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「こどもまんなか」がスローガンのこども家庭庁
村上編集長(以降村上) 今日はこちらにお邪魔できて光栄です。こども家庭庁が発足して約2年が経過しました。改めてこども家庭庁のミッションを教えてください。
臼井さん(以降臼井) こども家庭庁は、令和5 年4月1日に発足しました。こども家庭庁のスローガンは、「こどもまんなか」です。常にこどもや若者にとって最もよいことは何かを考えながら、こども・若者や、こどもたちを育て、支えているみなさんの声を「まんなか」に捉えた政策を立案することにより、「こどもまんなか」社会を実現することが私たちのミッションです。
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村上 こども家庭庁のロゴにもそのフレーズが採用され、温もりが感じられます。ここに込められた願いなどはあるのですか?
臼井 こどもの「ど」の濁点は、目の形をモチーフにしていて、「大人たちがこどもたちを見守っていく」という意味が込められています。ロゴの色は「温かい気持ちで、こどもを見守っていく」という願いを込めて、温かみのあるオレンジが選ばれました。
また、こども家庭庁の看板は、初代大臣の小倉大臣とこどもたちが書いた文字を合わせてつくられたものです。
母子保健課は、妊婦健康診査や乳幼児健康診査、産後ケア事業などの取り組みを推進
村上 臼井さんがいらっしゃる母子保健課はどのような部署ですか?
臼井 こども家庭庁は「長官官房」・「成育局」・「支援局」の1官房2局体制で成り立っています。私たちのいる母子保健課は「成育局」に位置付けられており、「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援の推進」に取り組んでいます。
村上 具体的には、どのような取り組みをされているのでしょうか。
臼井 こども家庭センターを中心に、母子保健に係るさまざまな取り組みを展開・推進していますが、たとえば以下のようなものがあります。
- 1)こども家庭センター(母子保健機能)による包括的な支援体制の構築
- 2)妊婦健康診査や乳幼児健康診査
- 3)出産後1年以内の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行う産後ケア事業
- 4)男女を問わず、性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促すプレコンセプションケア
- 5)「健やか親子21」と呼ばれる全てのこどもが健やかに育つ社会の実現を目指す国民運動
- などです。
- なお、乳幼児健康診査について、補足となりますが、令和5年度補正予算において、1か月児健診及び5歳児健診の実施を支援する事業を創設しました。
5歳児健診を広く知っていただくために、5歳児健診ポータルというサイトを公開しておりますので、是非ご覧ください。
村上 妊婦健康診査や乳幼児健康診査、産後ケア事業などは、子育て中のHugKum読者はとくに関心が高い取り組みだと思います。ぜひ、また詳しく教えてください。
妊娠・出産・子育てに関わる方々の声を反映
村上 母子保健課には何人ぐらいの方いらっしゃるのでしょうか。
臼井 現在50名程が在籍しています。予算や法律関係等を主に担当する「事務官」以外にも、医師や看護師等の資格を持つ医系技官や看護系技官、栄養系技官等、専門知識を有した「技官」が多く配属されていることも特色の一つです。
そのほか、他省庁や自治体、企業からの出向者など、多様な環境で経験を積んだ職員もおり、立場や職種に関係なく、日々議論を重ねています。どの政策においても当事者の方々をはじめ、医療機関、自治体など現場の声が非常に重要と考えていますが、特に母子保健課は妊娠・出産・子育てに関わる方々の声を反映できる環境にあると自負しています。
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村上 母子保健課の政策は、妊娠、子育て中のお母さん、お父さんが注目していると思います。
臼井 母子保健課の取り組みは、ときには新聞やニュースに取り上げていただくこともあり、個人的にSNSなどでも政策に対するご意見を目にすることもあります。注目度や影響力の大きさを感じるとともに、さらによりよい政策にしていかなければと身が引き締まる思いです。
マタニティマークに多胎児版が誕生
村上 マタニティマークに多胎児版ができましたね。
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臼井 「妊婦にやさしい環境づくり」の一環として、マタニティマークが誕生したのは、平成18年3月です。誕生から約20年が経過しますが、マタニティマークの趣旨が国民の皆さまにもずいぶん浸透してきたと感じています。
一方でマタニティマークには商標権があり改変できないため、自治体の担当者の方などから「多胎児版のマタニティマークも作成してほしい」という要望が多く寄せられていました。そのため、令和6年11月に多胎児版を発表しました。双子と三つ子のデザインがあります。
村上 マタニティマークは、妊婦さんが付ける定番マークとしてしっかりと浸透していますよね。電車やバスに乗っていると、マタニティマークを付けている妊婦さんをよく見かけます。
臼井 ありがとうございます。マタニティマークの趣旨をよりわかりやすくお伝えできるように、「健やか親子21ウェブサイト」内の「マタニティ―マーク公式サイト」もリニューアルしましたので、ぜひご覧いただければと思います。
マタニティマーク 公式サイト – 健やか親子21 -妊娠・出産・子育て期の健康に関する情報サイト
健やか親子21のシンボルマーク「すこりん」
村上 「健やか親子21」のシンボルマーク「すこりん」もすごくかわいいですね。母子保健課のみなさんバッジをつけていらっしゃいます。
臼井 母子保健課では「健やか親子21妊娠・出産・子育て期の健康に関する情報サイト」の運営も行っています。
「すこりん」は、健やか親子21のシンボルマークです。実は「すこりん」も歴史が長く、平成12年に一般公募から選ばれたマークになります。
「健やかに、リンリンと輝く星」をイメージして名づけられています。
村上 母子保健課は今後、どのような展望を持っていらっしゃいますか?
臼井 今後もさまざまな取り組みを通じて、全ての妊婦の方や子育て家庭の皆様が、安心して妊娠・出産・子育てができるような環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。
また、「健やか親子21 妊娠・出産・子育て期の健康に関する情報サイト」などを通じて、よりわかりやすい情報発信を行っていきたいと考えています。
健やか親子21 -妊娠・出産・子育て期の健康に関する情報サイト-
村上 本日はお忙しい中、ありがとうございました。
こども家庭庁の母子保健課が取り組む事業に今後も注目
お話を伺って
村上 うちには13歳、9歳の子どもがいますが、私が出産した当時は、産後ケア事業はまだ普及していませんでした。上の子が生まれたときは、産後1カ月ほど里帰りをしたのですが、母が手伝ってくれても新生児のお世話は大変でしたし、夜中、ひとりで授乳をしていると寂しさや孤独を感じたこともあります。上の子のときは、初めての育児で不安も大きかったです。
母子保健課が取り組む産後ケア事業の普及は、多くのママたちを支えて、子育て不安を軽減するカギになりそうですね。
撮影/横田紋子(小学館写真室) 取材・文/麻生珠恵