【小学生算数】図形のつまずき解消は実際に目で見るのが有効!math channel吉田真也先生に聞く「中学受験にも役立つ」100円グッズで理解する“体験的算数”

小学校中学年は算数のレベルが一段上がり、苦戦する子が増える時期だと言われています。そこで今回は特に苦手な子が多い「図形問題」の”図形の重なり”、”立方体の切断”について、理解しやすくなる体験的な勉強法を、算数のエキスパート・math channelの吉田真也先生に教えてもらいました。使用したアイテムはすべて100円ショップで購入できるものだけ! これらは中学受験の算数にも役立つので、中学受験に取り組んでいる家庭でもぜひ取り入れてみてください。

図形はどう動くのか、動いている最中はどうなのかを体験することが重要

math channel吉田真也先生

――今回、苦手意識を持つ子が多い算数の図形について教えていただきます。

吉田先生 中学受験の算数は学校の教科書には出てこないような題材が多く、子どもたちにとっては初めて見る問題です。計算分野ではつるかめ算や和差算など特殊算に初めて触れることになります。

図形の分野では面積をただ求めるような簡単な問題ではなく、図形が動いたり、図形を切ったり、動かしたりと特殊な問題が出てくるのが特色。子どもたちを見ていると、学校では算数が得意だと思っていても、これらはイメージしにくい、実感がわきにくいということがよくあります。

――実感がわきにくい場合、どのようにすればいいんでしょう?

吉田先生 中学受験に限らず、図形問題でつまずいたときは、実際に「図形を切ったり、動かしたり」することで、どう動くのか、動いている最中はどうなのかを体験することが重要です。より実感がわきやすいので、黒板の板書をただ見ているだけよりも理解が深まります。

――学校の授業ではなかなかここまではやりませんか?

吉田先生 そうですね、小学校の教科書の範囲では図形を複雑に「切ったり、動かしたり」をする学習はあまりありません。ただし中学受験には出題されていて、小学校で習った知識を駆使して解いていくことになります。

このように中学受験では、例えば中学数学では方程式を使って解く問題を、小学校で習った範囲の知識を使って解いていくので、ある程度のテクニックが必要になります。自分が持っている知識でどう解くのかを考え続けます。思考のトレーニングをするという意味でもいい題材ですね。

僕はやっぱり、問題の内容に実感を持ってほしいんですよね。問題を読んで頭のなかで状況をリアルに描けるようになってほしい。想像力を働かせて、イメージを豊かに描いて、実感を持てるように思考するトレーニングを重ねることは、将来的にも役立つ能力にもなると思います。

「図形の重なり」と「立方体の切断」を実際にやってみよう

吉田先生が重要だと教えてくれた「実感を持てる」ようになるため、今回は実際に手を動かしながら学ぶ方法をご紹介します。どれも100円ショップで購入できるアイテムを活用しているので、挑戦してみてくださいね。

【1】図形の重なりの移動

平面図形の問題として出てくる「図形の重なり」は黒板の板書だと2枚の図形がどう重なっているのか分かりにくいことが。そこで100円ショップで手に入る、カラーセロハンで形を再現し、重なりを視覚化。実際に動かしながら形の変化を見ていくとよりわかりやすくなります。

■用意するもの

カラーセロハン色違いを2枚、白い画用紙、ペン、はさみなど

■実際にやってみる!

吉田先生 カラーセロハンは透けるので、重なっている場所も形もよくわかります。まずは遊び感覚で2枚を重ねてみましょう。

吉田先生 中学受験算数でよくあるのは、「三角形と長方形が並んでいます。三角形を同じ速度で動かしたとき、重なりが三角形から台形になるのは何秒後ですか?」のような問題で、こういった“動的な問題”が苦手な子が増えている印象です。下の写真のように白い紙にペンで問題の通りに図形を書いて、カットしたカラーセロハンを置き、実際に三角形を動かして再現するとわかりやすくなります。

写真①の状態から順に見ていきます。
⇒セロハンを動かして、2枚のセロハンが重なった形は三角形になります(写真②)。
⇒⇒それをそのまま動かし続けると、今度は重なった部分が台形になるんです(写真③)。

実際にやってみるとわかりますが、台形になった瞬間って「あっ!」と気持ちが動くんですね。体験したからこそ得られる感覚を、大切にしてほしいと思っています。

この重なりは三角形→台形と変化して、それがいつまで続くのかにも注目です。実は次は五角形に変化。最後にも形が変化するのですが、どんな形になるのかぜひ試してみてください。また、三角形同士だったり、正方形と長方形でやってみたり、形を変えてやってみるのもおすすめ。

