【低学年の算数力】図形や九九を学べる「算数カードゲーム」が人気のワケは? 遊び方いっぱいの魅力に迫る<初級編>

楽しく遊ぶだけで算数を自然と学べる算数カードゲーム。算数・数学に特化した学び・遊びの場を届けるmath channelの吉田真也先生は、小学生のころに算数カードゲームに夢中になり、現在では自身で考案・制作を手掛けるほどに。教室で生徒たちと遊ぶこともあり、子ども心に刺さるカードゲームも知り尽くしています。そんな先生におすすめのカードゲームを教えてもらいました。今回は小学校低学年向けの初級編です。

お題の形を瞬時に見つけて図形の感覚を養う!『スプリット』【初級編】

SPLIT(スプリット)

まず最初に紹介するのは、ふたつのピースを組み合わせてお題の図形を完成させるパズルゲーム。山にしたお題カードをめくったら、お題カードに描かれた図形とまったく同じ形になるピースカード2枚の組み合わせを探します。このピースカードの組み合わせが正解だ!と思ったら「はい!」と2枚のカードを同時に指差し。ピースカードは回転させたり、反転させて考えてもOK

いち早く正解を見つけた人が勝ちで、最終的に一番多く正解したプレイヤーの勝利です。机に向かって勉強するだけでは学べない、柔軟な考え方そして瞬発力を学べます。

お題カードになるピースカードの組み合わせを、頭のなかで想像して考えます。見つけたら「はい!」と指さします。

吉田先生「初級編は123年生向けで、子どもにルールが簡単に伝わるものを選びました。ルール説明が長くなるとやる前から子どもが飽きてしまうので、初級編を選ぶときには大事な要素です。
この『スプリット』は非常にシンプルでわかりやすいのが魅力。図形を学ぶときは”1つの図形が分かれて見える”という感覚がすごく大切なので、こういうゲームで遊ぶことで図形に分割の線が見えてくると、図形が得意になってくるのかなと思います」

カードだからこそ学べることも多い

吉田先生「そもそも図形を学べるゲームはカードゲームよりもパズルのほうが多いんです。実際にカチャカチャ動かしてイメージがつきやすいパズルと違い、カードゲームはそれができない。でも、だからこそ適度な負荷をかけられていいと思います。
また、デジタルゲームと違って手で持てるカードだからこそ、『なんでなんで?』『ほらこうじゃん!』と見せ合いながらみんなで盛り上がれる側面も。カードはめくる楽しさや『次はなにが出てくるかな?』というわくわくも味わえます」

SPLIT(JELLY JELLY GAMES)

九九だけでなく数字の性格性も学べる『kukupon!(くくぽん)』【初級編】

今回カードゲームを紹介してくれた吉田先生考案の九九をベースにしたゲーム。

カードは九九カードと数字カードの2種類があり、九九を使った神経衰弱にチャレンジできる『九九あわせ』、出したカードで出来る九九はどれかを考える『九九かるた』、カードバトルで対戦できる『九九ぽん』の3つの遊び方ができます。

「 方眼紙を用意してピースカードの形に切って考えたり、『カタミノ』のような図形パズルを用意し、それらを活用しながらイメージを膨らませるとより学習効果が高まります」(吉田先生)

九九を覚えている最中の2年生にぴったりなのが、『九九あわせ』。 3の段を覚えたい場合。数字カードの「3」を表にして中心に置きます。次に右側に3の段の九九カード9枚を裏側にして並べ、左側に19の数字カードを裏にして並べます。

九九カード1枚をめくり、答えが「18と書かれているカードだった場合、表になっている「3」のカードとかけて「18になる、つまり「6」のカードを裏返しになっているカードのなかから探すのです。神経衰弱同様に間違ったら交代、次の人がまた新しいカードをめくり、プレイヤーがめくるほどにどの場所にどのカードがあるかを記憶していきます。

こんな風にお題の「3」に対してまずは九九カードをめくり、出てきた「18」の答えが成り立つように「6」のカードを当てます。数字カードをよく見ると、3のカードは三角形、6のカードには六角形のイラストが。たった1枚のカードにも算数の情報がたくさん。

吉田先生 「秋から冬にかけては小学2年生がちょうど九九を学ぶ時期で、一番苦労する時期とも言えます。そんな子には神経衰弱がぴったり。九九を覚えてきたら、逆に数字カードからめくって、今度は九九カードから答えのカードを見つけるやり方も。難易度を調整し、繰り返すことで楽しみながら九九を学ぶことができます

「このゲームでは、お題の段の九九カードを探す必要があります。この探すという作業も大切で、探していくうち、無意識にいろいろな数が目に入ります。これもカードゲームのよさですね」(吉田先生)

