寝ない、暴れん坊、駄々っ子……「私の育て方が悪いのかな……」と気にしていませんか? いいえ、その大部分は生まれながらの「気質」によるものなんです。子どもの“気質タイプ”に合わせた育児をすれば、気持ちがグンと楽になりますよ。
日本キッズコーチング協会理事長で幼児教育者の竹内エリカ先生に、気質別育児のコツを教わりました。
子どもの行動は3歳までは7割が「気質」で決まる!
子どもは生まれながらの「気質」をもっています。小さいころは特に気質による影響が大きく、3歳までは行動の7割が気質による影響だといわれています。
落ち着きがない、おとなしい、乱暴など、どんな気質でも、親は悩んだり心配したりするものです。気質は、その特徴によって大きく5つのタイプに分けられます。わが子のタイプを知っていれば、「この子のこの行動は気質のせいなんだ」と思えるようになり、同じ行動でも愛おしく思えるようになるでしょう。
気質ごとに効果的な対応が異なります
子どもの気質タイプが違っていれば、それぞれ受け止め方も異なるので、接し方や対処法を変えたほうがいいでしょう。
たとえば、どんなに言葉で注意しても聞かないタイプの子は、「イヤなことを聞かない」という特性があります。しかし、このタイプは「触れること」への感覚が敏感なので、触ってあげるとこっちを向くことが多いです。
このように、気質を把握してそのタイプに効果的な対処法を知れば、子育てが格段に楽になるでしょう。
こんな行動からも、わが子の“気質タイプ”がわかります
赤ちゃんの頃から泣き声が大きい
気付いたらどこかへ走って行ってしまう
抱っこしても嫌がり、のけぞって泣く
こだわりが強く、「イヤイヤ」ばかり
いつも頭を悩ませていたこれらの行動は、育て方や環境のせいではなく、気質によるものかもしれません。次のページから、それぞれの気質タイプの特徴と、効果的な接し方について解説します。
わが子はどのタイプ? 気質タイプ別 接し方と対応法
気質は大きく5つのタイプに分けられます。わが子がどのタイプに属するか、まずは確認してみましょう。「特徴」の中で当てはまる項目をチェックし、最も多くチェックが入ったところがお子さんのタイプです。
エンジェルタイプ
特徴
□いつも笑顔で愛嬌があり、人見知りをしない
□いろいろと目移りし、ひとつのことに集中できない
□言われたことをすぐに忘れる
□のんびり屋でぼーっとしていることが多い
育て方のポイント
いつもニコニコ愛嬌たっぷりで周囲への順応力が高いこのタイプは、おっとりしていてのんびりな気質です。活発な動きをするタイプではありませんが、歌やダンスなど楽しいことは大好き。楽しく体を動かして運動能力を鍛えるといいでしょう。
体の感覚があまり鋭くないので、おむつはずれは遅い傾向がありますが、これも気質なのであまり気にしないこと。
「イヤイヤ!」にはこう対処を
気が散りやすくいろいろなことに興味があるタイプなので、「もっとおもしろいことがあるよ」「次は〇〇に行ってみようか」とさらに魅力を感じる提案をするといいでしょう。その際、「楽しいよ」「おもしろそう」など、感情に訴える言葉を意識して使うとより効果的です。相手を喜ばせたい気質なので、「〇〇してくれてお母さんうれしい」というメッセージを伝えるのもおすすめ。
テキストタイプ
特徴
□視界に入ったものを指さして、親の注意を引く
□教えたことをすぐに理解し、覚えるのが早い
□おしゃべり好きで、口が立って生意気
□お母さんの言うことをなんでもよく聞く
育て方のポイント
5つのタイプの中で最も知性派。言葉の習得も早く、大人の言動をよく見て真似をするのが得意です。絵本も大好きなので、たくさん読み聞かせてあげましょう。
「できないことはやらない」という完璧主義なところがあるので、「失敗しても大丈夫だよ」と日ごろから伝え、幼いうちに小さい失敗体験を積み重ねるといいでしょう。
「イヤイヤ!」にはこう対処を
理由や理屈をしっかりと伝えて説得すること。「おばけが来るから」など曖昧な説明でごまかすのではなく、「こういう理由でお母さんは困っている」「今度にしようね」と説明すると納得します。大人の主張が首尾一貫していないと納得しません。
また、「どうしてイヤなの?」「どうしたいの?」と理由を聞くのもいいでしょう。理由を聞けば親も納得できるはずです。
アクティブタイプ
特徴
□泣き声が人一倍大きい
□周りからよく「落ち着きがないね」と注意される
□高い所に登ったり、何でも触りたがって目が離せない
□叱られても聞いていないと感じることがある
育て方のポイント
天真爛漫で好奇心旺盛、やんちゃでわんぱくなのがこのタイプ。赤ちゃんのころから泣き声が大きかったのでは? 全身を使ってたくさん泣いた分、筋肉の発達がよく、身体能力が高いでしょう。
衝動性が強く「自分でやってみたい」という気持ちを抑えられないので、危ないことをやろうとしたり、お友だちのものを取ったりとトラブルも多い傾向があります。
「イヤイヤ!」にはこう対処を
「触れること」に敏感なので、抱きしめたり背中をさすったりしながら話すと、話をよく聞きます。反対に、言葉だけでは何度注意しても、聞いていないように感じることも。
「見えること」にも敏感なので、楽しそうなものが目に入ってしまうと「遊びたい」という衝動を抑えられません。抱きかかえて、目の前に何もないところ(壁の前など)に移動してから話すといいでしょう。
