夏の大三角形とは、夏の夜空を彩る有名な三角形です。学校で習った記憶はあるものの、詳しいことは忘れてしまった人も多いのではないでしょうか。そこで、夏の大三角形の基本や観察のポイント、それぞれの星座にまつわる神話についてまとめました。
夏の大三角形とは
「夏の大三角形」は、三つの1等星からなる三角形のことです。天の川と並ぶ夏の風物詩として、知っている人も多いかもしれませんが、改めてその概要について確認しておきましょう。
ベガ・アルタイル・デネブを結んだ三角形
星のよく見える夏の夜、空を見上げるとひときわ輝く三つの星を見つけることができます。それらが「ベガ(こと座)」「アルタイル(わし座)」「デネブ(はくちょう座)」です。
この三つの星をつなぐと大きな二等辺三角形になり、夏の間だけ見られるため、夏の大三角形と呼ばれています。
明るい建物や外灯の多い場所だと星を見つけるのはなかなか難しいですが、夏の大三角形はどれも1等星なので比較的簡単に見つけられるでしょう。
見つけるポイントは?
目立つ大きな三角形ではありますが、広い夜空の中から見つけ出すにはある程度の知識が必要です。ここでは、夏の大三角形を見つけるポイントについて解説します。
時間と方角
夏の大三角形を見つけやすい時間は「21時」ごろです。それほど遅い時間ではないので、幼稚園や小学校低学年の子どもでも起きていられる時間でしょう。
方角は何月に見るかによって微妙に変わってきます。6~7月ごろであれば「東」の空で見つけられます。8~9月ごろになると「ほぼ真上か、やや南西より」にあります。
10~11月に観察する場合は「西」の空で見つかるでしょう。見る時期によって三角形の向いている方向が変わるので、そこに注目しても面白いかもしれません。
「これが夏の大三角形かな?」と思ったら、近くにある「アンタレス(さそり座)」を探すのもよい方法です。7~8月の21時ごろなら、南の空の低い場所に赤く輝いているため見つけやすいでしょう。
夏の大三角形は、アンタレスから北へ少し視線を移動させた場所にあります。
三つの星の位置関係
夏の大三角形を見つけたら、次はそれぞれどの星がベガ・アルタイル・デネブであるのか確認していきましょう。
もっとも区別しやすいのがアルタイルです。アルタイルは二等辺三角形の長い辺を結んでいます。7~8月の21時に見たとき、頂点にあるのがベガです。ベガの左下に視線を移すと、デネブが見つかるでしょう。
三つの星の中で1番明るいのはベガです。ベガ・アルタイル・デネブの順番で輝きが弱まっていきます。
夏の大三角形の星座の話
星座は、それぞれにまつわる神話を持っています。こうした話を知っておくと違った視点から観察できますし、子どもの興味を引くのにもよい材料になるでしょう。
こと座の「ベガ」
ベガは天の川伝説の「織り姫星」でもあります。天の川伝説とは、織り姫とひこ星という若者が恋に落ちたものの、遊んでばかりいたので神様が怒って2人を天の川で分けてしまったというものです。
この有名な話のほかに、ギリシャ神話もあります。ベガは「こと座」の一つです。こと座は「オルフェウス」が奏でていた「たて琴」といわれています。
オルフェウスは毒蛇にかまれて亡くなった妻・エウリディケを取り戻すため冥界へ向かいました。素晴らしいたて琴の音色で冥界の王・ハデスの許しを得て、一度は妻を取り戻します。
しかし、「地上へ戻るまで妻の顔を見てはいけない」という約束を破ったため、エウリディケは冥界へ連れ戻され、失意のうちにオルフェウスは亡くなりました。その後、川を流れていたオルフェウスのたて琴を、大神・ゼウスが拾い星座にしたといわれています。
わし座の「アルタイル」
アルタイルは、鳥が翼を広げているような形をした「わし座」の星です。アルタイルは天の川伝説の「ひこ星」であると同時に、わし座にもギリシャ神話が存在します。
昔、トロイの国に「ガニュメデス」という名のとても美しい王子が住んでいました。その美しさの前ではどんな美女もかすむほどで、ゼウスも一目でとりこになってしまったのです。
ゼウスはワシに変身してガニュメデスをさらい、オリンポスへと連れ去りました。なすすべもないガニュメデスはそのまま神々のそばで暮らしたそうです。
このワシがわし座で、ガニュメデスはわし座の隣にある「みずがめ座」として輝いています。
はくちょう座の「デネブ」
デネブは「しっぽ」という意味で、はくちょうの尾に輝いている星です。いくつかある神話の中でもっとも有名な話では、はくちょう座もゼウスが変身した姿だと伝えられています。
ゼウスは美しいと評判のレダという女性に目を付けました。スパルタの王妃であったレダは、そばに舞い降りた美しい白鳥をゼウスと知らず抱き寄せてしまうのです。
ゼウスが去った後にレダは二つの卵を産み、その一つからカストルとポルックスという双子が生まれるのですが、この二人は「ふたご座」として輝いています。
星がきれいに見える条件は?
