栄養価が高く、体にも良いとして、料理やお菓子作りで活躍するはちみつ。しかし、「はちみつは何歳からあげたらいいの?」という声を聞いたことはありませんか? 生後1歳未満の乳児には与えると死亡事故につながると言われるはちみつですが、赤ちゃんにはちみつをあげてはいけない理由には何があるのでしょう。
当記事では、その理由や1歳を過ぎた赤ちゃんへの正しいはちみつのあげ方や、メープルシロップはあげてもいいのか、などの疑問についてご紹介します。
目次
はちみつは何歳からあげたらいいの?
砂糖の代わりに甘み付けとして愛用されるはちみつですが、子どもには何歳から食べさせてよいのでしょうか。
1歳まではあげてはいけない
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」によると、はちみつは1歳を過ぎたらあげてもいいけれど、それ以前は与えてはいけないと注意喚起されています。では、なぜ1歳まではあげてはいけないのでしょうか? その理由を次に説明します。
赤ちゃんにはちみつをあげてはいけない理由
1歳未満の赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけない理由は、はちみつには「ボツリヌス菌」が含まれていることがあり、赤ちゃんがはちみつを食べてしまうと「乳児ボツリヌス症」にかかってしまう可能性があるからです。
乳児ボツリヌス症とは?
ボツリヌス菌はまだ腸内環境が整ってない状態で摂取すると腸の中に定着し、増殖を始めます。そして増殖したボツリヌス菌が強力な毒性を発生させ、「乳児ボツリヌス症」を発症させてしまう危険性があるのです。
症状としては
・便秘
・手足を動かさないなど、動きが鈍くなる
・おっぱいやミルクを吸う力が弱くなる
・無表情になる
・呼吸が苦しそう
などが見られます。ほとんどの場合は適切な処置により症状は治りますが、まれに重症化して亡くなるケースもあり注意が必要です。
加熱しても少量でもあげてはいけない
ボツリヌス菌の耐性は非常に強く、一般的な家庭での調理法では死滅しない耐久性があります。たとえ、加熱して調理に使用したとしても、1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。また、お菓子やパンに少量入っているだけでも「乳児ボツリヌス症」を発症する可能性があります。手作りのおやつに入れるのもやめましょう。
はちみつ以外にも注意する食べ物
ボツリヌス菌は、土や川の水、動物の腸の中など、自然界に広く存在しています。はちみつ以外では、サトウキビ、黒糖、辛子レンコン、コーンシロップなどにも潜んでおり、十分注意が必要です。
もし与えてしまったらどうする?
万が一、赤ちゃんにはちみつを食べさせてしまった場合は、まずは手や口に付いているはちみつを拭いてください。そして、ミルクや母乳を飲ませ、はちみつを薄めるようにしましょう。
ボツリヌス菌は潜伏期間が長いため、すぐに症状が出るわけではありません。慌てずに赤ちゃんの様子をよく見て、異常がみられた時はすぐに医師の診察を受けましょう。
1歳以降の赤ちゃんへのはちみつのあげ方
1歳を過ぎた赤ちゃんにはちみつをあげるときには、どんなことに注意すればよいのでしょうか。
1歳を過ぎてから少しずつ
初めてはちみつを食べさせるときは、まずは1口ずつ、体調のいい日に食べさせてみましょう。万が一を考えて、病院の開いている日の午前中やお昼に少量のはちみつを与え、様子を見ながら慣れさせていくと安心です。
無理に食べさせなくてもいい
1歳なったからといって、急いではちみつを与える必要はありません。甘みを付ける甘味料は他にもあるので、そちらをうまく使いながらゆっくり進めていきましょう。
メープルシロップはあげてもいい?
はちみつと似たような使い方をするメープルシロップは、赤ちゃんにあげてもよいのでしょうか。メープルシロップのあげてよい時期とあげ方の注意点を説明します。
はちみつとの違い
はちみつはミツバチが花に蜜を集めて巣の中で貯蔵したものに対して、メープルシロップはカエデの樹脂を煮詰めたもので、そもそもの原料となる素材が違います。また、メープルシロップは製造過程で高温・殺菌されているという違いもあります。
メープルシロップは10ヶ月からあげて
赤ちゃんにメープルシロップを与えるのは、生後10か月ごろから。高温で殺菌処理はされていますが、赤ちゃんの中には食物アレルギーの反応が出る場合もあります。また、甘みがとても強いので、赤ちゃんの成長に合わせて少量ずつ取り入れてみてください。
メープルシロップのあげ方の注意点
メープルシロップをあげるときには、どんなことに注意をすればよいのでしょう?
最初は少量から
メープルシロップを初めて食べさせるときは、まずは少量から。食べさせたあとは、変わった様子はないか注意しましょう。スプーン1杯ぐらい食べられるようになるのは、消化器官が成長する3歳ぐらいです。それまでは、少しずつ与えましょう。
与えすぎない
メープルシロップは栄養も豊富な甘味料です。ついつい美味しくて、もっと食べたいとせがまれることもあるかもしれませんが、甘みがとても強いので、一度にたくさんの量を与えすぎると体に負担がかかってしまいます。甘みを少し感じる量から、少量ずつ使用していきましょう。
類似品に注意!
メープルシロップには、メープル風シロップなど類似品も多く販売されています。類似品の中には、はちみつが混じっている可能性もあります。購入する際は、入っている材料や成分をしっかり確認しましょう。
はちみつの使用は十分注意を
小さな赤ちゃんへのはちみつの使用は、命に関わる場合もあります。1歳まで与えてはいけない理由をしっかり理解し、1歳を過ぎて使用する場合も、十分注意して食べさせるようにしましょう。
参考文献
「授乳・離乳の支援ガイド」厚生労働省
「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」厚生労働省
「食品衛生の窓・ボツリヌス菌」東京都福祉保健局
記事監修
河井恵美
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。
文・構成/HugKum編集部