Q. 子供にテレビや動画をだらだら見せないためには?
DVDなどの動画を子どもに見せると、なかなか見るのをやめません。どのぐらい見せるべきなのか、迷ってしまいます。どのくらい見せて、どのように切り上げたらよいのでしょうか。すくすく子育てでもおなじみの井桁容子先生にお話を伺いました。
A. 気分転換のひとつとして 長すぎない時間で
インターネット上やDVD、テレビなど、身近なメディアには子どもが喜ぶ動画があふれています。お気に入りの動画を見ている間、子どもは機嫌よく、静かにしていることが多いもの。でも、だからといって長時間見せたり、ほかのことをしている間も流しっぱなしにしたりするのは避けましょう。
「終わり」を決めてから 見ることが大切
見る、聞く、かぐ、触れる、味わう、動く……。人の成長には、さまざまな感覚を使う経験が欠かせません。子供は日々の遊びを通して感覚を育てていきますが、その際に大切なのは、体に備わった感覚をまんべんなく使い、「幅広く感じる」ことです。動画を見る際に刺激されるのは、おもに目と耳。子供が喜ぶからと無制限に見せていると、「見ること」「聞くこと」にばかり経験が偏りかねません。動画を見せるときのポイントは、大人が一緒に見ることです。大人なら、子供向けの作品をそう長くは楽しめないはず。そして、動画を見る遊びの時間は、「大人が飽きない程度」で十分なのです。
視聴時間はどのくらい?
一度に見るのは、10~15分程度が理想。長くても30分ぐらいにしておきたいですね。時間を区切るコツは、子どもに予告しておくことです。「時計の長い針がここに来るまでね」などと伝えてから見はじめ、約束の時間になったら必ず終わりにします。子どもが気に入った遊びを続けたがるのは、「今」だけを生きているから。大人のように未来を予測することができないため、今の楽しさだけに夢中になってしまうのです。「楽しい遊びを一定の時間で切り上げる」習慣を身につけることは、特定の遊びばかり続けるのを防いで経験の幅を広げるだけでなく、子供にとって先の見通しを立てる練習にもなります。
ポジティブな言葉で 次の遊びに誘って
ただし、楽しんでいる遊びを終わりにするときには、大人が上手に誘うことが大切です。最初に約束していたとはいえ、「やめなさい」「もうダメよ」などと言われたのでは、子供はがっかりしてしまいます。否定的な表現は避け、「次はお外で遊ぼうか? すべり台が待ってるよ!」など、子供に「次の楽しみ」に気づかせるような声かけを工夫してみましょう。子供の興味をひくために有効なのが、言葉で視覚を刺激することです。たとえば、「公園に行こう」より「公園に行ってお花を見よう。咲いているお花は赤かな? 黄色かな?」のほうが効果的。具体的な色や形のヒントをもらうことによって子供は好奇心をそそられ、「見てみたい」という思いを強くするのです。
スマホなどデジタル機器と子供の上手な付き合い方は?
スマートフォンやタブレット、DVDやテレビなどはブルーライトが使われているため、刺激が強く、夜、見せると寝つきが悪くなったり睡眠のリズムが乱れたりする原因になります。大人が上手に声をかけ、「別の遊び」「次の楽しいこと」に目を向けさせれば、子供は気持ちを切りかえることができます。動画を見ることはあくまで気分転換のひとつです。子供の生活全体のバランスを考えて「日中に短時間楽しむ」ことを心がけ、与えっぱなしにしないようにしましょう。
教えてくれたのは
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子 出典:『めばえ』2017年9月号