今月23日から放送スタートとなった『恋する母たち』(TBS金曜ドラマ・毎週金曜夜10時~)。ある日、突然夫が失踪し、息子とふたり暮らしとなってしまったシングルマザー、職場では誰もが羨むバリキャリママ、専業主婦として家庭を守るセレブ妻。境遇もそれぞれ異なる3人の母たちの前に魅力溢れる男性が現われて…。『女性セブン』(小学館)での連載開始から話題となった大人のラブストーリーに、妻や母としての自分を思わず忘れてしまいそう! 原作者の柴門ふみさんへのインタビュー後半では、夫婦関係をうまく保つコツや思春期の子供との接し方についてお話を伺いました。
『恋する母たち』に学ぶ。40代の「夫婦関係のずれ」はどこから生じるのか
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――『恋する母たち』の3人のように、母親たちを恋に走らせてしまう原因って、何なんでしょう?
夫とうまくいっていない。夫とのセックスレス。この2つは多いんじゃないかと思います。
精神的にも夫婦のすれ違いは溝を深まらせます。40代っていうと、旦那さんも仕事にのっている年代なので、家になかなか帰ってこないとか、帰ってきても疲れ切っていてあんまり話を聞いてくれないとか。そういうことで精神的にも疲れて切って寂しさや不満が溜ってくると、“もっと私のことを理解してくれる男がきっとこの世の中にいるかもしれない”なんて考えちゃうんでしょうね。実際にはいないんですけど(笑)。
――今回、母たちが恋に落ちるお相手の男性陣。みんな自分の話を聞いてくれたり、理解を示してくれる相手ですね。
女性はそういうのが好きですからね。漫画だからそういう男性が出てくるんです。でも、実際にはいませんから!(笑)。現実では、丸太郎のように“君のそばにずっといるよ”と言える男はいろんな女に言えちゃう人なんですよ。
――育児を手伝ってくれないという不満があとあと爆発する場合も?
夫婦関係をこじらせる要因のひとつとして、それも大きいですね。私が大変だった時になにも手伝ってくれなかったっていうのは、積み重ねになっていきますから。そんな時に、旦那さんが浮気なんかしていたら、もう堪忍袋の緒も切れるでしょう。あとは、お子さんがまだ小さいイヤイヤ期の時。真面目なお母さんは子供がイヤイヤすると、原因を探って真剣に受け止めてしまいますが、旦那さんがのんきに“放っておけばいいんだよ”なんて言うと、“やっぱり、男だから無責任なんだわ!”というふうになりがちです。
――30代後半から40代になると、女性としての焦燥感みたなものを感じている人もいるようです。
稀にものすごい恋愛体質の女性がいて、自分が女として扱われない事に対する恐怖心が強い人がいるんですね。年をおうごとに男性から自分が女として見られていないんじゃないか、魅力がなくなってしまうんじゃないかと怯える女性もいるんです。
――出産後は自分が女じゃなくなったと感じてしまう時というのはあるかと思います。
最初の出産後などは、授乳中、自分が動物になったんじゃないかなとか感じますよね(笑い)。私も第一子を産んだ時、25歳だったんですが、すごく産後太りをしまして。ところが、夫も担当編集者も口を揃えて「いや、べつに痩せなくていい」って言うんです。その時、ああ、もう誰も女として見てくれないんだろうなって、とてもショックだったんですよ。編集者は漫画さえ描けばいいんだよ、太ろうがなんだろうがっていう感じだし、夫も「もう結婚したんだし、子供も産んだんだから太ったっていいよ」と。えっ、25歳でもう誰からも相手にされないのかなっていうのが凄くショックでした。べつに夫にしてみれば、とくに深い意味もなく言った言葉だったんでしょうけどね(笑)。
女性がこういう気持ちを抱くのは、産後だけではなく40代、閉経を迎える50代と、女性ホルモンとの関係がすごく密接していると思うんです。とくに40代は、精神的な焦りもありますし、体もコントロールできない本能の欲求も襲ってくる時期だと思います。
――ズバリ、長年連れ添う夫婦円満の秘訣とは何だと思われますか?
