赤ちゃんの「ひどい夜泣き」は睡眠障害かも?悩んだときの対処法とは【専門医監修】

夜泣きが続くと、親も寝不足になり心身ともに疲弊します。また夜泣きが長期化すると、子どもの発達にも影響が! 2018年日本初の「夜泣き外来」を開設した、「兵庫県立リハビリテーション中央病院」の子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター長 菊池清先生に、夜泣きを止める方法や受診の目安などについて教えていただきました。

夜泣きとは、生後6カ月以上4歳未満で、夜、眠らないでぐずり続けること

夜泣きの定義は、国や地域、研究者によって異なりますが、私は「生後6カ月以上4歳未満で、夜間に泣き出し、眠らないでぐずり続ける状態」を夜泣きと捉えています。

生後6カ月未満の赤ちゃんは、眠り続ける力や起きている力が未発達なため、夜、ぐずることはよくあります。また胃が小さいので、夜中でも数時間おきに空腹を感じて泣きます。

しかし生後34カ月ごろになると次第に夜、眠り続けられるようになります。生後6カ月ごろになると、夜間の授乳も少なくなり、夜中まとめて6時間ぐらいは眠れるようになります。

3割の親が気になる「夜泣き」を経験

けれど生後6カ月を過ぎても、夜間に何度も目覚めて泣いたり、一度、目覚めるとぐずり続けたりする子も。これが「夜泣き」です。30%ぐらいの親御さんが、気になる夜泣きを経験しています。

 

夜泣きで育てにくさを感じたときは「乳幼児慢性不眠障害」の可能性も

具合が悪い訳でもないのに、夜寝てくれず、日中もグズグズするなど困った状態が続いたときは「乳幼児慢性不眠障害」が疑われる場合もあります。乳幼児慢性不眠障害の症状と判断基準は次の通りです。

「ひどい夜泣き」(乳幼児慢性不眠障害)の症状と判断基準

以下の1~3を満たすものが「ひどい夜泣き」(乳幼児慢性不眠障害)

1、生後6か月以降の乳幼児

2、下記のA項目が1つ以上あって、B項目に該当するものがある

3,2が週3日以上あり、3か月以上続いているか続きそうか

乳幼児慢性不眠障害では、子どもの発達への影響も懸念されます。

A 夜間睡眠困難の症状

①寝付きが悪い(眠るまで20分以上かかる)

②途中で目覚める(再び眠るまで20分以上かかる)

③朝の早すぎる目覚め(望まれる時刻より30分以上早い)

④寝室に入ることを嫌がる(ぐずる)

⑤保護者がいないと眠れない

 

B 夜間睡眠困難に関連する「気になる症状」

①昼間に眠そう、昼寝をよくする ②昼も夜も眠ることを嫌がる ③疲れやすい・身体がだるそう ④不活発 ⑤機嫌が悪い ⑥かんしゃくをよく起こす ⑦頭をぶつけたり、髪を抜いたりする ⑧母親から離れて遊べない ⑨意欲がなさそう ⑩ボーッとしていることがある ⑪根気がない ⑫転びやすい ⑬落ち着きがない ⑭注意散漫 ⑮言葉の後れ ⑯運動発達の遅れ ⑰離乳食・食事がすすまない ⑱保護者が育てにくさを感じる

睡眠障害国際分類第3版を参考にして、菊池医師が作成

睡眠障害が子どもの発達に支障をきたすことも

2017年に発表されたオランダの研究では“ひどい夜泣き”が2歳以降に和らいだり、解消した子に比べて、乳児期から6歳になるまで睡眠障害が続いた子では、7歳で脳の容積が小さいことが報告されています。

またカナダの研究では、言葉の遅れがある5歳児には、16カ月の時点で夜間にまとめて眠れない子が多いという報告もあります。

保育園や幼稚園などに通っていると、先生から「名前を呼んでも振り向かない」「簡単な指示が理解できない」「言葉の数が少ない」「転びやすい」「急に泣き出してパニックになることがある」など気になる点を報告されることもあります。

