子どもにお金や社会のしくみを教え、「自立する力」を育むための講座を全国で実施している『キッズ・マネー・ステーション』。子供のときから、お金のセンスを身につけ、稼ぐ力を育むマネー教育の講座は、「おもしろい!」「受けてよかった!」というママパパや子どもたちの声がたくさん届いています。
そんな受けてみたいマネー教育No.1の『キッズ・マネー・ステーション』の授業をお伝えするのが【HugKumキッズマネー講座】。最終回の第6回のテーマは「会社をつくる」です。
大人が働く現場で考えている大切なこと
こんにちは、キッズ・マネー・ステーションの八木陽子です。
キッズ・マネー・ステーションの人気講座の一つに、「ヒット商品開発研究所」というコンテンツがあります。これは、教室や会場で、子供たちがグループになって、会社組織を疑似体験して、それぞれの役割を担い協力しながら、世の中でヒットしそうな商品を考える内容の講座です。
これをある会場で実施したところ、参加していたお子さんの保護者であり経営者の方が、つぶやかれました。
「この講座は、日本の教育の中で、最も遅れているけど、最も大切なこと。我々、大人が日々、働く現場で考えていることだ!」
子供たちで会社をつくる
具体的にヒット商品開発研究所で学べる内容をご紹介しましょう。
会社での役割を決める
まず子供たちは5名前後を1グループとして一つの会社を作り、社長、企画部長、広報部長、営業部長、製造部長を決めます。企画部長は会議の進行役、広報部長は発表シートの責任者、営業部長は市場調査の責任者、製造部長は商品の絵を描く責任者社長は、話し合いやアイデアがさく裂したときなどの決定権を持ちます。
それぞれ大変そうな役割ですが、講座自体はとても和気あいあいと進められていきます。高学年対象ということもあり、初めは恐る恐る、恥じらう様子もありますが、途中からはアイデアが溢れてきます。そして最後は一つの作品にまとめられるように、お互いの意見を尊重し合って結果を出す経験もできます。
ヒットするケーキの開発はビジネスそのもの
大抵の場合、ヒットする「ケーキ」を開発する設定で講座は進行し、「美味しいチョコレートを輸入したらいいんじゃないか」「いや、地元の食材で美味しく作れないか」といった話し合いがされます。
「光るケーキ」「しょっぱいケーキ」など奇抜なアイデアも出てきますが、本当にそれで売れるのか、実際に材料は存在するかなど吟味していく過程は、まさに“ビジネス現場”そのもの。どんなケーキを? 誰が? 誰に? どこで? どうやって? いくらで?売るのかを、順を追って知恵を絞るプロセスは、冒頭でつぶやかれた経営者がおっしゃるとおり、商品開発から販売戦略までのヒット商品を企画する大人たちと同じ作業なのです。
子供たちの発想やアイデアは無限!
そして驚くことに、子供たちのほうがずっと柔軟でユニークな発想を見せてくれることがあります。
ヒット商品開発研究で生まれたケーキ
「ヒット商品開発研究所」の講座は、本物のパティシエさんが参加する特典をつけたイベントとしても開催しています。パティシエさんは子供たちのアイデアのうち1点を選んで商品化して期間限定で販売してくれますが、子供たちの溢れ出すアイデアに、毎回舌を巻くほどです。
もしビジネスの現場で、「なんとか売れてくれないかなぁ」と他力本願でつぶやいている会社員の方がいたら、ぜひ、この講座の子供たちを見学してほしいほどです。
写真は、日本をテーマにして、ヒットするケーキを考案したときの子供たちの作品ですが、上から見ると、日本の国旗、横から見ると、富士山! お見事ですね。
「売る側」になると、お金の流れや働くことを感じられる
この講座のテーマは、「事業承継」や「起業家教育」と言われる分野にも重なる内容ですが、決して難しいことを教えているわけではないです。日常生活では「買う側」の子供たち。でも、「売る側」を知ることで、お金の流れや働く大変さとおもしろさを感じることができます。
「お父さんやお母さんは、いつも会社で一生懸命働いているのだなぁと思った」
「意見をまとめるのは大変だったけど、みんなで考えたから、最高のケーキになった気がする」
子供たちからそんな感想が上がってきます。
ぜひご家庭においても、子供と一緒に働く立場や売る立場を考えみてださい。
たとえば、「ポテトチップスがみんなが食べられるようになるには、農家の人以外、誰がかかわっているかな?」と問うてみてください。ジャガイモを育てる人、調理する人、袋を作る人、デザインする人、運ぶ人、お店の人・・・本当に多くの「仕事」がかかわっているのです。
子供たちは、普段の買う立場だけでなく、売る立場や様々な仕事を学ぶことで、視野が広がり、有意義な過ごし方につながると思います。
社会のしくみを知ることでよりよい日本に!
最後に。
お金が学べる絵本を紹介する連載から続いたキッズ・マネー・ステーションの連載も、実は今回で最後になります。
お金のことを学ぶことは、社会のしくみを知ること。
今、なぜ社会のしくみを知ることが必要なのでしょうか。
人々の寿命は延び、人生は長くなっています。でもそれ故、先が見えない、生活が不安という人も増えています。そして、残念なことですが、資本主義によって生じる格差や貧困も、社会問題となっています。
子供たちには、お金の流れと社会のしくみを知って、日本の未来をもっと明るいものにしてほしい。個人の生活でも、辛く、予想不可能なことがあっても乗り越える力を持ってほしい。そんな想いで、お金やキャリア教育を伝えています。
ぜひ、お父さんお母さんも、「お金のことなんて…」「将来のことなんて分からない…」とタブー視せずに、これからも少しずつ明るい未来を切り拓くために、親子一緒に学んでいきましょう。
執筆者
八木陽子(やぎようこ)
キッズ・マネー・ステーション代表
ファイナンシャルプランナー。海外でファイナンシャルリテラシー教育を視察した経験を活かし、子供向けマネー教育の普及に努める 。TV、新聞、雑誌、セミナーや講演などで活躍。著書や監修した書籍に『6歳からのお金入門(ダイヤモンド社)』『お金は子どもに預けなさい(経済界)』『10歳から知っておきたいお金の心得(えほんの杜)』 などがある。
記事監修
「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2018年までに1100件以上の講座実績を持つ。
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キッズ・マネー・ステーション主宰の八木陽子さん監修の本はこちら↓
「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)