所詮、夫婦は他人同士。それが基盤にあって、相手を変えようとは思わないことです。絶対に変わらないので。人ってそんなに簡単に変えられるものじゃないですから、あまり期待を持たないことでしょうね。期待をするから裏切られたと腹も立つのです。
――自分が相手に合わせて変わっていこうという考えに切り換えるのはどうでしょう?
変えられるのだったらいいですが、そうとはいかないところもあるじゃないですか。自分を変えるまではいかなくとも、視点を変えてみるというのは出来ると思うんです。相手のやることなすことに腹をたてるんじゃなくて、こんな変なこともする人なんだって笑いに変えちゃう方が気分的には楽になれますよね。うちの夫もそういう無神経な言葉に腹をたてていたんですけれど、「あ、この人って本当に思ったことを口にする人なんだ」って視点を変えるようになってからは、お笑いのネタにもなりますし、客観的になれるようになりました。とりあえず、子供の前では喧嘩はしないっていうのが最低限の円満かもしれません。
先輩ママの柴門さんからHugKum読者へ。思春期の子どもたちへの接し方
そうそう、『HugKum』の読者の方達に伝えたい事がありました。それはね、子育ての話になるんですが、これから子供達が思春期を迎えるとき、絶対に子供と同じ土俵には立ってはいけないと思います。子供と同じ土俵に立って親が感情的になって喧嘩をしたら、必ず見くびられますよ。それと、ブレてもダメ。ブレたらそこを子供はついてくるんです。
――親がブレてしまうと子供はどうなってしまうのでしょう?
この前言ったことと今日は違うとなると、子供もどうしていいかわからず不安になります。まだ反抗するパワーがあるお子さんならいいんですが、反抗できないぐらい気が弱くて優しいお子さんだと、不安になっちゃうんですよね。お母さんの顔色を窺ってしまうようになりますから。
お母さんがどーんとしていると、子供も不安にならず、安心するんです。
――もしも、母親が恋をしてもそんな姿は見せてはいけませんね。
そうです。うちも娘が中学生の頃、私がテレビに映っているレオナルド・ディカプリオを見て、“素敵!”って言ったら、怪訝そうな顔をして“お母さん、いい年して何を言ってんの”って、すっごく冷たく言われちゃって(笑)。それぐらい子供は母親が女になることを嫌がるんだなと思いました。
――男の子と女の子では母親の恋に対しての受け止め方に違いはありますか?
女の子の方が早熟なので、母親の変化に気がつくのは早いです。男の子はショックを受けるでしょう。やっぱり、母親の女の部分は見たくないと思うんです。漫画の中では杏が恋をしていることに気づいた息子の嫌悪感を描写しましたが、あれも実際に私の知人が経験した話なんです。再婚しようと思っている相手の男性とお子さんと一緒にご飯を食べに行ったらしいんですが、お子さん、ひと言も口をきかなかったそうなんです。それで、再婚は諦めたと言っていました。
最後に柴門さんは「マンガはあくまでマンガですから。読んでいるとき、観ているときに恋のドキドキを楽しんで、忙しい日常を一瞬でも忘れてくださいね」とアドバイスをくださいました。結婚、出産、子育て、そして夫との関係に…人生を重ねていくごとに女性はさまざまな経験のなかで時に迷い、時に苦悩しながらも日々を送っています。『恋する母たち』三人三様の生き方が、改めて自分を見つめるきっかけとなるのかもしれません。マンガでドラマで、物語を楽しんでみてください。
1~7巻発売中
小学館「女性セブン」連載
名門中学に息子を通わせている三人の母たちの物語。いずれの子供たちも出来が悪くて落第目前。
夫は外に女をつくって家を出て行ってしまったり、社内不倫に夢中だったり、波風立たないが刺激に乏しかったり・・・。互いの心中を少しずつさらけ出し合いながら、三様の人生はやがて交錯し始める。
金曜ドラマ『恋する母たち』は毎週金曜22時から、TBS系列で放送中!
©️柴門ふみ/小学館
取材・文/加藤みのり 撮影/田中麻以