子どもの健やかな発達のためにも、夜泣きを解消する取り組みが必要です。

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朝の光を浴びて体内時計を育て、入浴は眠る1時間以上前には済ませて

夜泣きに悩んだときは、まずは心地よく眠れる環境を整えましょう。

その1つが、体内時計を育てて、生活リズムを整えることです。朝7時から夜7時までの12時間を「明るくて賑やかで、活動的な生活環境」。夜7時から翌朝7時までの12時間は「暗くて静かで、穏やかな生活環境」としてください。

朝、目から入る明るい自然光は、脳を目覚めさせ、脳にある体内時計(中枢時計)をリセットします。すると全身の体内時計も調整されて、脳と体が次第に昼と夜の区別をつけるようになります。

また眠りには、深部体温も影響しています。深部体温とは、脳や内臓における体温のこと。深部体温が下がると、体の動きが抑制され、脳や内臓の動きも穏やかになり、体全体の消費エネルギーが低下し、睡眠モードになっていきます。

しかし就寝前の入浴は、体を温めて深部体温を上げてしまうので、睡眠モードの妨げに。そのため遅くても入浴は、睡眠の1時間前までには済ませましょう。

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夜、眠る1時間前のブルーライトには要注意! 布団のかけ過ぎも睡眠を妨げます

布団のかけすぎが睡眠をさまたげることも

眠る1時間前からはスマホやタブレットを見せないで

夜泣きを防ぐには、眠る環境を整えることも大切です。

夜は、スマートフォンやタブレットなどで子どもに動画を見せたり、テレビを見せたりするのはやめましょう。液晶画面からの強い光(ブルーライト)は、網膜に負担をかけて、脳の体内時計を混乱させ、眠りを妨げます。また液晶画面だけでなく、ブルーライトは実は白色LEDライトにも大量に含まれています。強い光が睡眠を妨げるので、夜眠る1時間前にはブルーライトを浴びないように心がけてください。

寝相が悪い子は、布団が暑すぎることも

寒くなってくると、子どもが風邪をひかないように布団などをしっかりかける親御さんもいますが、睡眠時は前述の深部体温が下がらないとうまく寝つけません。そのため室温は、冬は2025度を目安にエアコンなどで調整してください。パジャマは動きやすいものを選んで、布団のかけ過ぎには要注意。寝冷えが心配なときは、スリーパーを着せてもいいでしょう。寝相が悪い子は、暑すぎるサインです。

また夜、目覚めたときにかかわり過ぎないことも大切です。

書籍『夜泣きが止まる本』では、夜泣き対策として、具体的にどんなことをしたらいいのかが月齢ごとにわかる「乳幼児の眠りを育てる12箇条」を提唱しています。是非、参考になさってください。

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悩んだときは「すいみん日誌」を2週間つけて、小児科医や保健師に相談を

前述の乳幼児慢性不眠障害が疑われたり、「夜、ぐっすり眠れるように工夫しても効果がない」「夜、寝てくれなくて、育てにくさを感じる」といった場合は、一度小児科医や保健師に相談しましょう。

眠っていた時間、食事、入浴、授乳の時間を記入する「すいみん日誌」を2週間つけて見せると、より状況が伝わります。

 

また就寝時のいびき、鼻づまり、口呼吸、息づかいが荒い、かゆがる、うつぶせ寝を好む場合は小児科へ。おっぱい・ミルクの飲みが悪い、授乳間隔が空かないときも、小児科医に相談しましょう。

 

兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター長

菊池清(きくち・きよし)先生

倉敷中央病院、京都大学医学部附属病院などを経て現職。19891992年、アメリカ・ワシントン大学で成長因子の研究に従事。2018年、日本初の夜泣き外来を立ち上げる。日本小児科学会認定 小児科専門医、日本内分泌学会認定 内分泌代謝科(小児科)専門医。近著に「夜泣きが止まる本」(風鳴舎)

『夜泣きが止まる本』風鳴舎・刊 定価1400円+税

購入特典として、「夜泣きが止まる12箇条」「すいみん日誌」をダウンロードできます。

 

 

構成/麻生珠恵

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