このように紙は自由度が高いので「こうやったらどうなんだろう?」と、子どもが好きに動かすことができ、新しい発見や学びも生まれるメリットもあります。今回は重なりを学ぶため、カラーセロハンを使用しましたが、単純に問題の状況を把握したいときは、カラー画用紙をその形に切ってみるだけでもOKです。

【2】立方体の切断

立体は紙の上で問題を出されると見えない部分がある分、より想像力が必要になり、つまずきがちだと言われます。また中学受験算数には、「立方体を斜めに切る」「こう切ったときの断面はどんな形になるでしょう」など、一ひねりある問題がよく出てきます。これが子どもの視点だと必要感も薄く、苦戦しがち。

吉田先生 実際に立体を切ったことがない子がほとんどなので、イメージがわかないのも当然です。「その切断面は、絶対にできないよね」という回答を書いて、そのままにしている子も多くいます。そこに気づけるようになるためには、100円ショップで売っているメラミンスポンジを実際に切ってみたり、クリアキューブに切り口を書き込んでみるのが一番です。

■用意するもの

メラミンスポンジ、クリアキューブ(ディスプレイ用)、ペン、カッターなど

■実際にやってみる!

まずは問題に合わせて印をつけてカッターで切ってみる。3つの頂点を通るように切ると断面は正三角形になります。以下のようにある4つの点を通るように斜めに切るとなんと六角形に! そしてこれがちょうど1/2ずつだということもわかります。

吉田先生 刃がまっすぐに通っている感覚を味わうことで、確かにこういうことが起こるんだということをまず子どもたちにわかってほしいんです。言葉だけでは理解することが難しいことも、実際にやることでつかむことができます。何回か切っていくことで、理解が深まるので、問題を解く際に間違った答えが浮かんでも、「いや、カッターの刃はこんな通り方はしないよな」と気づくことができます。

メラミンスポンジで十分学習したあとは、透明なクリアキューブの活用がおすすめ。これに切断面をペンで描くと、メラミンスポンジではわからなかった中の様子がわかり、立体に対する解像度が上がります。水を入れて斜めにし、そのときの水面を見るのもいい勉強になります。

吉田先生 今は一人一台端末を持ち、動画などを見て授業を進めることも多いと思いますが、こうして紙や立体に触って、目の前で起きたことを体感するのが大切だと思います。これは持論ですが、自分の身体的な触れ合いからイメージはでき上がるのだと思うんです。自分の手で持ち、それを動かしてみた経験・記憶がとっかかりとなって、次から頭のなかでイメージをわきやすくさせてくれるはずだと思います。

大人でも引き込まれた体験的な算数! 実際に問題を解くときのサポートツールに

今回、吉田先生に実演してもらい、目の前で図形の重なりの形が変わった瞬間、カッターで一度切っただけで意外な断面が現れた瞬間は、大人でも「あっ!」と声を上げてしまうほどの体験で、図形の面白さが心に残り、引き込まれました。また、視覚的に学んだあとに解説を聞くと理解度もアップ! 実際に図形問題でつまずいている小学4年生のわが子にも、早速試してみようと思いました。

とはいえ、これらの学習を自宅で親が上手に取り入れられるか、子どもが話を聞いてくれるかは少し心配なところ。すると吉田先生は、「実際に問題を解いているときに問題文を再現し、同じようにやってみるといいと思います。子どもは解きたい! というモチベーションがあるので、サポートツールとして活用するのがおすすめです」と教えてくださいました。

日ごろから100円ショップをめぐり、学習に使えるツールはないかをチェックしているという吉田先生。そんな先生の新著、『理系脳をぐ〜んと伸ばすたのしすぎる算数』も、100円ショップのグッズでユニークな算数体験ができるアイデアの宝庫。こちらもぜひチェックしてくださいね。

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「工作×算数」で、苦手な子も得意な子も楽しく学べ、自由研究にも、学校の授業にも、中学受験にも役立つ算数本! 竹ひごで作る「かけ算マシン」、テープを使って「円周率」を体感!、メラミンスポンジを切って「断面図」を観察!、ジョイントマットで「立体の展開図」を組み立てなど、100円グッズを使って、算数の考え方を“体験的に”学びます。家庭では親子でも楽しめて、学校では授業やクラブ活動にも使えます。「見る・触れる・作る」ことで、算数がぐんと身近に。保護者の方にも学校の先生にも、おすすめの一冊です。

お話を聞いたのは

吉田真也 株式会社math channel講師・コンテンツ開発担当

東京理科大学理学部数学科卒業、筑波大学大学院教育学学位プログラム博士前期課程修了。算数の学びをカタチにする「算数クリエイター」として、算数カードゲーム「kukupon!(九九ぽん)」や「クリア立体カード」など、数多くの教材・教具を考案している。明星大学情報学研究科附属学習科学研究所客員研究員。

取材・文/長南真理恵

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