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子どもを自転車に乗せて幼稚園や保育園に送迎している、送迎しようと考えている方も少なくないと思います。特に都会では多いと思いますが、子どもを1人後ろに乗せるならまだしも、前にも乗せて合計3人で走るとなると、いろいろ注意しなければいけない点が出てきます。
そこで、今回は自転車の安全利用促進委員会に、3人乗りのルール、さらには上手な自転車選びの方法などを教えてもらいました。その上で、子ども用のシートに装着するレインカバーやポンチョについてもまとめてみましたので、あわせてチェックしてみてください。
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いつまでOK⁉ 自転車の前と後ろに子供を乗せるときのルール
子ども用の座席(チャイルドシート)が最初からついていない自転車であっても、子ども用の座席を設置すれば子どもの同乗は可能です。
しかし、自転車はそもそも1人しか乗れないとご存じでしたか? どこかで、後ろのキャリアに彼女を座らせて運転する男子高校生に、「パトカー」がマイクで注意を与える様子を見かけた覚えはありませんか?
「え、でもうちの保育園では普通に保護者が子どもを自転車で送迎しているけど」という方、確かにその通り。しかし、自転車の安全利用促進委員会によれば、2人乗り、3人乗りをするためには、特別な条件を満たす必要があるといいます。
自転車で親子の2人乗りが許される条件とは?
親子で2人乗りをする場合の条件
- 運転手が16歳以上である
- 同乗する幼児が6歳未満である(小学生は不可)
- 同乗する幼児用に座席が設置されている
以上の3つの条件を満たす場合、どのような自転車でも親子2人で自転車を運転しても問題はないようです。確かに警視庁のホームページにも、
<一般の自転車においても、16歳以上の運転者は、幼児用座席を設けた自転車に6歳未満の幼児を1人に限り乗車させることができます>(警視庁の公式ホームページより引用)
とあります。もちろん、ヘルメットの着用についても、道路交通法第63条の10で努力義務化されています。
ただ、上述した同乗のルールにも条件があります。6歳未満と言っても、2歳と5歳では体重も全く違いますよね。幼児用座席を設置するキャリア(荷台)の積載重量には、十分に注意しなければいけません。
自転車の安全利用促進委員会によれば、一般の自転車の荷台(リアキャリア)は、18kgまでしか荷物を乗せられないタイプも少なくないと言います。この手の自転車は、上述のルールに従って荷台(リアキャリア)に幼児用座席を設置しても、チャイルドシートと幼児の体重を合わせると耐荷重オーバーとなってしまいます。
最大積載量は荷台そのものに記載されています。日本で販売されている自転車の荷台の積載量は、10kg、15kgも一部採用されていますが、基本的には18kg、25kg、27kgの3種類。自転車の荷台に幼児用座席を設置して2人乗りする場合は、荷台の最大積載量が25kgか27kgのタイプを利用しなければいけません。
自転車で親子3人の乗車が許される条件とは?
前にも子どもを乗せて、3人で乗る場合はどのような条件を満たす必要があるのでしょうか? まず警視庁のホームページを見ると、
<16歳以上の運転者は、幼児2人を同乗させることができる特別の構造または装置を有する自転車(幼児2人同乗用自転車)に6歳未満の幼児2人を乗車させることができます>(警視庁のホームページより引用)
とあります。
親子3人乗りが許可される自転車の条件
ポイントは、「特別の構造または装置を有する幼児2人同乗用自転車」という言葉ですね。自転車の安全利用促進委員会によると、「幼児2人同乗用自転車」とは2009年に作られた「幼児2人同乗用自転車安全基準」を満たす、前後に子どもを乗せられる丈夫で安定した自転車を言うそう。
BAAマークをチェックしよう
どのように判断すればいいのかは簡単で、基準を満たした自転車には『BAAマーク』と『幼児2人同乗基準適合車マーク』が張りつけられているみたいです。筆者が2人の子どもの送迎に毎日使っている自転車にも、しっかりと張り付けられています。

ただ、注意点もあって、上述の安全基準を満たした自転車であっても、前の座席は4歳未満で体重が15kg未満、後ろの座席は6歳未満で体重が22kg未満の子どもでないと、乗せられないとか。子どもはどんどん大きくなっていきます。気が付けば上限を体重が超えていたなどという事態には注意したいですね。
双子の場合は、どうすればいいの?
先ほどは、幼児用座席を取り付けていても、前側には4歳未満で体重が15kg未満の子どもは乗せられないと紹介しました。そうなると、双子の場合は成長のスピードが一緒ですから、あるタイミングで3人乗りができなくなってしまいますよね。
この問題について自転車の安全利用促進委員会に聞くと、2018年5月に日本で初めて、双子や年子など年齢と体重が近い子どもを2人同時に乗せて公道の走行が認められている、幼児2人同乗用三輪自転車が販売されていると言います。もちろん、『BAAマーク』も張り付けられています。
後輪が2つある三輪車で、後ろに年齢も体重もほとんど同じような6歳(体重22kg)未満の子どもを、同時に2人まで乗せられる自転車となっています。「ふたごじてんしゃ」と呼ばれているそうですから、双子を持つパパ・ママは要チェックですね。
子どもを自転車の前後に乗せる場合の、安全な乗せ方と手順は?