デリケートタイプ
特徴
□ちょっとした物音や刺激に反応し、か細い声で泣く
□静かで落ち着いた環境でなければ眠れない
□初めての場所になかなか慣れない
□お友だちにおもちゃを取られても返してと言えない
育て方のポイント
繊細で傷つきやすく、ちょっとしたことでもすぐに泣いてしまったり、人見知りも激しいのが特徴です。環境の変化に慣れるまで時間がかかるのは、じっくりと観察をしているから。その子自身が納得できるまで、急かさずに付き合いましょう。
外界からの刺激に敏感な分、感受性が豊かで幼いころから音や色を識別するなど、芸術的なセンスがあります。
「イヤイヤ!」にはこう対処を
デリケートタイプが「イヤイヤ!」と主張するのは、人がイヤなのではなく環境の変化に不安を感じていることが多いから。場所が変わったりいつもと違う雰囲気だと不安定になって反抗するので、その子の落ち着く環境を作ってあげることが大切です。
また、音が大きく聞こえる特性があるので、大きな声や低い声を嫌がります。小さい声で優しく声をかけるといいでしょう。
ネガティブタイプ
特徴
□何をしても「イヤ、イヤ!」ばかり言って手が付けられない
□不快感ばかり主張して笑顔を見せない
□こだわりが強く、気に入ったおもちゃやタオルを手放せない
□一旦泣き出すと1時間でも泣き続ける
育て方のポイント
拒否性が強く、すべてに対して「イヤ!」と一旦拒否し、どれだけ説得しても屈しません。感情のコントロールが苦手なので、暴言を吐いたり激しく自己主張をするなど、難しい気質です。
「育てにくさ」を感じることが多いタイプですが、知的能力が高くて集中力があり、努力家なので、やると決めたことはコツコツとやり続ける力をもっています。
「イヤイヤ!」にはこう対処を
一度駄々をこねだすとなかなか治まらないため、こだわりのパターンを認識しておく、不規則なことを嫌うので時間や行き先が変わるなら事前に話しておくなど、そうならないよう日ごろから工夫しましょう。
イヤイヤをいきなり抑えようとすると反発する力が働いて、さらに激しくなるので、感情を一旦受け入れてあげることが大切。
気質タイプ別 育児Q&A
Q : どの項目も同じくらいのチェック数になりました。どのタイプになりますか?
A : ひとつのタイプにはっきりと分かれず、複数にまたがる子も少なくありません。その場合はいくつかの気質を併せもっていると考えて、それぞれのタイプの特徴を参考にするといいでしょう。また、当てはまったタイプが親の感じ方と異なることもあります。決めつけず、適した接し方を探ってみましょう。
また、成長の過程では途中でタイプが変化することもあります。その時々で現れる気質に合わせて対応するといいでしょう。
Q : 親子やきょうだいでもタイプが異なると相性などはあるのでしょうか?
A : 同じタイプ同士のほうが考えていることやその理由が理解しやすいので、ストレスが少ないでしょう。異なるタイプは「自分がするはずのない行動」をするので、驚かされたり理解できなかったりと、ストレスを感じることがあるかもしれません。
同じタイプ、似たタイプのほうが相性はいいといえますが、実は別のタイプ同士接したほうがお互いに発見があり、より成長できるものです。子育てを通して親子で一緒に成長していけるといいですね。
Q : 気質だと思おうとしても、ついイライラして強く叱ってしまいます。
A : イライラするのは、「何度言っても聞いていない」「同じことを繰り返す」からかもしれません。何度言っても繰り返すということは、伝え方がその子の気質に合っていないことが考えられます。
方法を変えて伝えてみましょう。タイプごとの効果的な接し方で伝えるよう心がけてみてください。子どもの反応が、目に見えて変化してくるはずです。
Q : 手がかからない他の子を見ると、「あのタイプならよかった」と比べてしまいます。
A : 「あのタイプはいい子」「このタイプは大変そう」と感じるかもしれませんが、それぞれの気質に優劣はありません。どの気質もみな、その子自身の大切な個性なのです。「育てにくい」と感じる場合は、気質ごとの特性を理解して適した対応をとると、もって生まれた性質をプラスに伸ばすことも可能です。また、周りからはどれほど「いい子」に見えても、どんな子でも成長過程において必ず問題や壁にぶつかるものですよ。
竹内エリカ先生からのメッセージ
「問題」が大きいほど、才能も大きい
親が思っている子どもの「問題行動」は、裏返せばそれは「才能」なのです。ですので、問題行動の裏にある子どもの才能を見つける癖をつけてみてください。
困っていることが大きければ大きいほど、才能は大きく、喜びも大きいでしょう。
「ゲーム感覚」で攻略してみましょう
気質を「攻略する」という意気込みで取り組んでみてください。そのためにはまず、子どもをよく観察することです。すぐに対応しようとするのではなく、この子はどういう傾向があるのかをよく見ること。パターンがわかってくると接しやすくなります。
パターンを知り、気質に合った接し方をゲーム感覚で攻略する。ピタッとはまると、とても気持ちいいものですよ。ぜひ今日から、試してみてくださいね。
イラスト/今井久恵 デザイン/平野 晶 取材・文/洪 愛舜 構成/童夢 出典/ベビーブック2018年11月号