「火垂るの墓」とは
スタジオジブリの映画「火垂るの墓」は1988年に公開されました。誕生から30年以上経っても今もなお、世代を超えて多くの方に鑑賞されている名作アニメです。
原作は、野坂昭如氏が自身の戦争体験をもとに、1967年に発表した同名の小説。これをスタジオジブリがアニメ化しました。
スタジオジブリといえば、日本を代表するアニメーション制作会社で、これまでに発表してきた作品には「となりのトトロ」「崖の上のポニョ」などがあり、明るいイメージがあるかもしれません。
そんななかで「火垂るの墓」は、太平洋戦争を背景にした、強いメッセージ性のある作品として、格別の存在感を持っています。また「火垂るの墓」は実写化もされています。
全体のあらすじ
主人公は、清太(14歳)と、妹の節子(4歳)。神戸大空襲で自宅が焼失し、母親を失くした兄妹は、親類の家に身を寄せていました。しかし食糧不足が進み、厄介者扱いされるようになった2人は、山の穴で2人だけで暮らし始めます。ですが食べ物は底をつき、節子は徐々にやせ細ってしまいます。
幼い2人の兄妹には厳しい時代を生き抜く術はほとんどなく、清太は盗みに入ったり、畑を荒らしたりして、食べ物をなんとか手に入れようとしますが、節子はついに栄養失調で息を引き取ります。
1人ぼっちになった清太は三ノ宮駅で寝起きするようになりますが、最後には力尽きてしまうのです。
「火垂るの墓」の主な登場人物
「火垂るの墓」の物語に欠かせない、主な登場人物を紹介します。
清太
主人公の清太(せいた)は、14歳。神戸市立中の3年生。海軍軍人の父親のもと育てられたため、実直で、妹思いのやさしい性格。声優は辰巳努。
節子
清太の妹は、4歳の節子。ドロップ(飴)が好きで、ドロップの缶を持ち歩いている。まだ母親に甘えたい時期なのに、空襲で母を失くし、兄の清太をいつも頼りに慕っている。声優は白石綾乃。
清太と節子の母
清太と節子の母は、上品な女性でしたが、もともと心臓が悪く、空襲で大火傷を負います。清太が駆けつけたときにはすでに昏睡状態で、そのまま亡くなりました。声優は志乃原良子。
清太と節子の父
清太と節子の父は海軍大尉。戦争に行っていたため、物語には写真でしか登場しません。戦争が終わった後も、その生死は不明です。清太にとっては、父親が不在のなか、体の弱い母と幼い妹を、自分がしっかり守るという思いがあったのかもしれません。
親戚の叔母
母親をなくした清太と節子を引きとってくれたのが、親戚の叔母さん。最初は平穏に暮らしていましたが、食糧が不足してくると、自分と自分の娘はごはんを食べているのに、清太と節子には食べ物を与えないなど、次第に2人を邪魔者扱いするようになります。声優は山口朱美。
「火垂るの墓」の印象的なシーンやセリフ
見る人に、戦争の悲惨さを伝える「火垂るの墓」。涙なしでは見られない作品と言われています。特に印象的なシーンを紹介します。
ドロップ缶に入れられた節子の骨
物語は、清太が三ノ宮駅で力尽きるシーンから始まります。そのとき清太が手にしていたのは、ドロップ缶。節子が大好きだったドロップ缶に、亡くなった節子の遺骨を入れていたのです。
ドロップ缶に入ってしまう、小さな骨となった幼い節子と、それを最期まで大切に手にしていた清太。2人の悲しい運命を描写したシーンです。
包帯に巻かれた母親との対面
空襲で大火傷を負った母親に会いに行った清太は、全身を包帯で巻かれ、変わり果てた姿の母親と対面します。すでに昏睡状態だった母親は、そのまま息を引き取ります。
清太は、幼い妹の節子には母親の死を伝えないでおこうと心に決めますが、母親の死を目の当たりにした気持ちは、言葉にできるものではありません。
おはじきをドロップと間違える節子
栄養不足で体が弱り、意識が朦朧としている節子は、おはじきをドロップと勘違いして、口に入れようとします。それを見て、思わず清太は「節子、それドロップやない」と叫びます。食べ物がないという戦争の悲惨さを、悲しく描写しています。
節子を火葬するシーン
栄養失調で亡くなってしまった節子を、清太は一人で火葬します。母親は亡くなり、父親は戦争で行方が知れず、最後の家族だった妹の節子も亡くなってしまい、清太は14歳で一人ぼっちになってしまいます。
「火垂るの墓のポスター」
「火垂るの墓」のポスターは、清太と節子が蛍の光を眺めて笑顔でいる様子が描かれています。しかしよく見ると、ポスターの上部には爆撃機B29の黒い影が。蛍の光のように見えた光は、焼夷弾だったのです。
作品のタイトルの「ほたる」の漢字に「蛍」ではなく「火垂る」が使われていることは、そんな意味があるのです。
「火垂るの墓」の実写版
「火垂るの墓」はアニメのほか、ドラマや舞台などで実写化されています。
映画「火垂るの墓」
映画「火垂るの墓」は2008年に公開されました。監督は日向寺太郎。清太は吉武怜朗、節子は畠山彩奈、清太と節子の母親は松田聖子、2人を一時引き取った親戚の叔母は松坂恵子が演じました。
ドラマ「火垂るの墓」
2005年には、終戦60年スペシャルドラマとして実写ドラマとなり日本テレビ系で放送されました。
ドラマ版では、清太と節子を一時的に引き取ることになった叔母を主人公に、戦争という悲惨な状況中で必死に生き抜こうとする人々を描いています。
主人公の叔母を松嶋菜々子、清太を石田法嗣、節子を佐々木麻緒が演じました。そのほかの出演者は、井上真央、伊原剛志、沢村一樹、夏川結衣など。
舞台「火垂るの墓」
戦後50年の1995年には、舞台化もされています。清太をTOKIOの城島茂、節子を佐々木未来、みかめあんながダブルキャストで演じ、東京や大阪など各地で公演が行われました。
「火垂るの墓」を鑑賞しよう
戦争という悲惨な時代と、戦争が生んだ人々の悲しみを描いた「火垂るの墓」。戦争のことを知らない世代にも、戦争とはどんなことなのか考えるきっかけを与えてくれます。
この夏は、親子で「火垂るの墓」を鑑賞してみてはいかがでしょうか?
映画化された「火垂るの墓」のDVDです。メイキング映像も含まれています。文部科学省選定、日本PTA全国協議会特別推薦、青少年映画審議会推奨、東京都知事推奨と、数々の団体や識者からのお墨付きです。
ドラマ「火垂るの墓 終戦六十年スペシャルドラマ」DVD
松嶋菜々子主演で実写化されたスペシャルドラマのDVDです。2005年11月に放送され、高視聴率となった作品を収録しています。
パズル「火垂るの墓 ミニパズル」
150ピースで、完成サイズはポストカードと同じ。初心者や子どもでも楽しめるミニパズルです。映像作品を鑑賞したあとの記念に完成させてみましょう。
親子で鑑賞しよう
スタジオジブリの作品の中でもっとも重いテーマを扱っている「火垂るの墓」。幼い子どもにとっては、かなりショッキングに感じる内容かもしれませんが、時期を見てママ・パパと一緒に見ることには、きっと大きな意味があるはずです。
アニメも実写版もありますから、戦争や平和といった問題に関心をもつためにも、一緒に鑑賞してみてはいかがですか?
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文・構成/HugKum編集部