一定の基準をクリアした自転車の前と後ろに座席を取り付け、規定の体重以内の子どもを乗せようとしても、乗降時に自転車が転倒して、子どもにけがを負わせてしまうリスクはあります。子どもも大きくなると活発に自転車の座席の上で体を動かそうとしますから、前後に子どもを乗せるときは親として心配ですよね。
自転車の安全利用促進委員会に安全な子どもの乗せ方を聞いてみると、乗せる場合と降りる場合で少し子どもの「乗せ下ろし」の順番が変わってくるのだとか。
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プロに聞いた、安全に子どもを自転車に乗せる方法
まずは乗せる場合ですが、
- 平坦な場所に自転車があるかチェックする
- ハンドルロックがかかっているかを確認する
- 体の大きい子どもを後部座席に先に乗せ、次に体の小さい子どもを前に乗せる
- サドルに腰掛け、出発するタイミングでハンドルロックを外す(スタンドを解除すると、自動的にハンドルロックが解除される車種もあり)
といった流れが大切になると言います。
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プロに聞いた、安全に子どもを自転車から降ろす方法
次は降ろす場合ですが、乗せる場合とは逆の手順で、
- 平坦な場所に自転車を停める
- ハンドルロックがかかっているかを確認する
- 先に前の座席に座る体の小さい子どもを降ろす
- 後ろの座席にいる体の大きい子どもを降ろす(抱っこで降ろしてあげる)
といった順番が正解になるそう。ただ、小さい子どもを先に降ろすと、勝手に歩き回って危ないと感じるかもしれません。その場合は、両足で子どもの体を挟むなどして、体の小さい子どもが道路などに飛び出していかないように注意したいですね。
おんぶひもで子どもを背負いながら自転車を運転していいの?
今まで、おんぶひも(抱っこひも)で子どもを背負いながら(抱きながら)自転車を運転している親を見かけた経験がありませんか?「あれって、いいの?」と素朴に疑問を感じた人も居るかもしれません。
先日も子どもを前抱きしながら自転車運転をしていた保護者が転倒し、子どもが頭部を強打して亡くなったというニュースがありました。こうした事故が起きている以上、法的にはNGのような気がするのですが、実際はどうなのでしょうか?
この点を自転車の安全利用促進委員会に聞いてみると、大前提として、
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前抱っこでの自転車運転は禁止
とされているみたいです。背中におんぶしながらの運転については、道路交通法施行細則と呼ばれる決まりが都道府県公安委員会によって決められており、
- 16歳以上の運転手が幼児1人を子守バンドなどで背中におんぶした状態での運転が、認められる自治体と、駄目な自治体が分かれている
のだとか。試しに筆者の暮らす富山県はどうなのかと富山県警察に問い合わせてみたところ、問題ないという回答がありました。
おんぶでの乗車は自治体ごとにルールが変わる
ただ、おんぶでの自転車運転が認められている自治体であっても、例えば前後の幼児用座席に子どもを乗せた状態で、さらに子どもをおんぶし、運転手も含めて合計4人で自転車に乗る乗り方は禁止されていると言います。実際にそれだけの人数で同乗すると、運転手も危険を感じるはずですから、くれぐれも注意したいですね。
子どもを前後に乗せる自転車の上手な選び方は?
