「赤ちゃんに、どんなふうに話しかけてよいのかわからない」「ことばの発達が気になる」と悩むママ・パパは少なくありません。そうした子育ての悩みを抱えたとき、ぜひ読んで欲しいのが『0~4歳 わが子の発達に合わせた”語りかけ“育児』(発行/小学館)です。
同書は、イギリスの言語治療士・サリー・ウォードさんの書籍『Baby Talk』を翻訳したもので、原書はイギリスで評判に! 日本版の『0~4歳 わが子の発達に合わせた”語りかけ“育児』は、テレビや雑誌などで多くの反響を呼び23万部を発行。多くのママ・パパに指示されている理由とは!?
「語りかけ育児」って、そもそも何?
ことばを豊かに伸ばし、コミュニケーション能力を育てる育児書
『0~4歳 わが子の発達に合わせた”語りかけ“育児』(著/サリー・ウォード、監修/汐見稔幸、訳/槙 朝子、発行/小学館、2200円・税別)は、0か月から4歳までの月齢・年齢別に、ことばを豊かに伸ばす子どもとの関わり方やコミュニケーションの発達の様子、聞く力の程度などをわかりやすく解説した、ママ・パパに人気の育児書です。
「語りかけ育児」がめざすのは、学習の基礎づくり
ことばの発達は、知的な力と切り離して考えることはできません。「語りかけ育児」がめざすのは、学習の基礎づくり。といっても子どもに過度な負担を与える早期教育ではありません。ここでの基礎とは、ことばを理解したり、使ったりすることだけではなく、聞くことにも注意を向け、乳幼児の心と知能を無理なく伸ばしコミュニケーション能力を育むことです。
ママ・パパの中には「ことばやコミュニケーション能力は、親が意識しなくても自然と育まれるのでは?」と考える方もいるかも知れませんが、実は年齢に応じた適切な関わり方が必要です。同書では、それらをわかりやすく解説しています。
「語りかけ育児」で、ことばの遅れが気になる子にも変化が!
著者・サリー・ウォードさんは、「語りかけ育児」の効果を調べるために、ことばの発達が気になる子どもたちを2つのグループに分けて3歳になるまで追跡調査しています。
その結果「語りかけ育児」を受けなかったグループの85%は依然としてことばに遅れが見られました。一方「語りかけ育児」を受けたグループは、ほぼ全員、ことばの発達は平均水準になり、なかには年齢以上のレベルに達した子も。
3歳の段階で「語りかけ育児」の有無によって、遊びや会話の能力にかなりの差が出ることが判明したそうです。
「語りかけ育児」の方法は?
「語りかけ育児」の基本は、次の3つ。
●子どもと1対1で向き合う時間を1日30分作ること。
●その時間はテレビなどは消して、なるべく人の出入りは避けて。静かにリラックスできる環境を整える。
●同書の中で紹介されている月齢・年齢に合う言い方で語りかける。
ただし、いくつかの単語が話せるようになったからといって無理に言わせようとするなど、無理矢理「語りかけ育児」をするのは絶対NG! 親子で「語りかけ育児」の時間をリラックスして楽しむことが大切です。1日30分なので、忙しいママ・パパもトライしやすいのではないでしょうか。
監修者・汐見稔幸先生からmessage
語りかけ育児は、「自分が大好き」と言える子を育てます
同書には「完全に話しかけに徹するのみで、絶対に赤ちゃんに言わせようとしないことです」等々と、何度も言葉を変えながら、このことをはっきりさせようとしています。どうしてでしょうか(略)。
赤ちゃんの研究では、子どもには<自分の感情表出や声がきっかけになって、相手がそれにていねいに反応してくれる>という経験がたくさん必要であるということが明らかになっています(略)。自分のしたことに、大人がていねいに応じてくれるという体験の積み重ねが、幼い子どもの心に、自分が意味ある存在だという感情を育てていくのでしょう。相手の指示が先にあって、それに自分が従わされるという関係のもとでの行為が増えると、子どもは自分の存在が意味あるものと感じとることが難しくなるのです。
その意味で「語りかけ育児」は、ことばそのものを育てるだけでなく、子どもが温かい関係の中で本当に大事にされていると感じ取り、その結果、自己肯定の感覚を十分に持てるようになることを目指しているといえるでしょう。(同書より一部抜粋)
記事監修
東京大学名誉教授。日本保育学会会長。一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事。専門は教育学、保育学、育児学。NHK Eテレの『すくすく子育て』の出演でもおなじみ。保育者と保護者の交流誌『エデュカーレ』編集長。著書に『新装版 0~3歳能力を育てる 好奇心を引き出す』(主婦の友社)、『3~6歳 能力を伸ばす 個性を光らせる』(主婦の友社)など多数。
構成/麻生珠恵 写真/山本彩乃