英語の読み書きは得意なのに、聞き取りが苦手という人は少なくありません。知らない単語ばかりならともかく、学校で習った簡単な文章すらうまく聞き取れないケースもあります。英語を聞き取れない原因と、効果的な学習方法について解説します。
英語が聞き取れない2つの原因
日本人が英語を聞き取れないのは、主に音と語順が原因です。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
音を拾えていない
全ての単語に「あいうえお」の母音が付く日本語は、多少発音やイントネーションが違っていても、何を言っているのか分かりやすい言語です。外国人が話す片言の日本語でも、聞き取れないことはほとんどありません。
ところが英語には、「th」「r」「l」「d」などの日本語にはない音が存在します。「let it go」を「レットイットゴー」ではなく「レリゴー」と言うように、表記と音が違うケースもあります。
日本人は英語特有の音を聞いたり発声したりする経験がなく、音が変化することも分からないため、うまく音を拾えないのです。
日本語に訳そうとしてしまう
短い文や単語は聞き取れるのに、長い文が聞き取れない人は、日本語に訳そうとしているのが原因かもしれません。
英語を学ぶときは、単語や文章を日本語に置き換えて理解するのが自然な流れです。読んだり書いたりするだけなら、時間をかけて日本語に訳すのもよいでしょう。
しかし会話ではどうでしょうか。途中で知らない単語や聞いたことのない音が出てきたとき、毎回日本語に訳している暇はありません。文章が長くなればなるほど理解が追いつかなくなり、混乱してしまうでしょう。
英語が聞き取れるようになる3ステップ
英語の聞き取り能力が高い人は、入試や就職活動でも有利です。子どもの受験対策にもなるので、親子で一緒に練習してみてもよいでしょう。英語が聞き取れるようになる、三つのステップを紹介します。
まずは単語や文章を学ぼう!
単語をたくさん覚えることは、英語力強化への第一歩です。
日本語でも、難しい言葉が出てくると意味を理解できないように、英語も知らない単語ばかりでは会話が成り立ちません。単語の意味や発音の仕方、会話での使い方を覚えておくだけで、聞き取りがスムーズになるでしょう。
単語学習のポイントは以下の2点です。
・一定の間隔を空けて復習する
・例文を丸ごと覚える
一つの単語を覚えたら、1日後、1週間後と間隔を空けてもう一度覚えると、記憶に残りやすくなります。辞書に掲載されている例文を、そのまま覚えるのも有効です。
ただ学校の授業で使う英和辞典の例文には、実際の会話で使うには不自然なものも多いため、ネイティブが使う「英英辞典」を用意しましょう。
文字を起こしてみよう!
単語や例文の学習と並行して、聞いた音声を文字に起こす練習をします。文字にして読んでみると、間違えた箇所や、聞き取れなかった箇所がよく分かります。
CDや動画などの英語教材を元に、短めの文章を何度か聞いて書き起こし、答え合わせする作業を繰り返してみましょう。
聞き取れなかった箇所は、声に出して練習します。子どもと一緒に、ゲーム感覚でやってみるのもおすすめです。
声に出してみよう!
日本語にない音をしっかりと拾うためには、発音の練習が欠かせません。知らない音は脳にとって雑音でしかなく、自分で発音できるようになってはじめて、意味のある音として認識できます。
発音を学ぶ際は、ネイティブの真似をするのが最も効果的です。教材に登場する人物になりきって、発声してみましょう。
実際に声に出すことで、アクセントやイントネーションも同時に学べるため、会話力も高まります。
英語を聞き取るコツ
子どもはともかく、大人は固定観念にとらわれてしまい、聞き取りができないこともあります。昔学校で習った知識は一旦リセットして、素直な気持ちで取り組みましょう。
聞き取り練習の前に、意識しておきたいポイントを紹介します。
知らない単語は調べるクセをつけて
単語の意味が分からなければ、聞き取り訓練の成果もあがりません。なんとなく聞いたことがあるけれど、意味や使い方は理解できていない単語は多いのではないでしょうか。
テスト勉強のために覚えた単語も、使わなければ忘れてしまいます。知らない単語はもちろん、記憶があいまいな単語が出てきたら、すぐに調べるクセをつけましょう。
意味だけでなく、いつどんなときに使う言葉なのかも一緒に覚えるのがおすすめです。
英語の語順のまま理解をする
日本語と英語は語順が異なるため、日本語の語順に無理に当てはめようとするのは無理があります。英語を日本語に訳すクセがある人は、語順のまま理解する練習をしましょう。
「I like Japanese food such as sushi」という文を、ネイティブは「私は好き・和食が・寿司のような」と語順のまま理解していきます。しかし日本人は「私は寿司のような和食が好き」と、日本語の語順に直してから理解しようとします。