子どもを2人、同時に乗せて運転する3人乗り用の自転車が世の中には存在すると述べてきましたが、類似の商品は幾つもあるはずです。上手な自転車の選び方として、どのようなポイントに注意すればいいのでしょうか。
子供乗せ自転車選びのチェックポイント
自転車の安全利用促進委員会によれば、
- 荷台(リアキャリア)の積載重量が、25kgまたは27kgになっているか
- フレームは頑丈そうか
- ハンドルに強度が感じられるか
- 両立スタンドがついていて、スタンドの幅が十分に確保されているか
- ハンドルロック機能はあるか
- 変速機はあるか
- 後部座席用のシートには、巻き込み防止のドレスガードがあるか
- 幼児2人同乗基準適合車マーク、BAAマークが張られているか
- サドルと前シートの間隔が十分で(足元が広い)、自転車をこぐたびにひざがぶつかったり、乗り降りの際に窮屈に感じたりしないか(後付けのフロントチャイルドシートを取り付けると、どうしても狭くなりがちなので、将来的に前にも子どもを乗せたい場合は自転車選びに注意したいとの話)
といった点が重要だと言います。筆者が実際に自転車を購入した自転車専門店では、
- バッテリーの性能もチェックする
- トップチューブとダウンチューブが、乗り降りの際に邪魔にならないかをチェックする
といった点も教わりました。バッテリーの性能が弱いと、繰り返し充電をしなければいけません。忙しい毎日で充電をする作業は、意外に面倒だからですね。また、トップチューブとダウンチューブが高い位置にあると、脚を大きく上げて乗り降りしなければいけません。ユニセックスデザインの自転車の場合、またぎにくい場合も少なくないと言いますから、要注意ですね。
OGKにブリヂストン!? 子供を乗せる自転車の前かご用、後ろ座席用で人気の後付けレインカバーとは
前後に子どもを乗せた状態で、傘をさしながら運転するわけにはいきません。雨天時は、子ども用の座席にカバーをかけて、子どもがぬれないようにしてあげたいですが、レインカバーにはどのような商品があるのでしょうか。
そこで自転車の安全利用促進委員会の委員会メンバーにして、自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに聞くと、大前提として、後付けで装着する前乗せ用のチャイルドシートには、 子どもを載せた状態で使用できるカバーがないのだとか。ちょっと注意したいですね。前乗せ用のチャイルドシートが最初から付いているタイプの自転車については対応の商品があるそうで、
「対応車種の記載を確認し、対応車種に合ったカバーであれば、何でも問題ない」
と教えてくれました。逆に、
「海外ブランドのチャイルドシートカバーは、日本製品のチャイルドシートには規格が合わず、 ゆるみなどが出て危険ですから、規格があっている商品を使用してください」
ハードタイプとソフトタイプのメリット&デメリット
との話でした。商品選びについてですが、カバーにはハードタイプとソフトタイプがあり、
「ハードタイプは、子どもの快適性があるものの、付け外しが面倒で、持ち運びもできません。一方のソフトタイプは、子どもの快適性が劣るものの、付け外しが簡単で、コンパクトに持ち運びができます」
と、それぞれにメリット・デメリットがあるみたいですね。
自転車の子ども用座席カバー、人気ブランドは?
子ども用の座席で定番のブランドと言えば、OGK(オージーケー)やブリヂストン、パナソニックなどがあります。調べてみると、フロントシート用、リアシート用のそれぞれに純正レインカバーが確かに用意されていました。また、OGKや各自転車メーカーのチャイルドシートに対応した、別ブランドの日本製カバーも販売されています。大前提として規格に合った商品を選び、その上でデザイン、コスト、手に入りやすさ、子どもの快適性を考え、チョイスしたいですね。
雨の日は親子でオシャレをしたい!人気のレインポンチョは?
プロ目線で選ぶ、安心安全なレインコートのおすすめは
子どもはシート専用のレインカバーがありますが、運転手である保護者は雨の日の運転で、どのように雨風をしのげばいいのでしょうか。完全な雨風対策となると、やはり足元の水の跳ね上がりにも対応できる上下セパレートのレインコート(雨がっぱ)が理想的ですが、正直、ぬれたレインコートの着脱は面倒だと感じる人も少なくないと思います。そう考えるとやはり、さっと頭からかぶれるポンチョが便利ですよね。
そこで自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに、お勧めのポンチョを挙げてもらったところ、以下、おすすめで挙げていただきました。
ハローエンジェル レインコート
と教えてくれました。6,480円(税込)というコストもお手軽でいいですね。
「ポンチョは足元の水の跳ね上がりがありますが、ハローエンジェルのレインコートは、着脱が簡単なレッグウォーマーのような付属品があります」
といったメリットがあるようです。一般的なポンチョ選びの心構えとして、
「ポンチョを使用する場合は、自転車用がお勧めです。 腕と脇が一体型になっているので、変にばたつかないというメリットがあります」
とも教えてくれました。確かに世の中にはアウトドア用のポンチョなどもありますが、風にばたついてしまう商品も少なくないみたいです。耐水圧に優れ、自転車関連部品のメーカーが出す自転車用ポンチョで言えば、
- アンジェ サイクルポンチョ
- rin project サイクルレインポンチョ
- BROOKS ENGLAND Rain Cape
なども、各種のインターネットショップで人気だと分かります。コストやデザイン、使い勝手、快適性などをトータルで考慮した上で、チョイスしてみてくださいね。
以上、子どもを自転車の前後に乗せる際の注意点を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか? 子どもと運転手である親の命にもかかわる重要な話ですから、繰り返しチェックしてみてくださいね。
取材・文/坂本正敬
【取材協力】
※ 自転車の安全利用促進委員会・・・自転車の購入時に知っておくべき安全安心な自転車の選び方から購入後のメンテナンス、正しいルール・マナーといった自転車の利用方法、そして日々の心がけの大切さを啓発し、安全安心な自転車利用に関する様々な情報発信を行うことで自転車が関連する社会問題を減少させることを目的として活動する。
※ 遠藤まさ子・・・自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などを経てフリーランスへ転向。自転車・育児用品を中心に取材を行い、各誌に寄稿している。自転車の中でも子ども乗せ自転車、幼児車、電動アシスト自転車を得意とし、各種メディアでコメンテーターとして登場する機会も多い。