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「縦の関係」から「横の関係」へ。10歳前後は社会性を発達させる重要な時期
ーーギャングエイジとはどんな特徴があるのでしょうか?
中山先生:ギャングエイジの“ギャング”とは反社会的行動を指すのではなく、「徒党を組む」ことを意味します。小学3〜4年生(9〜10歳)頃になると、子どもたちは大人への依存から離れ、子ども同士で仲間集団を形成し始める時期に入ります。
これまでのように、大人から褒められたり注意されたりすることよりも、仲間から受け入れられるかどうかに関心が移っていきます。これは親離れの第一段階なので、自立に向けた重要な発達過程だと捉えてください。

中山先生:小学1〜2年生の低学年の時期は、気の合う少人数で「同質集団(いわゆるマブダチ)」を作る傾向にありますが、それまで「同質」と「排他(気の合わない子とは距離を置くこと)」であったところから、3〜4年生になるともう1段階ステップして、大きなくくりで同質性を認識し始めます。すなわち、大人を異質な存在と捉えるようになり、大人からの精神的な自立が進むのです。
休日に保護者と過ごすより友人と遊ぶことを優先するようになるのもこのような発達があるからです。これは反抗ではなく、関心の対象が大人から仲間へとシフトしている自然な変化。それまでの親子中心の「縦の関係」から、友だちとの「横の関係」を広げる重要な時期です。この経験を通じて、社会的な成長を遂げていきます。
友人関係が深まることで、子どもの世界は家庭から外に広がり、「自分と誰か」という個人単位の認識から、「僕たち・私たち」という集団意識が育まれていきます。これは他者と良好な関係を築き、周りと協力することや適応する社会性を発達させる上で不可欠なステップなのです。
10歳前後は思考の“質”が変化します! 大人に求める「論理性」
ーー反抗期のような姿も見られますが、ギャングエイジは反抗期とは別でしょうか?
中山先生:9〜10歳頃になると、思考の「質」が変化します。目に見えない抽象的な概念(例:正義や友情など)を理解し始め、論理的・科学的な思考ができるようになってきます。
この変化の一例としては、サンタクロースの存在を疑い始めることが挙げられます。2012年のベネッセが保護者にアンケートをとった結果によると、小学4年生くらいから急激にサンタクロースを信じなくなっている状況がわかりました。
現実とファンタジーを区別できるようになったり、科学的思考が発達したりする証拠だと言われています。

中山先生:さらに論理的思考が発達すると、大人の言動の矛盾(言っていることとやっていることの違い、理不尽な要求など)に気づき、それを鋭く指摘するようになってきます。
この時期の子どもにとっては、大人の人柄のような情緒的な側面よりも、言動に一貫性や論理的な正当性があるかどうかが重要と捉えているので、理不尽な校則や感情的な叱責に対しては「なぜ?」という疑問や不信感を抱きやすくなります。この時期は、指示に従わないなどの反抗ではなく、大人からの意見や力などに対する反発をしているので、あまり大げさに捉えないようにしてください。
“しつけ”は10歳前後までに徹底を。「理屈抜きでダメ」と「理由を説明し伝える」二本立て
ーー10歳前後のギャングエイジに備えるべきことはありますか?
中山先生:保護者の皆さんに意識してほしいことは、他者を傷つける行為や、弱者への加害、迷惑行為などに対して「ダメなものはダメ」ということです。いじめなどに関する考え方も、理屈での説明より、行為基準の徹底が重要で、10歳前後までに身につけさせてあげてほしいことです。
しつけには、「理屈抜きでダメ」とする最小限の線(いじめや他者を傷つけるなど)と、「理由を説明して伝える」領域(子どものやりたいことをどこまで許すかなど)の二本立てが必要です。この時期の子どもには、保護者や教師は、無条件で介入すべきラインと、見守りを基本とするラインを区別して、一貫した説明責任を果たしてください。
もし今までの子育てを振り返って、具体的な言葉でいじめについて話し合う機会が少なかったかもしれないと感じているようであれば、今からでも遅くはありません。「ダメなものはダメ」という認識を子どもがしっかり持てるようご家庭でフォローしてください。
保護者自身がお手本になっていますか?
教育の現場で感じるのは、多くの保護者は宿題をすることや片付けができないなどの些末なことは指摘するのに対し、「いじめは絶対にダメ!」「困っている人がいたら助けよう!」などというような本質的価値をきちんと伝えられていないなということです。保護者自身が子どものお手本になっているかどうかを振り返りながら、お子さんのしつけに向き合ってみてください。
子どもが社会に出るまでに、保護者がしつけておかなければいけないことは、そんなに多くはないのです。
子ども同士のぶつかり合い。介入ラインと解決策は?
ーー友だちとの意見のぶつかり合いは成長過程によって大切なことはわかっているのですが、そこからいじめなどに発展しないか心配です。
友だち同士の喧嘩(意見のぶつかり合い)は、合意形成と境界設定を学ぶ機会でもあるため、むやみに止める必要はありません。いじめ化を恐れて早期に止めてしまうと、発達上の学びが失われてしまいます。現場の先生たちは介入ラインを明確化し、活動設計で摩擦を建設的に変換する必要があります。
①共通の禁止事項を徹底する
身体的暴力やいじめは、家庭間の共通認識として絶対禁止すべきです。これに理解のない保護者への対応には、制度的手段や管理者の支援が必要だと考えます。
②子どもへの理解と具体的な指導
いじめをしていた子どもは、遊び心でやってしまった可能性もあります。保護者の方の中にも、「いじめは絶対にダメ!」と認識していても、具体的にお子さんと話し合っていなかったり、繰り返して決して「やってはいけないこと」であると明確に理解させるための指導を意外としていなかったりするご家庭も多くあります。
もしかしてうちの子がいじめにつながる行動をしてしまったのでは? と感じたときは、その背景を考えつつも、善悪の基準をはっきり教えることが重要です。
いじめの共通認識や具体的な指導は、学校だけがやればいいことでもありませんし、逆にご家庭だけでやるものでもありません。学校と家庭が連携し、双方で子どもたちに指導しなければならないことなので、日頃から先生やお子さんと話し合うようにしてください。
女子のグループ化問題。“引き離す”は逆効果! 関係性よりも活動を変える
ーー友だち同士でグループができ、その中で疎外感や「いじめられているのではないか」と感じると子どもから相談されたことがあります。保護者はどう対応するのが良いのでしょうか?