最後の「寿司」まで聞いて、やっと全体の意味を把握できるのです。短い文ならこのやり方でも対応できますが、長文になると処理が追いつかなくなってしまうでしょう。
英語をそのままの語順で理解する習慣を付ければ、長い文もスムーズに聞き取れるようになります。
アメリカ英語以外は発音の違いに注目
同じ英語でも、アメリカとイギリスでは発音やアクセントが異なります。アメリカ英語を学んだ人が、イギリス人の会話を聞き取れないケースも珍しくありません。
オーストラリアのようなイギリス領だった国や、英語圏以外の国での英会話でも同じことがいえます。まずはアメリカ英語をしっかり聞き取れるようになってから、各国の発音の違いに注目していくとよいでしょう。
アメリカ英語とその他の国で、よく知られている発音の違いには以下のものがあります。
・「water(ウォーラー)」:イギリスでは「ウォーター」
・「can’t(キャント)」:イギリスでは「カント」
・「today(トゥディ)」:オーストラリアでは「トゥダイ」
・「advertisement(アドバタイズメント)」:イギリスでは「アドバーティスメント」
英語の音のルールを知ることも重要
聞き取り学習の中でもやっかいなのが、表記と音が一致しない「音声変化」です。会話の途中で音声変化が出てくると、全く違う単語に聞こえるため注意が必要です。
音声変化の代表例を見ていきましょう。
前の単語の子音が落ちる「脱落」
ある条件に当てはまるときに、子音を抜かして発音する「脱落」は、英語では頻繁にみられる音声変化です。
代表的な脱落の条件と具体例は以下の通りです。
・同じ子音が続くとき前の単語の子音が脱落:「sent to」が「セントゥー」に
・最後の破裂音が脱落:「What’s up?」が「ワツ アッ」に
・子音と子音の間の「t」「k」「d」が脱落:「investment」が「インヴェスメント」に
・「nt」の連続で「t」が脱落:「plenty」が「プレニー」に
音と音がつながる「連結」
「連結」は二つの単語の、子音と母音をつなげて発音する変化を指します。
連結では二つの単語が一つの単語に聞こえるため、初めて聞くと意味を誤解したり、知らない単語として認識したりすることがあります。
「in a car」が「イナカー」になるので、日本人が聞くと「田舎」と勘違いすることもないとは言い切れません。「tell us」(テラス)、「get up」(ゲラップ)なども、連結の典型的な例です。
別の音として発音する「同化」
「同化」は単語同士が作用しあい、表記とは全く違う別の音に聞こえる変化を指します。「What’s your name?」が「ワッチョネー?」になるなど、音そのものが変わってしまうため、習得には慣れが必要です。
アメリカ英語に特有の音声変化なので、相手がアメリカ人の場合は、同化を知らないと聞き取りが難しくなります。同化は前の単語が「s」「t」「d」で終わり、次の単語が「y」で始まるときによく起こります。
「y」で始まる、よく使われる単語と言えば「you」です。「would you」を「ウッジュー」、「could you」を「クッジュー」と覚えておくだけでも、ずいぶん楽になるでしょう。
英語が楽しく学べる!おすすめの習慣
英語はすぐに身に付くものではないため、学習を長続きさせるためには一工夫が必要です。英語学習が楽しくなる二つの習慣を紹介します。
洋楽を日常的に聴く
音楽が好きな人は、日常的に洋楽を聴いてみましょう。歌詞を覚え、自分でも歌ってみることはとてもよい勉強になります。
聴く曲は何でも構いませんが、できれば好きなアーティストの曲や、お気に入り映画のテーマソングなど、自分が興味を持てる曲を探すほうが、長続きするでしょう。
海外ドラマや映画を鑑賞
短めの文章が聞き取れるようになってきたら、海外のドラマや映画を吹き替えなしで鑑賞するのも効果的です。ドラマや映画には、さまざまなキャラクターが登場します。年齢や性別で言い回しや発音が微妙に違うこともあり、応用力が身に付くでしょう。
聞き取り練習におすすめのドラマや映画は、たくさんあります。中でもコメディードラマ「フレンズ」は、1話20分とちょうどよい長さで、ストーリーも身近で共感しやすいことから、英語学習の定番となっています。
キャリアウーマンの奮闘を描いた映画「プラダを着た悪魔」も、女性の英語学習には最適です。子どもと一緒に学ぶなら、ディズニーなどのアニメ映画もよいでしょう。
フレンズ(字幕版)
プラダを着た悪魔(字幕版)
英語の聞き取り力をアップさせよう
日本人が英語を聞き取れないのは「知らない音がある」「語順が違う」といったことが原因です。英語特有の発音をしっかりと練習し、文章を語順通りに理解できれば、スムーズに聞き取れるようになります。
とはいえ、家事や育児で忙しい毎日の中、聞き取り練習に時間を割くのは容易ではありません。好きな音楽やドラマなどを取り入れて、楽しく勉強を続けられるよう工夫しましょう。
構成・文/HugKum編集部