バラエティ番組や舞台を通して多くの人を楽しませる芸人たち。状況に応じて場を盛り上げるユーモアセンスと卓越した話術は魅力的ですが、実は絵本制作においてもその才能を活かしている芸人もいます。普段見ているキャラクターとは違った作風の方もいて、その違いを発見するのも楽しいものです。
今回は、たくさんの人を笑顔にし元気を与えてくれる芸人さんたちが描いた絵本をご紹介しましょう。
多彩な才能を持つ芸人たち
芸人として確かな実力を持ちながら、他分野においても幅広く活躍の場を広げている方はたくさんいます。
たとえば、ネプチューンの原田泰造さんやドランクドラゴンの塚地武雅さんは俳優として安定した演技力を武器にさまざまな作品に出演しています。
映画監督ではダウンタウンの松本人志さんや北野武さん、作家ではピースの又吉直樹さんが芸人初の芥川賞を受賞し話題になりました。
芸能界の第一線で笑いを追求する方たち、絵本以外でも本業と違った分野においても独自の路線で自分たちの才能を活かしています。
芸人が制作した絵本の魅力
個性的な物語
テーマ選びに始まり物語の導入から結末まで、芸人の絵本は子どもの興味を引き付けてくれるでしょう。
普段からコントや漫才を通してネタを考えている方たちですから、言葉選びのセンスと構成力には安定感があります。文章のみを担当する方もいますが、絵も含めて制作に携わっている方もおり、豊かな才能に驚かされることでしょう。
自身のキャラクターを活かしたユーモアたっぷりのものから、深いテーマ性が感じられるものまでさまざまな作風の絵本があります。
普段の芸風とは異なった作品を発表する方もいるため、ギャップの違いを発見するのも楽しいですよ。
注意点として、芸人が制作した絵本の中には、少しブラックな内容が混じったものもあります。
大人が読めば楽しいのですが、小さな子どもには不向きな場合もありますので、購入前に内容を確認することをおすすめします。
読み聞かせイベント
本のPR活動の一環として芸人自ら読み聞かせのイベントを行うことがあります。
多くの舞台経験を積み、人を引き付ける話術を持った方たちの読み聞かせですから、学べるところがたくさんあります。
声の強弱の付け方、読むスピード、体の動きや表情の変化など、読み聞かせの参考にもなるためチャンスがあれば参加してみましょう。
絵本の分野でも才能が光る芸人
絵本においても評価の高い芸人をここでは2人ご紹介。キングコングの西野亮廣さんは個展開催、ジャルジャルの福徳秀介さんは賞を受賞するなど絵本の分野でも新たな才能を開花させています。
西野亮廣さんはなぜ絵本を?
漫才コンビ「キングコング」として活動している西野亮廣さん。
その活躍の場はテレビ業界だけに留まらず、ビジネス書を出版したり、オンラインサロンを運営したりと常に新しいことに挑戦し続けています。
絵本作家としてのスタートはタモリさんの「絵を描いてみたら?」という一言から。
独学から始まった西野さんの挑戦は、モノクロ作品「Dr.インクの星空キネマ」で一つの形となりました。
その後も勢いは留まることを知らず「えんとつ町のプペル」「TICKTOCK〜約束の時計台」などの作品を世に送り出し、絵本展も開催しています。
彼の活躍を後押ししたタモリさんとは「オルゴールワールド」でタッグを組みました。タモリさんの発案を元に西野さんが物語と絵を担当しており、心温まる作品に仕上がっています。
作品を発表する度に注目を集める西野さん、その存在感と行動力で絵本作家という職業に新しい風を吹き込んでいくことは間違いないでしょう。
福徳秀介さんは北村絵里さんとの共作
福徳秀介さんは相方・後藤淳平さんと漫才コンビ「ジャルジャル」を結成し活動しており、賞レースで決勝に残るなど芸人としての実力は誰もが認めるところ。
独創的な中に斬新な切り口を覗かせる彼らの世界観は高い評価を得ており、数々のテレビ番組に出演しています。
芸人として抜群のセンスを見せる福徳さんが絵本作家・イラストレーターとして活躍するいとこの北村絵理さんと共同で作った絵本が「まくらのまーくん」です。まくらのまーくんとみっちゃんの交流が優しさに満ちた視点で描かれており、柔らかな色使いのイラストが子どもたちを幸せいっぱいにします。