いつでもきれいな星空が見えるとよいのですが、残念ながらそうはいきません。なるべくはっきりと夏の大三角形が輝く様子を見たいときは、次の条件を満たしているタイミングと場所を探してみましょう。
晴れていて、月明かりがない日
まずは天候や月齢など、自然界の条件について紹介します。
- 晴れていて雲がない
- 月が出ていない
- 湿度が低い
晴れていて雲がないことは欠かせない条件です。そして、晴れていても月が明るいと星がかすんでしまいます。また、湿度が高いと空気中の水蒸気のせいで星がぼやけて見えるでしょう。
おすすめなのは、晴れていて湿度が低く、ほとんど月明かりのない夜です。雨上がりや風の強い日も、空気中のちりが少ないので星がきれいに見えます。
外灯が少なく、高い建物がない場所
次に、人工的な環境条件について確認しましょう。
- 外灯やネオンが少ない
- 家やビルがない
- 高い建造物のない開けた場所
これらはすべて明かりを遮断するための条件です。人の目は明るさに順応してしまいます。周りが明るいと、その分星の輝きが見えにくくなってしまうのです。
また、高い建造物があると視界をふさがれてしまいます。広い公園や土手のように開けた場所だと、空一面を見渡しやすいでしょう。
星を観察するときの持ち物や注意点
楽しく星の観察ができるかどうかは、事前準備にかかっているといっても過言ではありません。最後に、用意しておきたい持ち物と注意点について確認しておきましょう。
必要な持ち物
持っていると便利なものは、次の五つです。
- 懐中電灯
- 羽織るもの
- 星座早見表
- コンパス
- 双眼鏡
暗い場所へ行くため、「懐中電灯」は移動や早見表を見るときの必須アイテムといえます。また、夏とはいえ夜は冷えることもあるため、「上着やストール」などを持っていくと安心です。
「星座早見表」や「コンパス」は、星を探すときにあると便利です。夏の大三角形は肉眼でも見えるので双眼鏡は必須ではありませんが、持っているとほかの星も観察しやすくなります。
暗闇での移動には注意して
周りが暗いと、ちょっとした障害物に気づかず転んでしまうこともあるでしょう。子どもは星に夢中になって足元への注意が散漫になりがちなので、目を離さないようにすることが大切です。
また、暗がりには危険も潜んでいるため、特に子どもや女性は十分な注意が必要です。できれば昼間のうちに周辺の環境や治安について確認しておくとよいでしょう。
晴れた日は夜空を見上げに行こう
夏の大三角形は、ベガ・アルタイル・デネブという三つの1等星でできた三角形のことです。どのあたりに現れるのか前もって知っておくと簡単に見つけられるでしょう。
ゆっくり星の観察をするなら、コンパスや星座早見表などのアイテムを持っていくことをおすすめします。アウトドア用の椅子があると便利かもしれません。
なるべく星がきれいに見える日を選ぶと、よりいっそう楽しい思い出作りができるでしょう。
文・構成/HugKum編集部