赤ちゃんの横向き寝、危険性や注意点とは? 安全な横向き寝のやり方&うつ伏せで寝る赤ちゃんの対処法など正しい寝かせ方を解説【助産師監修】

赤ちゃんが横向きに寝ていて、びっくりした経験を持つ親御さんも多いのではないでしょうか。まだ首が座っていない赤ちゃんや寝返り返りができない赤ちゃんの場合は、横向きで寝ているとうつ伏せ寝になってしまう可能性があり危険です。そこでこの記事では、赤ちゃんの横向き寝の危険性や注意点について解説していきます。また、横向きが好きな赤ちゃんに安全に横向き寝させるやり方や、夜うつ伏せでしか寝ない赤ちゃんの対処法など、赤ちゃんの正しい寝かせ方をご紹介しましょう。

赤ちゃんの横向き寝は危険なの?

赤ちゃんの横向き寝は危険なの?
赤ちゃんの横向き寝は危険なの?

 

赤ちゃんが横向きで寝ると、どのような危険があるのでしょうか? ここでは、赤ちゃんの横向き寝の危険性について解説していきます。

乳児突然死症候群(SIDS)の恐れも

首が座っていなかったり、寝返りができない赤ちゃんは、横向きで寝ているとうつ伏せ寝になってしまう可能性があります。うつ伏せ寝がよくないと言われる理由は、乳児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)のリスクがあるからです。

SIDSとは、予兆や既往歴もない乳幼児が死に至る原因のわからない病気を指し、窒息などの事故とは区別されています。SIDSは、うつ伏せで寝ているとき、仰向けで寝ているとき、どちらでも発症しますが、寝かせるときにうつ伏せに寝かせたほうがSIDSの発生率が高いことが研究者の調査からわかっています(参考文献1)。

医学的な理由からうつ伏せをすすめられている以外は、赤ちゃんは仰向けで寝かせることが奨励されています。これは、SIDSを予防するだけでなく、睡眠中の窒息を防ぐためにも有効とされているからです。

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生後2~6ヶ月は特に注意が必要

SIDSは、生後2〜6ヶ月に多いとデータが出ています(参考文献1)。特に生後6ヶ月までの寝かせ方には注意が必要です。1歳くらいまでは仰向けに寝かせるようにするのがいいとされています。(参考文献2)

赤ちゃんの横向き寝の注意点

赤ちゃんが横向きのまま寝てしまうことによる影響についてお話します。

股関節脱臼

股関節脱臼とは、足の付け根の関節が外れる病気です。赤ちゃんの足は、両膝と股関節を曲げてM字型に開脚した状態が基本です。赤ちゃんが自由に足を動かせる環境が大切です。

仰向けに寝ていると、自然に足はM字型になりますが、横向きで寝ていると、足が内側に倒れた状態となります。向き癖がある赤ちゃんも体が傾いているため、向いている方向とは反対の足が立てひざの状態となり、股関節脱臼を誘因することがあります(参考文献3)。

歯並び

乳児がうつ伏せで寝ている場合、歯並びにも影響することがわかっています(参考文献4)。うつ伏せや横向きの状態で寝ていると、顎の骨に負担がかかります。長時間の睡眠となるとその影響は少なくありません(参考文献5)。

どの年齢でも仰向けに寝ることで、歯並びや噛み合わせなど歯のトラブルは起こりにくいといえるでしょう。

腕のうっ血

横向きに寝ていると、下になっている腕や足がうっ血したりしびれたりすることがあります。ぐっすりと眠っていて寝返りをしない、または自分で動けない赤ちゃんの場合、そのままの姿勢でいると、血液循環が妨げられる可能性があり危険です。

頭の形

赤ちゃんの頭の骨は、何枚かの骨に別れています。つなぎ目を頭蓋骨縫合といいます。月齢の低い赤ちゃんの頭の骨は、やわらかく縫合がまだ癒合していないため変形します。寝る向きによって、ベッドに接している部分が圧迫され、扁平になったり頭全体を見ると歪んだりすることがあります。向き癖や横向きになって寝ている場合、頭の形が気になってくることがあるかもしれません。

枕は使用しない

赤ちゃんが横向きで寝るからといって、枕を使用するのは危険です。赤ちゃん用の枕であっても、姿勢が変わったときに口などを塞いでしまう危険があります。赤ちゃんは、硬いベッドに仰向けに寝ることが奨励されています。特に医学的なアドバイスがなければ、枕などを使用しないようにしましょう。

横向きが好きな赤ちゃんに安全に横向き寝させるやり方

横向きが好きな赤ちゃんに安全に横向き寝させるやり方
横向きが好きな赤ちゃんに安全に横向き寝させるやり方

 

