「小焼け」は、調子やリズムを整えるためのもの。特に意味はありません
「小焼け」だから「夕焼け」になりかかった状態のこと?と思う人もいるかもしれませんね。
でも、「こやけ」は国語辞典にはあまり載っていない謎の言葉なのです。
『日本国語大辞典』(小学館)には、「夕焼小焼」の形で見出し語があります。それによると、「(「こやけ」は、語調を整えるために添えたもの)「ゆうやけ(夕焼)」に同じ」と説明されています。
「仲良しこよし」の「こよし」も同じ
つまり「小焼け」は、それ自体あまり意味をもたない語で、調子やリズムを整えるための語のようです。似たようなことばに、「仲よしこよし」の「こよし」があります。
ところで、「小焼け」は「夕焼け」につくくらいですから「朝焼け」にもつけられるだろうと考えたかどうかはわかりませんが、「朝焼け」と一緒に使った童謡詩人がいました。
教科書にも多数作品が掲載されている詩人・金子みすゞです。
「朝焼け小焼だ 大漁だ」で始まる『大漁』という、イワシの大漁を海の中のイワシの側に視点を変えたみすゞらしい詩です。
記事執筆
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。