フードマイレージとは? 産地消との関係と日常から私たちにできること

フードマイレージとは、近年のエコ運動に大きな関係のある指標です。フードマイレージの基本知識や、日本の食料輸入が環境に与えている影響について解説します。エコにつながる地産地消についても紹介するので、買い物をする際の参考にしてみましょう。

フードマイレージとは?

フードマイレージという概念が意識され始めたのは、比較的最近のことです。そのため、あまりピンとこないという人も少なくありません。そこで、まずはフードマイレージの基本について確認していきましょう。

食料の総輸送量や距離を指す

私たちが日々食べている物は、作られた場所から何らかの輸送方法によって運ばれてきます。その供給構造を数字に表したものが「フードマイレージ(食糧輸送距離)」です。

食物を輸送する際には、トラック・鉄道・船舶といったさまざまな手段が取られます。フードマイレージは輸送距離のみにフォーカスしたものなので、輸送手段による二酸化炭素(CO2)排出量の違いなどまでは算出されません。

しかし、フードマイレージを算出することにより、各国の食料輸入による環境への影響について簡単に比較できるようになりました。環境保護の観点から、意識していきたい指標の一つといえるでしょう。

イギリスで生まれた考え方

フードマイレージは、イギリスの消費者運動家であるティム・ラング氏が提唱した「フードマイルズ」という概念が元になっています。

ラング氏は、「生産地から消費者の手元まで運ばれる距離が長いほど、CO2の排出による環境汚染を加速させてしまう」という点に着目しました。この考えは多くの人々の賛同を得て、なるべく地域内で生産された食物を消費しようとする「フードマイルズ運動」につながっていったのです。

日本でフードマイルズの考えが導入された際に、当時の農林水産政策研究所の所長により、フードマイレージという名称が付けられました。

フードマイレージの求め方

フードマイレージは「輸送量×輸送距離」で計算され、単位はt・km(トンキロメートル)で表されます。穀類・肉や魚・野菜・果物などのほか、香辛料や油、コーヒーやタバコなどの嗜好(しこう)品なども計測の対象です。

フードマイルズと名称こそ異なりますが、どちらも計算方法は変わりません。とてもシンプルに算出できるため、多くの人にとって食料輸入についてのデメリットの部分を考えるきっかけとなるでしょう。

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フードマイレージが高いってどういうこと?

CO2の排出量という点はもちろん、それ以外の観点からもフードマイレージは低い方が望ましいです。ここでは、フードマイレージから見た日本の現状について解説します。

食料自給率が低いということ

フードマイレージが高いということは、国で消費する食料の多くを輸入に頼っているということです。その分自分の国で生産された食料は消費されなくなるため、自給率の低さにつながっていきます。

なお、令和元年度の日本におけるカロリーベースでの食料自給率は「38%」です。ほかの先進国が100%に近い自給率であるのに対して、とても低い数字といわざるを得ません。

出典:日本の食料自給率:農林水産省

日本はフードマイレージがとても高い

世界の国々と比較しても、日本のフードマイレージは「断トツの1位」です。フードマイレージが高くなる理由は次の3点にあると考えられます。

・食料自給率が低い
・島国である
・食生活の欧米化

日本ほどの人口の多い国で、食糧自給率が低いことは食料輸入量の増加につながります。日本は食料の総消費量の60%以上を輸入に頼っているのです。島国であるため、輸入するとなると飛行機や船による輸送距離が長くなってしまいます。

また、食生活が欧米化し、肉やパンの消費量が増えたことも原因の一つといえるでしょう。

フードマイレージが低い国はどこ?

日本のフードマイレージを六つの国々と具体的に比較した結果があります。日本に次いでフードマイレージが高かったのは韓国やアメリカです。ただし、その数値は日本の約3分の1程度に過ぎません。

イギリスやドイツは日本の約4分の1です。6カ国中最もフードマイレージが低かったフランスは日本のわずか9分の1ほどでした。日本のフードマイレージが突出して高いことがよく分かります。

出典:フード・マイレージについて

フードマイレージにおける日本の課題

フードマイレージの問題については、国としての取り組みはもちろんのこと、個人単位でも意識を変えていく必要があるでしょう。食と環境について考えるべきポイントについて紹介します。

食料自給率を上げる

少し前のデータになりますが、2003年の輸入食料のCO2排出量は「1690万t」で、これは国内での食料輸送時におけるCO2排出量の1.87倍に相当していました。フードマイレージを下げるため、輸入量を減らして食料自給率を上げたいところです。

しかし、日本で食べられている食料のうち約60%は輸入食品です。食生活の豊かな日本の食卓には毎日さまざまな料理が並びますが、もしそこから輸入食品を取り除いたとしたら、途端に寂しい食卓になってしまうでしょう。

輸入食品に頼らず自分の国で食料を安定供給できるよう、国内生産について見直していく必要があるといえます。

地産地消を進めていく

食料自給率を上げるために「地産地消を意識した買い物をすること」をおすすめします。地産地消とは、その地域の生産物を地域内で消費するという考え方です。

買い物をするとき、節約できる輸入品を選ぶ人は少なくないでしょう。しかし、国産品ではなく輸入品を選ぶことで、環境に必要以上の負荷をかけているのかもしれないのです。

安さやおいしさのほかにも「地元産であること」を食料品を買うときのポイントに加えると、環境に優しい買い物ができるようになります。

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地産地消について知ろう

地産地消が食料自給率を上げると聞いても、話の規模が大きすぎて個人で取り組む意義が実感しにくいかもしれません。

最後に、地産地消によって消費者個人にどのようなメリットがあるのか、促進するにあたってどんな問題に取り組む必要があるのか詳しく解説します。

地産地消がもたらすものとは

流通コストやフードロスが削減できるなど、地産地消が生産者側にもたらすメリットは少なくありません。また、消費者側にも次のようなメリットがあります。

・CO2の削減につながる
・新鮮な食材が手に入る
・生産者が身近なので安心できる

これまでにも述べてきたとおり、食料を輸送する距離が長いほどフードマイレージが高くなります。地元産の食品を消費する量が増えれば、その分CO2の排出が抑えられるでしょう。

また、その土地に適した旬の野菜は新鮮で栄養価も多く含まれるとされています。生産者がすぐ身近にいるため安全性の確認がしやすく、産地の詐称といった問題は起きにくくなるでしょう。

地産地消を進めるにあたって必要なこと

多くのメリットがある地産地消ですが、簡単に促進できるわけではありません。その大きな足かせとなるのは、「需要と供給のバランス」「流通・販売コスト」といった生産者側が抱える問題です。

農家が少なければ需要に生産が追いつかず、逆に需要が少なければ農産物が余ってしまうでしょう。また、地産地消を目指すのなら、地元で販売できるルートを農家が自分で確保する必要があります。

近年では生産者と消費者をつなぐサービスを展開する企業なども増えてきているので、こうしたシステムを利用することも地産地消を進める一助となるかもしれませんね。

身近な食の問題をしっかり確認しよう

フードマイレージとは、食料を輸送する際の重量と距離を掛け合わせたもので、おおよその「CO2排出量を推測する一つの指標」となっています。

残念ながら日本はフードマイレージが世界第一位です。地理的な問題も関係しているとはいえ、地球温暖化問題を考えれば日本が抱える重要な課題の一つであるといえるでしょう。

フードマイレージを下げるのに役立つのが、地元で生産された食料を地元で消費する地産地消という考えです。個人ができることから取り組んでいくことで、日本の食料自給率を上げ、少しでも地球温暖化を食い止められることでしょう。

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