中山先生:オランウータンやチンパンジーなどの霊長類の雌は同性愛の傾向が強く、それが人間にもあり、閉じたグループを作りやすいのではないかという研究者もいます。
10歳以降の、特に女子に多いグループ化での問題は、大人の直接の介入は難しい問題です。女性は男性よりも独占欲が強い傾向があり、グループの中でリーダー格が出現し、「パワーゲーム(人間関係においての力や権力を背景に主導権を握ろうとすることや駆け引き)」になりやすい状況が生まれます。
女子同士の密着による人間関係の問題に対しては、物理的にグループ内の子どもたちを引き離すことはかえってロミオとジュリエット効果(禁止による結束強化)を生み、本人たちの所属欲求を無視しがちな状況となり、逆効果になりやすいのです。
工作など、同じ目的をもつ活動に誘導を
関係性の再編のためにグループの分離を促すと、逆に当事者の結束が強まってしまい「パワーゲーム」が悪化しやすくなってしまいます。解決策としては、代わりに共同の目的をもつ活動(例えばミサンガ作りや工作、季節の行事の飾り付けなど)に誘導することを勧めています。
それらの活動の中では自然な会話が生まれ、力関係の対立が沈静化しやすくなります。また、その活動に「私もやりたい!」と他のグループの子が加わることで、閉じた関係が開かれ、集団がより健全な方向に展開していきます。
これらの方法はご家庭で保護者が関わって解決していくことは難しく、学校(担任)や学童の先生たちの協力が必要です。社会性を身につける過程での特徴的な行動でもあるので、慎重に見守る必要があります。
SNSが人間関係に大きく影響する時代。「人間関係マップ」を試してみて
中山先生:高学年くらいになると、最近はSNSを使わせるご家庭もあり、それらがパワーゲームを不可視化させ、恐怖感を増幅させてしまっています。グループLINEからの排除、Instagramの限定公開ストーリー、現在地の共有機能などで、誰が誰といるかを可視化し、暗示し、実際には「何もしていない」という体裁でも、実質的な排除を感じてしまう状況が作られてしまいます。

