SDGsは、実践する団体や企業も増え、メディアなどでも多く取り上げられることで、見聞きする機会も多くなってきました。教育の現場でもSDGsについての学習が行われています。今回は、小学校でのSDGsの取り組みを紹介します。
授業のツールとして「SDGs」を活用
八王子市立上壱分方小学校の6年生は、SDGsを授業のツールとして取り入れています。最初に、子どもたちはSDGsの各目標について学びます。その後、さまざまな教科の学習の中でSDGsを活かしていきます。SDGsを学習に取り入れることで、どのようないい点があるのでしょうか。
▼前もって学ぶSDGsの各目標
児童の視点を定める
一つ目の良い点は、SDGsの目標が「児童の視点を定める」手助けになることです。
例えば、「参政権のあゆみ」を社会の授業で学んだ時、すでにSDGsの各目標について学んでいる子どもたちは「SDGsの目標5 ジェンダーに関係している」と結びつけることができました。「目標5 ジェンダー」に視点が定められると、さらに女性の選挙権や、宗教とジェンダー平等についてまで話が発展し、持続可能な社会について深く考察することができます。
児童の視野を広げる
二つ目は、「児童の視野を広げる」ことが期待できる点です。
例えば、第二次世界大戦についての授業では、出来事や平和への意識を学ぶだけではなく、SDGsの視点を持つことで「戦争は持続可能性をどのように阻むのか」ということを考えていくことができます。すでにSDGsについて学んでいる児童からは、貧困問題や、教育が機能しなくなること、戦争によって科学技術が発展すること、などさまざまな意見があがりました。
「震災とSDGs」の実践授業
SDGsについての学びを重ねてきたクラスによる実践授業の様子をご紹介します。
震災に関連する目標を探る
この授業では、グループに分かれて「震災とSDGs」についての話し合いが行われました。話し合いの中で、震災に関連する目標を探っていきます。
「避難先が一杯で、場所の取り合いがあったらしい」
「原発から避難してきた子がいじめにあった」
「緊急事態で余裕がなくなると、普段は言わなくても、男だから・女だからという発言も生まれてしまう」
「避難所が一杯だとプライバシーが守られない」
という流れから「目標5 ジェンダー」「目標10 不平等」に結びつけることができました。
さらに
「津波で食べ物がもっていかれちゃう」
「ボランティアがカレーを作っている、水が必要」
という流れから「目標2 飢餓」「目標6 安全な水」が結びつきました。
仮説を裏付ける情報を調べ、学びを深める
「地震や津波で発電所がダメになる」との子どもの発言には、先生が「震災の被害地域の発電所はどの辺にあるのかな?」と問いかけ、子どもは地図帳で調べ始めました。
他の子どもたちも仮説を裏付けられる情報を教科書や辞書などで調べていきます。その後の授業では、自分たちの仮説や推測をデータや根拠を調べて確かめ、さらに学びを深めていきました。
SDGsのことを学んでいる子どもたちは、問題のポイントをおさえながら、自由な発想で物事を捉えることができました。仮説を立てて考えたことを、自分たちで検証し確かめていくことで、主体的に学ぶ力が育まれていきます。
参考・画像出典:JICA地球ひろば https://www.jica.go.jp/hiroba/news/notice/2018/190319_01.html
気仙沼市の環境教育と海洋教育の取り組み
気仙沼市立面瀬小学校は、近くを面瀬川が流れ、山、里、海が身近にあり、生物多様性について深く学べる環境が整っています。2011年の震災後、復興を目指した重要なコンテンツとして海洋教育が導入され、2016年には気仙沼市の海洋教育推進事業実践校の指定を受けました。
ESD(Education for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」のこと)やSDGsは、教育活動をする上での重要課題に位置づけられていて、全学年で、環境教育、海洋教育についてのカリキュラムに取り組んでいます。
2年生はまち探検で、地域への愛着を感じる
例えば、令和元年度の取り組み事例です。2年生は、まち探検をしました。自分達と地域のつながりを実感し、地域の人の思いを知ることで地域への愛着を強め、支えてくれる人への感謝の気持ちをはぐくみました。
4年生は面瀬川を学習し、自然環境を守る取り組みを考える
4年生は、3年生からの学びを土台に、面瀬川の流域についての学習です。米づくり、水質の検査、流域探検等を通して、川や海などの水辺の環境が、自分たちの生活に大きく影響していることを学んでいきました。自然環境を守るための取り組みを考え発信しました。
5年生は自分でテーマを決め探究する
5年生は、海の環境、食、産業などからテーマを決め、グループや個人で探究します。気仙沼と海との関係や、環境や資源を守るためにできることを話し合いました。
学校をあげて学年ごとに取り組む事で、自分たちの住む地域や環境のことを深く知ることになり、まちづくりや環境問題についても考える力が身についていくでしょう。地域の人たちとの交流の機会が多く設けられていることも、地域愛を育むことにつながっていきます。
参考:ユネスコスクール
子どもたちの未来のために
世界中のさまざまな問題を17項目として見ることができるSDGsは、子どもたちにもわかりやすく、教材としてもとても優れています。SDGsのことを知っていると、身の回りから、社会問題、環境問題まで、理解しやすくなりますね。持続可能な社会のために、子どもたちがSDGsのことを学び、正しい知識を身につけることはとても重要になるでしょう。