吉田先生「九九って最初はとにかく暗唱したり歌で覚えていきますが、「じゃあ3×9は?」って聞くと、習いたての子どもは流れで覚えてることが多いので3×1から言い始めるんですよね。
それだとステップアップしないので、学校ではルール上ランダムに覚えるためによく暗記カードのような計算カードを使うと思います。でもこれだと少しつまらなく感じてしまいますよね。『kukupon!(くくぽん)』ならランダムにやることになるので、必然的にその練習にもなります」

 神経衰弱から進化したカルタ遊びは戦略性も育つ

神経衰弱から使うカードを増やして遊ぶのが『kukupon!(くくぽん)』を代表する遊びとなったカルタ。

まず九九カードをランダムに並べます。プレイヤーが2人だった場合、数字カードを半分ずつ持ち、それぞれが「kukupon!(くくぽん)」と言いながら1枚出します。そして出てきた数字、例えば「3」と「4」だったら、3×4は「12」。九九カードから「12」を探して、見つけたらそのカードをもらいます。

吉田先生「これの面白いところは一度出た九九カードはもうないということ。例えば『16』は2×8、4×4、8×2の3つの九九の答えなので、終盤にはもうないだろうと判断し、そもそも探さないという選択肢ができる戦略性も育ってきます
また、答えを探すのは1人1枚までと決めれば、最終的な勝敗の差はわずかです。この少しだけ差がつくというのもポイントで、かるた遊びなどで結果に差がつきすぎると苛立ってしまう子でも、結果が僅差であることで、惜しかったねと前向きな気持ちで終わることができる
 実は結構そこが喜ばれるところで、『感情のコントロールが難しいお子さんが負けても、もう1回!と前向きにとらえてくれました』と、特別支援級の先生から感想をいただくことがあります。大差がついたときにありがちな『もうやりたくない』とならないのも大切です」

算数的な気づきを言語化したり性格性を感じる学びにも

吉田先生算数的な気づきを言語化することにもつながります。このカードには数字に対して、その答えになる九九の式が書かれています。12が答えのカードだと、2×63×44×36×24つの式。これは先ほども話した『16』など、ゲームの後半にはもうなくなっているだろうと推察されるカード。人気のカード、仲良しのカードとかカラフルなカードって子どもたちが表現しますが、それも狙って作っています。約数が多い、割り切れる数が多いみたいなところにつながっていくので、その先の勉強にも活きてきます
 数を見たときにその数字のキャラクター、性格性を感じてほしい。こういう風に1つの数に対して式を複数つけると、その数に対するキャラクターがわかってきます。819×9にしか出てこないね、13は九九にないから割り切れないなとか、新しい見方を感じられます」

「九九カードにはこんな風に九九の式が書いてあります。この4、8、12は一目で人気(約数の多い)のカードだなとわかるよう工夫。また、普通九九カードは81枚あることが多いですが、これは36枚しかない。九九の答えが36種類しかないこともわかるんです」(吉田先生)

kukupon!(販売:minne)

算数を使って遊べた!という経験も重要!手先の精緻性も向上する

吉田先生曰く、「算数の勉強で大切なのは問題を解くだけでななく、〝算数を使って別のことができた〟という体験をすること」なのだそう。このようにカードゲームで遊ぶことで、「九九を覚えて問題が解けたぞ!」というだけじゃなく、「こんな風に遊べた!」という経験も味わえます。

また、今回吉田先生から「最近はカードにあまり触れていない子が増えているとも感じます。カードの持ち方がわからない、広げられない、めくれないとか。手の精緻性がどんどん落ちてきてる気がしますね」とも教えてもらいました。

カードゲームで精緻性を養いつつ、例えばルールを確認する際も動画で確認せずに、紙の説明書を渡せば読解力も育ちそう。ボードゲームよりも気軽な価格で買いやすいので、この年末年始にいろいろなカードゲームにトライしてみるのも楽しそうです。

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記事監修

吉田真也|math channel(マスチャンネル)
算数・数学の面白さを体験できるような機会を様々な切り口で届けている『math channel(マスチャンネル)』にて、講師や教材・コンテンツ開発を担当。大学院では算数・数学教育の研究をしていたことも。算数カードゲームとの出合いは小学生の頃。当時から誕生日やクリスマスに少しずつ買い足し、大人になった今も多数のカードゲームを所有しているそう。自身でも九九カードゲーム「kukupon!(くくぽん)」や「クリア立体カード」など、算数カードゲームの考案・制作を行っている。
公式X(旧Twitter)https://x.com/shinya_workshop
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math channelのYouTubeチャンネル https://www.youtube.com/@mathchanneltv
取材・文/長南真理恵

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