夏休みこそ親子で語りあいたい「戦争と家族」。身近な戦争体験が描かれた絵本『字のないはがき』が異例のロングヒット

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もし今、戦争が始まったら…考えたことありますか?

さあ、今日はまじめな話です。いま、世の中はなんだか不穏な動きが続いていますね。米中のデジタル覇権争いで、第3次世界大戦はもう目の前・・・・なんていう話まで耳に飛び込んできます。眉唾な感じではありますが、とはいえ、もし一旦戦争となったら、平凡に暮らす家族にとって決してそれは無関係なことではありません。

戦争にちなんだ絵本で「平和」について親子で考えよう

 小学校にあがると、学校で「平和学習」が始まります。空襲を体験した人の話を聞いたり、図書館で調べたり。関西では、高学年になると広島へ修学旅行にいく学校も多いそうです。しかし、戦争体験者の多くが亡くなられたり、高齢になったりして、身近な体験をきく場がとても減っています。学校図書館の司書さんたちが夏休みに読んでもらおうと、戦争ものを探しても、最近多いのは「歴史まんが」シリーズばかりとか。なかなか身近な実体験を伝える本がないのだそうです。

 子どもたちが戦争を現実ととらえる機会が減っているわけですが、私たち大人も平和を甘受して成長してきた世代。いまの子どもだけの問題ではないかもしれませんね。

 そんなわけで終戦記念の8月、戦争にちなんだ絵本を親子で語りあったり、夏休みに読書感想文に選ぶのはいかがでしょう。

向田邦子さん原作の『字のないはがき』

 昨春発売以来、テレビや新聞にも数多く取り上げられ、今年「親子で読んでほしい絵本大賞」の大賞にも選ばれた本『字のないはがき』があります。現在7刷、発行3万5千部と絵本界では異例のヒット中というこの作品、原作は作家の故・向田邦子さんです。戦争時代の向田家に起こった本当のお話が描かれています。

疎開先で、ちいさな妹におこった試練

 あらすじはと言いますと・・・・、向田さん一家の一番下のちいさな妹が主人公です。ちいさな妹は、まだ小さすぎるからと両親とともに過ごしていましたが、戦争がはげしくなり、いよいよ疎開に行くことになります。字の書けない妹に、お父さんは、住所を書いた葉書をたくさん用意して、「元気な日は○(マル)を書いてポストに入れるように」と渡します。遠足に行くかのように嬉しそうに出発するちいさな妹。最初に届いた葉書は、画面いっぱいに大きな○が描かれていました。しかし次の日から○は急に小さくなっていき、ついに×(バツ)が届いてしまいます。そして・・・・・・・。

 

*写真は、原作・向田邦子さんの妹の向田和子さんを囲んで、今回絵本をかいた作家の角田光代さん(右)、西加奈子さん(左)。

原作・向田邦子さんの妹に聞いた、実話のつづき

 この絵本が、人々の心を惹き続ける理由、それは平凡に暮らす家族の小さな子どもにも家族と離れなくてはならない日が訪れること、そんな末の子への父親の愛あふれる思いがたっぷり伝わってくることにあります。原作の向田邦子さんの妹で、この本の主人公である向田和子さんは、このときの実際の状況を話してくれました。

「邦子が書いたエッセイで、大八車に乗ったおばあさんが登場するお話があります。これね、小さかった私もよく覚えている光景なんです。空襲で火が燃えさかり、近所の人たちが逃げ惑うなか、ふとんをのせた大八車におばあさんがちょこんと乗ったままおいてけぼりにされてしまっているの。家族が大八車ごと置いて逃げちゃったんですよ。空襲が終わって戻ってきたおばあさんの家族に、うちの父がこっぴどく怒っていたんですけど、そのとき私、小さいながらに、『あぁ、足手まといになっちゃいけないんだな』ということを思ったんです。だから自分から疎開するって、両親に言ったんですよ」

 絵本の始まりは、実はその前の空襲からスタートしていたんですね。実際の体験者から話を伺うと、さらに戦争の容赦ない光景が身に迫ってくるようです。

読んだ子どもたちの反応は?

 この絵本を読んだ小学4年生のお子さんは「本当の話?」と聞いてきたそうです。また別の方は、お子さんに読んで本の説明をしたら、大泣きで「戦争したくないよー」と言ってきたそうです。子どもの心の中に、何か残るものがあったのでしょうね。夏休みの読書感想文にもいいかもしれません。親も子も、たまに真剣に語りあって、ぜひ心に残る夏休みをお過ごしください。

 

文・構成/小学館 出版局 生活編集室

 

原作・向田邦子 文・角田光代 絵・西加奈子小学館1500円+税

(何度読んでも泣けてしまう、教科書にも載っている名エッセイが絵本に。向田作品を当代2大人気作家が絵本化。向田さん一家の「戦争と家族の絆」を描いた実話)

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