「児童手当」のルールを再確認しよう! 2024年10月以降の拡充案や変更点も解説

子どもができたとき、最初に確認しておきたいのが「児童手当」です。日本には、児童を養育する親・保護者に対して現金を給付する制度があります。児童手当の基本情報と2024年中に適用される拡充案の詳細について解説します。

児童手当とはどのような制度か

子どもがいる世帯は、夫婦だけの世帯よりも支出が多くなる傾向があります。日本には「児童手当制度(以下、児童手当)」があり、児童を養育する親・保護者に一定額の手当が支給されます。制度の目的や支給額などを確認しましょう。

子育てに伴う経済的負担の軽減が目的

児童手当とは、中学校を卒業するまでの児童を養育する親または保護者に支給される手当です。かつては「子ども手当」と呼ばれていましたが、2012年4月に現在の制度に変更されました。

児童手当法によれば、児童手当には「家庭などでの生活の安定に寄与すること」と「次代の社会を担う児童の健やかな成長に資すること」という二つの目的があります。

児童手当というと、児童に対して支給されるものと思われがちですが、支給対象はあくまでも「児童を養育する親・保護者」です。子育てに伴う経済的負担を軽減するための手当といえるでしょう。

支給額と支給日

児童手当の支給額(月額)は一律ではなく、児童の年齢や子どもの数などによって変わります。

●3歳未満:一律1万5,000円
●3歳以上小学校修了まで:1万円 (第3子以降は1万5,000円)
●中学校修了まで:一律1万円

支給月は6月・10月・2月の年3回です。支給方法は口座振り込みで、4カ月分の手当がまとめて振り込まれます。例えば6月の支給日には、2~5月分の手当が振り込まれます。

振込先の預金口座は、原則「手当を受け取る人」が名義人でなければいけません。配偶者や子ども名義の口座は指定できない点に注意しましょう。

出典:
児童手当法 | e-Gov法令検索
児童手当制度のご案内|こども家庭庁

児童手当の支給条件を確認(2024年10月以前)

児童手当にはさまざまな支給条件があります。「支給対象となるケース」「支給対象にならないケース」「手当が減額されるケース」について確認しておきましょう。

児童の年齢は何歳まで?

児童手当の対象となる児童は、出生(0歳)から中学校卒業までです。「中学校卒業まで」とは、「満15歳に達してから最初の3月31日まで」を指します。例えば4月1日生まれの場合、15歳に達する日は出生の日から起算した3月31日(誕生日の前日)の終了時です。

3歳〜小学校修了前までの支給額は1万円ですが、第3子以降には1万5,000円が支給されます。ここでいう「第3子」とは、単純に3人兄弟の3番目を指すわけではありません。児童手当では、「高校卒業に相当する年齢までの子どもが何人いるか」を数えるのがルールです。

例えば高校3年生・中学3年生・小学校5年生の子どもが3人いる場合、「第3子」である小学校5年生の子どもには1万5,000円支給されます。しかし、1人目が高校を卒業すると「第2子」となるため、支給額は1万円になります。

海外在住でも対象になる?

児童手当は、児童が国内に住んでいる場合に支給されます。ただし海外留学をしている児童は、以下の条件を全て満たすことで支給対象となります。

●日本に住所を有しなくなった前日までに、日本に住所を有していた期間が継続して3年以上ある
●教育目的の海外居住であり、かつ父母と同居していない
●日本に住所を有しなくなった日から3年以内である

両親が海外にいる場合でも、子どもが日本国内にいれば児童手当は支給されます。児童の生計を維持している父母のいずれかは、児童の同居人を「父母指定者」として指定しなければなりません。

主な生計者の所得はいくらまで?

児童手当には、扶養する親族の数に応じた所得制限があります。ここでいう「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。

会社から給与をもらっている人の場合は、給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額となる点に留意しましょう。共働きの世帯の場合は、「前年中の所得が高い方」に基づいて所得制限の有無を判断します。

●所得制限限度額(下図①)の場合:児童手当を支給
所得制限限度額(下図①)記以上、所得上限限度額(下図②)未満の場合:一律で月額5,000円の特例給付を支給
●所得上限限度額(下図②)を超えた場合:なし

以下は、所得制限限度額および所得上限限度額のモデルケースです。児童手当や特例給付の対象であるかを確認しましょう。

「こども家庭庁HP|児童手当制度のご案内」を参考にHugKumにて作図

※上図「収入額の目安」は、給与収入のみで計算。あくまで目安であり、実際は給与所得控除や医療費控除、雑損控除等を控除した後の所得額で所得制限を確認します。

出典:
児童手当Q&A|こども家庭庁
児童手当制度のご案内|こども家庭庁

児童手当の申請手順

児童手当の申請手続き(認定請求)は、現住所がある市区町村で行います。申請に必要な書類と申請方法をチェックしましょう。申請が滞りなく進むように、市区町村のWebサイトも併せてご確認ください。

申請に必要な書類を準備する

児童手当を受給するには、「認定請求」が必要です。申請者が会社員の場合は、以下の書類を準備しましょう。

●健康保険被保険者証の写し
●申請者の口座情報(預金通帳の写しなど)
●申請者と配偶者のマイナンバーが確認できるもの
●申請者の身分を確認できるもの(運転免許証やマイナンバーカードなど)
●児童手当・特例給付認定請求書