横向き寝が好きな赤ちゃんを安全に寝かせるにはポイントをお話します。

向きを直す

赤ちゃんが横向きに寝ていて心配なときは、仰向けに姿勢を直してあげましょう。授乳のときや親がトイレなどに起きたときに、チェックしてあげるといいでしょう。

自分で寝返りをしたり動いたりできる時期には、無理に仰向けにしなくてもいいといわれています。でも、歯並びや腕のうっ血などが心配な場合は、気がついたら仰向けにしてあげると影響が少ないでしょう。

下になっている腕を前に出す

横向きになっている赤ちゃんの腕が体の下に入り込んでいると、そのままうつ伏せになってしまう可能性があります。そのため、下になっている腕を前に出しておくといいでしょう。そうすると、うつ伏せの方向に倒れにくく、腕のうっ血も防止できます。

赤ちゃんの周りに何も置かない

赤ちゃんが寝ている場所には、枕やクッション、おもちゃなどを置かないようにしましょう。ベッドも固めのものを使用し、シーツをぴったりと敷きましょう。ふわふわした寝具やクッションなどは窒息の原因になります。万が一、赤ちゃんが横向きやうつ伏せで寝てしまっても、口や鼻を塞ぐ可能性があるものを置かなければ、窒息のリスクは下がります。

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夜うつ伏せでしか寝ない赤ちゃんの対処法

うつ伏せでしたか寝付けない赤ちゃんもいることでしょう。その場合、どのように危険を避けたらいいのか気になりますよね。具体的な方法を紹介します。

うつ伏せて寝た後に仰向けにする

仰向けで寝ることが難しい場合は、うつ伏せで寝かしつけた後、仰向けにしてあげましょう。その際に、赤ちゃんの体を暑くさせすぎたりしないことや、やわらかい寝具を使わないようにすることが大切です。

うつ伏せにならないようにグッズを使用する必要はない

赤ちゃんが寝ている間に、うつ伏せにならないようにするためのグッズが色々とありますが、アメリカの小児科学会では、それらの使用をすすめない声明を出しています。うつ伏せ寝防止グッズによってリスクが削減したという結果が出ていないからです。(参考文献6)

どうしてもうつ伏せ寝防止のグッズを使用したい場合は、親が眠っている間に使用せずに、親が赤ちゃんを見ていられるときにしましょう。

赤ちゃんの正しい寝かせ方

1歳未満の赤ちゃんは仰向けがよいとされています。その他に、赤ちゃんを安全に寝かせるときに大切なポイントについて紹介します。

水平なベッドに仰向けに寝かせる

赤ちゃんが寝る場所は、水平で硬めのベッドがいいとされています。シーツはぴったりと敷き、フワフワしていないものが適しています。

またソファや椅子などに寝かせたり、親も眠るときにベビーラックに寝かせたりすることは危険です。ベビーラックは、親がこまめに赤ちゃんの様子を見てあげられるときに使用するようにしましょう。

ベッドには何も置かない

赤ちゃんが寝ている周囲やベッドの中には、枕やクッション、ぬいぐるみなどを置いてはいけません。何かの拍子に赤ちゃんの顔を覆って呼吸を妨げる可能性があるからです。

また、ベッド周りにおむつやティッシュなどを置いている人もいるかもしれませんね。赤ちゃんが寝ている場所に落ちてこないように工夫しましょう。窓辺にベッドがある場合も、カーテンやブラインドの紐などが赤ちゃんにかからないように整備しておきましょう。

親は赤ちゃんと違う布団で同じ部屋で寝る

アメリカの小児科学会では、少なくとも生後6ヶ月まで、可能なら1歳までは親と同じ部屋に赤ちゃんを寝かせて、赤ちゃんは親と別のベッドで寝かせることを奨励しています。

欧米とアジアの習慣の違いから、アジアでは必ずしもベビーベッドを使用しているわけではありません。「川の字」になって寝るという文化に基づいて、添い寝や添い乳をしている人も多いことでしょう。

その場合でも、基本的に赤ちゃんと親の布団は別として、親は赤ちゃんから少し離れた場所で寝ることをおすすめします。赤ちゃんに添い寝をしていて誤って赤ちゃんに覆いかぶさることがないように注意しましょう。

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赤ちゃんは、横向き寝ではなく仰向けが基本

赤ちゃんの横向き寝についてお話しました。赤ちゃんが安全に眠れるようにベッド周囲には何も置かず、医学的なアドバイスがない場合は、仰向けを基本に寝かせましょう。1歳になるまでは、親と同じ部屋で親とは違う布団で寝ることをおすすめします。

【参考文献】
1. 厚生労働省 「乳児突然死症候群(SIDS)について」
2. 厚生労働省 「睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう」
3. 日本小児科学会 「先天性股関節脱臼予防パンフレット」
4. うつ伏せ寝で育てられた小児の顎顔面形態に関する研究ー海原康孝、天野秀昭、三浦一生、長坂信夫、石田房枝ー小児歯科学雑誌 37(4):695-699 1999
5. 日本口腔筋機能療法学会
6. American Academy of Pediatrics

記事監修

河井恵美|助産師・看護師

看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。

構成/HugKum編集部

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