こうした人間関係は陰湿化しやすく、特に小学生以降の中高生の人間関係は非常に複雑で怖いものになってしまっています。しかし、こうした社会の流れを変えることは難しく、使わない・使わせないを貫くことも難しい状況なのも事実です。
その場合には、自分の立ち位置や、助けてくれる人、注意すべき人物を把握するために「クラスの人間関係マップ」を作ってみる方法を試してみてください。集団内での自分の位置や潜在的味方を見失わないことで、過度な恐怖感を回避することができます。お子さんと友だち関係の共有もできるので、心配なときは親子で「クラスの人間関係マップ」を作ってみてください。
中山先生に質問① 子どもの“推し活”、どこまで許していい?
ー友だちの影響で流行りのファッションやメイク、アイドルなどの推し活などに興味が出てきました。どこまで許してもよいものでしょうか? 注意すべきポイントを教えてください。
中山先生:ファッションやメイク、アイドルへの興味は、反社会的なものではなく、誰かに迷惑をかけるわけでもないため、基本的には応援する姿勢で大丈夫です。
問題となるのは、それに伴う経済的な支援の範囲ですよね。子どもの興味をどこまで許容するかという問題は、本質的には家庭がどこまで経済的支援を行えるかという“お金の問題”です。
「友だちがやっているから」と無尽蔵に支援すれば、際限なくエスカレートするのは目に見えています。
子どもの気持ちは理解しつつも、家庭の経済状況を正直に伝え、その範囲内で楽しめるよう話し合うことが重要です。
中山先生に質問② 子ども同士で遠出したいと言われたら?
ーー友だちと遠くまで遊びに出かけてみたいと言われました。どこまで許してあげればよいのでしょうか?

中山先生:遠出を許可する際は「方法・費用・危険性」の3点に注意して話し合いをしてみてください。
①目的地まで行くための具体的な方法(交通手段など)を身につけているか
②費用をどうするか
③行き先の危険性を正しく認識できているか
これらを総合的に評価して判断します。子どものうちは、まだ危険を具体的に想像できないこともあります。明らかに危険性だと思う場合には保護者が介入し、子どもの意見を尊重しつつも危険性を説明して中止させることも重要な役割です。
ただし、子どもの「やってみたい」という気持ちを完全に否定するのではなく、より安全な代替案を提示してあげるのもおすすめです。例えば、突然都心の繁華街へ行かせるのではなく、まずは地元の繁華街に行ってみて、そこから徐々に行動範囲を広げていくなど。段階的なアプローチで冒険心を尊重してあげてください。
10歳以降は合意作りが重要! 4つのポイントを意識して
中山先生:ギャングエイジを経て、子どもは社会的動物として成長します。それは、大人との「縦の関係」ではなく、大人を含めた他者との「横の関係」ができるようになることなのです。それには、お互いの合意作りが必要不可欠です。
合意作り4つのポイント
①納得する 親も子どもも納得できる話し合い
②折衷案 例えばお小遣いの額の交渉やスマホの使用時間などの話し合い
③お試し案 1か月やってみてよかったら次の月も継続するなど
④決定権を明確 この件に関してはどちらが決定権を持っているのかを明確にする(例えば、習い事や塾は子どもに決定権を渡すなど)
ギャングエイジをスムーズに乗り越える鍵は、保護者の対話スキルがポイントです。他者との合意形成は会議や商談でも使うことで、社会人として圧倒的に必要なスキルなんです。保護者の皆さんが社会で行っていることを家庭内でやってあげればいいだけのことなので、難しく考えないようにしてください。
子どもの行動を細かくコントロールしようとする“過干渉”は、10歳以降のお子さんには、反発や関係悪化につながってしまいます。この時期からは、保護者が一方的に指示する「縦の関係」を続けようとするのではなく、子どもの意見を尊重し対等な話し合いの機会を増やすことがポイントになります。
子どもの意見に耳を傾け、お互いを尊重する話し合いができるようになることは、お子さんの社会性を飛躍的に高めることにもつながります。ぜひ意識をしてお子さんに接してみてください。ギャングエイジ以降の子育てが圧倒的に楽になっていきますよ。
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質問に答えてくださったのは
1976年1月、岡山県岡山市生まれ、All HEROs合同会社代表社員、IPU環太平洋大学特命教授。日本の教育者、著作家、学者。
・All HEROs合同会社 代表
・日本子ども若者学会 理事長
・岡山県子ども・若者未来会議 会長
・文部科学省進路指導審査会 委員
・日本非認知能力協会 会長
・子ども學びデザイン研究所 所長
・日本放課後児童指導員協会 理事長 ……など
- 【主な著書】
・『非認知能力の強化書』(2025年、東京書籍)
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・『教師のための「非認知能力」の育て方』(2023年、
明治図書)
・『「やってはいけない」子育て―非認知能力を育む6歳からの接し方』(2023年、 日本能率協会マネジメントセンター)
・『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(2020年、東京書籍)
・『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(2018年、東京書籍) -
……など多数
この記事を書いたのは
教育学部を卒業し、幼稚園・小学校教諭免許を取得するも、教師は母の希望だったため教師にはならず。自分自身の経験から、子どもは矯正せずにありのまま育てるのが一番だと思っている。勉強は嫌いだけと、学ぶことは楽しいと大人になって気づく。趣味は腸活と音楽を聴くこと。最近は子どもの影響で城・神社、世界遺産巡りにハマっている。