「児童手当・特例給付認定請求書」は、市区町村のWebサイトでダウンロードするか、窓口に備え付けられているものを使用します。市区町村ごとに必要な書類が異なるため、事前に確認をしましょう。

現住所の市区町村に申請をする

認定請求の手続きは、現住所がある市区町村で行います。詳細については、各市区町村のWebサイトで確認しましょう。主な申請方法は以下の通りです。

●窓口での申請
●マイナポータルによる電子申請
●郵送での申請

「マイナポータル」とは、子育てや介護などに関する行政手続きをオンラインで行うサービスです。電子申請には、マイナンバーカードによる電子署名が必要となります。

なお、公務員は勤務先から児童手当が支給されるため、「現住所がある市区町村」と「勤務先」の両方に申請をしなければなりません。

児童手当申請のポイント

児童手当は、日をさかのぼっての支給が認められていません。手続きを忘れるとその分だけもらえる手当が少なくなってしまうため、早めの準備を心掛けましょう。申請のポイントと留意点を解説します。

出生の翌日から15日以内に申請しよう

児童手当は、申請をした月の翌月から支給が開始されます。子どもが生まれると何かと慌ただしくなりますが、出生日の翌日から15日以内に申請を行いましょう。

出生日による不公平が生じないように、児童手当には「15日特例」が設けられています。申請日が翌月になっても、15日以内であれば当月に申請したものと見なされるルールです。

例えば4月30日が出生日の場合、5月15日までに申請をすれば、5月から支給が開始されます。5月16日以降に申請をすれば、支給開始月は6月になってしまうのです。

現況届の提出は原則不要

これまでは6月分以降の児童手当を続けて受給するには、「現況届」の提出が必要でした。現況届とは、児童手当の受給資格を満たしているかを市町村が確認するための書類で、提出のタイミングは年1回(6月)です。

2022年6月分以降から現況届が廃止となり、受給者の利便性が向上しました。ただし、現況届の廃止は市区町村の判断に委ねられており、提出を求められるケースもあるようです。

なお、「離婚協議中で配偶者と別居している人」や「配偶者からの暴力などにより、住民票の住所地と異なる市区町村で受給している人」などは、引き続き現況届の提出が必要です。

引っ越し時は再申請が必要な場合も

受給元の市区町村が変わった場合は、あらためて認定請求をしなければなりません。具体的には、以下の手続きを行います。

●転出する市区町村:受給事由消滅の届け出
●転入する市区町村:児童手当の認定請求

認定請求は、転入した日(転出予定日)の翌日から15日以内に行いましょう。15日以内であれば、申請月分から支給が開始されます。また、引っ越しをしても受給元の市区町村が変わらなければ、児童手当に関する手続きは不要です(受給者と児童の同居関係に変更がある場合を除く)。

出典:児童手当制度のご案内|こども家庭庁

2024年10月に適用される拡充案とは?

岸田総理大臣は少子化対策の一環として、児童手当の拡充案を2024年10月に適用する旨を表明しました。拡充案には、どのような内容が盛り込まれているのでしょうか?

所得制限を撤廃

現行では、主な生計者に所得制限が設けられています。扶養親族が3人の場合、所得制限限度額の目安となる年収は960万円、所得上限限度額の目安となる年収は1,200万円です。年収が1,200万円を超える人には、児童手当はもちろん、特例給付も支給されません。

拡充案では、全ての所得制限を撤廃し、全員を児童手当(本則給付)の支給対象とするとしています。例えば3歳未満の児童がいれば、年収1,200万円以上の人でも、1万5,000円の児童手当が受給できます。

支給対象年齢を高校生年代まで引き上げ

現在、児童の支給対象年齢は、出生(0歳)から中学校卒業までです。拡充案では、支給対象年齢が「高校生年代まで」に引き上げられます。高校生年代とは、高校に在籍しているか否かを問わず、「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」を指します。

児童手当の支給時期については、現行の3回から6回に倍増される見込みです。4カ月に1回から2カ月に1回になるため、家計のやりくりがしやすくなるでしょう。

第3子以降は月額3万円を支給

拡充案で大きく変わるのが、第3子以降に対する児童手当です。日本では経済的な理由から、3人目の出産を諦める夫婦が少なくありません。児童手当を手厚くすることで、多子世帯の経済的負担を軽減する狙いがあります。

現行では、3歳から小学校修了前までの第3子以降に、月額1万5,000円が支給されています。拡充案では、0歳から高校生年代までの全ての年齢層において、第3子以降に月額3万円を支給する予定です。

一方で、1番目の児童が高校を卒業すると第3子が第2子に繰り上げられ、加算が受け取れなくなります。第3子の加算要件については、検討をしている最中です。

出典:「こども未来戦略」~ 次元の異なる少子化対策の実現に向けて ~ 

児童手当の拡充案と現状との違いをチェック

児童手当は、児童を養育する親・保護者の経済的負担を軽減するのが目的です。ただし、全ての子育て世帯に手当が支給されるわけではなく、児童の年齢や主な生計者の所得など、さまざまな条件を満たさなければなりません。

2024年10月には拡充案が適用される見通しです。児童手当の支給対象外だった人も対象となる可能性があるため、変更点を確認しておきましょう。最新の情報については、こども家庭庁や市区町村のWebサイトをご確認ください。

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構成・文/HugKum編集部

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