「うちの子らしさ」ってなに? 得意なことをのばすためにできることは【井桁容子先生の子育て相談】

乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「うちの子らしさ」についてお話を伺いました。

Q:得意なことをつくるため、早いうちから習いごとをさせたほうがいいのでしょうか?

「自分らしさ」は親がつくるものではない

たとえば、積み木を高く積みたいのに、うまくいかない。そんなとき、子どもはどうするでしょう? 怒って積み木を投げ出す子、何度でもやりなおす子、大人に「やって〜」と頼む子……。こうした反応の違いは、おもに生まれもった気質によるものです。

もちろん、成長とともに感情をコントロールする力が身についていき、育つ環境にも影響を受けて「性格」がつくられていきます。でも「その人らしさ」のベースとなる気質は、一生かわらないといわれています。つまり「自分らしさ」は、すべての子どもにもともと備わっているのです。

親の役目は親が望む個性をつくることではなく、子どもの気質を受け入れて上手につき合っていく手伝いをすること。そして子ども自身が自分をのばせるように応援すること。そのために大切なのが、子どもの興味や日ごろの様子から「ありのまま」を見きわめることです。

「得意なこと」=出来栄えのよいこと?

親には「子どもを立派に育てなければ」という責任感や、子どもへの期待があります。得意なことがあってほしい、と思うのもそのためでしょう。たしかに、得意なことは自信につながります。でも、親は「得意」と「よい結果を出せる」を混同していることが少なくないのです。親が選んだ習いごとなどを頑張らせ、成果をあげたら、それが「得意」。そして「〇〇が上手」「〇〇は人に負けない」ということが「その子らしさ」だと思ってしまう……。

でも、これは大人の捉え違いです。子どもにとっては、好きなことや楽しいこと、やっていると幸せなことが「得意なこと」。出来栄えや評価は関係ありません。そして本当に得意なことを楽しんでいるときこそ、「自分らしさ」を発揮している瞬間なのです。

共感的な環境が「その子らしさ」をのばす

子どもが得意なことは、親が見てわかりやすいものや評価につながるものとは限りません。でも、何が好きで何に打ち込みたいかは、子ども自身に任せておきましょう。今していることが一生の楽しみになるかもしれないし、興味の対象は変化しても、この時期に身につけた集中力が生かされるときがくるかもしれない。どんな形にせよ、「好き」を突きつめることは、必ず子どもの学びと幸せにつながります。

子どもを理解するためには、一歩踏み込んだまなざしが必要です。生活の様子をていねいに見てください。何に興味を示しますか? どんなときにピカピカの笑顔を見せますか? ただ「テレビアニメが好き」ではなく、「この番組のどこが好きなんだろう?」と考えてみましょう。おもしろいセリフ、おしゃれな服、かっこいい音楽……。まずは子どもが自発的に目で追い、手をのばすものを知りましょう。

ただし親は、子どもとの距離が近い分、見えにくいことも多いもの。親が子どもを知り、子どもが「自分らしさ」を存分にのばしていくためには、家族以外との豊かなかかわりも必要です。さまざまな人や環境、価値観に触れることで、子どもは新たな発見ができるし、親以外の目で「その子らしさ」に気づいてもらうこともできるからです。

家族ぐるみのつき合いや友だちとの遊びなど、人とのかかわりを楽しめる場をつくることこそ、親にできる「応援」の第一歩です。こうした環境で子どもが「自分らしさ」を十分にのばし、「もっとやってみたいこと」を自覚してから習いごとなどを始めると、意欲や向上心が育ち、自信につながります。

 

記事監修

井桁容子|乳幼児教育保育実践研究家

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。


2020年9月号『めばえ』 イラスト/原あいみ(京田クリエーション) 構成/野口久美子

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

【井桁容子先生監修/口グセ言い換えノート】記事一覧
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