助金は2022年1月から始まった取り組みで、当初は燃料価格の急騰を抑えるための一時的な対策として実施されました。
そもそも、ガソリン税の税率には「本則税率」というもともとの税金と、臨時の税金として上乗せされた「暫定税率」とがあります。暫定税率は、本則税率の2倍で、道路を作り続けるための特定財源として長い期間にわたって徴収されていました。この暫定税率は2010年4月に一度廃止されましたが、同額分の特例税率があらたに創設されて現在も徴収されています。また、使用目的も道路財源ではなく、一般財源にあてられています。
ガソリン補助金は、その暫定税率の取り扱いについて結論が出次第、終了する予定となっています。
2025年10月現在では、ガソリン補助金の終了時期は明らかにされていません。ガソリンをプライベートやビジネスで大量に消費する人は、ガソリン補助金に関する政府の声明に注意する必要があるといえるでしょう。
出典:燃料油価格定額引下げ措置|経済産業省 資源エネルギー庁
:ガソリン価格の引き下げはいつから?今後どうなる?よくいただく質問に、資源エネルギー庁がお答えします!|エネこれ|資源エネルギー庁
「ガソリン減税」との関係は?
「ガソリン減税」という言葉もよくニュースで耳にしますが、これはガソリン給付金とは別です。
ガソリン価格を下げる対策という意味ではガソリン給付金と目的は同じですが、補助金は「石油元売り業者」への給付であるのに対し、減税は「消費者」が払う税率を直接引き下げる仕組みです。
ガソリン減税は、具体的には、ガソリン税のうち道路整備の財源のための「暫定税率」を一時的に引き下げる、または廃止することを意味します。この「暫定税率」は、全国平均小売価格が一定の基準を超えた場合に自動的に軽減する「トリガー条項」と呼ばれる仕組みになっていますが、現在は東日本大震災の復興財源確保のためトリガー条項が凍結されています。つまり、税率は軽減されていません。
そのため、近年のガソリン価格対策としては、トリガー条項の凍結解除ではなく、石油元売り業者への「補助金」で対応する方法がとられてきたという経緯があります。
2025年10月に発足した新内閣の高市早苗首相は、就任会見でガソリン減税に積極的に取り組むと発表しました。今後の動向が見守られています。
出典:ガソリン減税・高校無償化は前進、高額療養費上げは難航 自民・維新連立|日本経済新聞[2025年10月21日]
ガソリンの価格はどうやって決まるの?

ガソリン補助金は、原油価格高騰などによるガソリン価格上昇に対応するために行われている取り組みです。ガソリン補助金に対する理解を深めるために知っておきたい、ガソリン価格の決まり方を解説します。
ガソリンの価格は原油の価格に大きく左右される
原油を原料として作られるガソリンの価格は、原油価格に大きく影響されます。原油とは、油田からくみあげられたままの石油のことです。製油所で加熱し精製されることで、ガソリンや灯油などの燃料になります。
原油価格は、需要と供給のバランスによって決まるのが基本です。例えば、くみあげられる原油の量が減っているにもかかわらず、原油を求めている人の数がそのままであれば、原油がより貴重なものとなり、価格が高くなります。
ガソリン価格が原油価格の変動の影響を受けるまでには、約1カ月の時間差があるといわれています。ガソリンを消費者のもとに届けるには、原油からガソリンを精製する手順が必要なことに加え、原油が出る国から原油を消費する国にガソリンを運ぶ必要があるため、このようなタイムラグが生まれてしまうのです。
ガソリンには多くの税金がかけられている
ガソリン価格の約30~40%は税金で構成されています。
ガソリンにかけられている税金の代表例が「ガソリン税」です。ガソリン税は、国税(国に納める税金)の「揮発油税」と、地方税(地方自治体に納める税金)の「地方揮発油税」を合わせた税金です。これらに「暫定税率」が加算されたお金がガソリン価格に上乗せされています。
ガソリン税以外にも、ガソリン価格には原油や石炭に対して課される「石油石炭税」や、商品やサービスを購入した際に課される「消費税」がかけられています。
ガソリンの価格が高くなっている理由
ガソリン価格が上昇している理由としてまず挙げられるのが、原油の需要増加による原油価格の高まりです。世界経済が成長を続けている現代では、世界的に原油を求める声が高まっています。くみあげられる原油の量が変わっていないのに原油を欲しいという人が増えれば、原油の希少性が高まり、結果的に価格が上がっていきます。
円安もガソリン価格の上昇に影響を与える要素の1つです。円が安くなると、原油を手に入れるためのコストが実質的に上昇するため、原油価格ひいてはガソリン価格が高くなっていきます。
原油が出る国で起こっている治安の悪化も、ガソリンの価格に影響を与えています。原油の安定供給が危うくなることで、原油価格およびガソリン価格の上昇が起こっているのです。
ガソリン補助金は市民の生活に影響を与える
ガソリン補助金はガソリン車に乗る人だけでなく、車を利用しない人にも間接的な影響を及ぼす取り組みといえます。たとえその恩恵を受けている実感がなかったとしても、スーパーやコンビニで手に取るモノの値段にもガソリン価格は影響します。
ガソリン補助金やガソリン減税など、流通コストに関わる政策は、国内の経済に大きな影響を与えるものとして注目されています。
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構成・文/HugKum編集部