福徳さんはこの作品で第14回タリーズピクチャーブックアワード絵本大賞を受賞しました。その後、二人は鼻の穴を題材にした「なかよしっぱな」で再び共作絵本を発表しています。
芸人が制作したおすすめ絵本5選
「えんとつ町のプペル」西野亮廣プロデュース( 幻冬舎)
キングコングの西野亮廣さんがプロデュースし、総勢33名のイラストレーター・クリエイターによりスタートした絵本制作。分業制作という前代未聞の試みは4年の歳月を経てオールカラーの絵本「えんとつ町のプペル」として完成しました。鮮やかな色彩と闇の中に灯る光の表現が素晴らしく、文章を追うことを忘れてつい挿絵に見入ってしまいます。
売り上げも好調で日本各地で絵本展が開催されました。アニメ映画や舞台化にまで発展し、絵本の持つ可能性を広げた作品です。
【あらすじ】えんとつだらけの町にやって来たゴミ人間プペルと、その町で暮らすえんとつ掃除屋の少年ルビッチ。
二人が出会ったことにより、温かく優しい物語が幕を開けます。目の前にあるのに見えないもの、気付かなかったもの、ハロウィンの夜に奇跡は起こります。
「むれ 」 ひろたあきら(KADOKAWA)
ピース又吉直樹さんが推薦文を寄せる絵本「むれ」は、吉本興業に所属するお笑い芸人ひろたあきらさんの作品です。
ネタ探しの中で絵本のおもしろさを知り、気付けば家に300冊も所蔵する絵本好きになっていたひろたさんの作品には、さまざまな「むれ」が登場します。
羊の群れ、キリンの群れ、鳥の群れ、あちこちにいる群れに注目し、その中から仲間外れを探していきます。物語のおもしろさに探し絵要素が加わった遊び心いっぱいの一冊なので、子どもたちと絵本を指さして楽しみましょう。
必ずしも周りと同調する必要はない、それぞれの個性を大切に、という温かいメッセージが伝わってきます。もともとひろたさんが読み聞かせ会で使うために自作したのがはじまりなだけあって、読み聞かせにも最適です。
「ぱちょ~ん」小島よしお(ワニブックス)
海水パンツ一枚で「はい、おっぱっぴー!」とリズム感のある芸を披露して大ブレイクした小島よしおさん。
2014年にはキッズコーディネーショントレーナーの資格を取得し、年代を問わない分かりやすさとテンポの良さを活かした芸風で子ども向けのライブで活躍しています。
そんな小島さんが手掛けた絵本は、朝起きてから出かけるまでをユニークな擬音で表現しています。
目を開こう「ぱちょ~ん」、足を伸ばそう「ずんがりばっこ~ん」子どもが朝起きなければ「ぱちょ~ん」、パジャマを脱いでほしいときは「ずっぽり~ん」
どれだけ眠くても絵本のワンシーンを思い出して笑ってしまいそうです。パパママが読み聞かせをする際に、言葉と一緒に体を動かしてあげると子どももイメージしやすいですよ。
「なかよしっぱな 」福徳秀介(小学館)
ジャルジャルの福徳秀介さんが文章を、いとこの北村絵理さんが絵を担当した絵本「なかよしっぱな」。
【あらすじ】主人公はなんと男の子の鼻の穴です。ある日、右の鼻の穴と左の鼻の穴は他の人から見たら、それぞれが逆の鼻の穴であることに気づきます。どっちが右でどっちが左か分からなくなった鼻の穴たちは町の人たちに聞くことに……。
自分から見た左右と他人たちから見た左右の違いに着眼したおもしろい作品です。人間でも動物でもない、誰も簡単に考えつかない鼻の穴をテーマに選んだ発想力に驚かされますよ。
「ひょっこりはんをさがせ!」ひょっこりはん(宝島社)
「はい、ひょっこりはん」の掛け声に合わせてひょっこり顔を出す芸風で人気になったひょっこりはん。特徴的なマッシュルームヘアのひょっこりはんをイラストの中から探し出す探し絵タイプの絵本です。
大人も子どもも夢中になって楽しめる作品で、後に続編も制作されました。ページのどこかに居るひょっこりはん、じっくり眺めて見つけ出してください。
芸人さんがどんな絵本を書いたのか知りたくなる
あの芸人がこんな素敵な絵本を出していたなんて、と驚く方もいるでしょう。探し絵要素があるもの、動作を加えて盛り上げることができるもの、いろいろなタイプの絵本があります。子どもたちは「あの芸人さんが書いた作品だよ」と教えてあげればますます興味を持つかもしれませんね!
文・構成/HugKum編集部