「新生児の2人に1人は母乳を与えられない」【世界母乳育児週間】(8月1日〜7日)の 目的や取り組みと私たちができること

小さな赤ちゃんが、ママ・パパにケアされている姿は幸せいっぱいで、微笑ましいですね。しかし世界を見ると、母乳を満足に飲めない新生児が数多く存在しています。
この記事は、国際的なキャンペーン「世界母乳育児週間」を取り上げます。世界の母乳育児の現状をはじめ、世界母乳育児週間の目的・歴史・由来、その取り組みを解説。また、赤ちゃんが生まれて1時間以内に母乳を飲めるようにする取り組み、わたしたち一人ひとりができることを考えてみました。

「世界母乳育児週間」ってどんな日?

世界母乳育児週間」は、赤ちゃんの母乳育児の重要性を訴えるために制定されました。英語表記は「World Breastfeeding Week」です。

まずは、世界的な母乳育児の現状、世界母乳育児週間の目的・歴史・由来、具体的な取り組みを見ていきましょう。

新生児の2人に1人は母乳を与えられない

「赤ちゃんにとって、母乳は初めてのワクチン」などと言われます。栄養豊富で抗体の濃度が高い母乳は、出生直後の赤ちゃんを病気から防ぐための、最初で最良の予防策です。つまり、授乳の開始が早ければ早いほど、赤ちゃんの命や健康が守られることになります。

しかし、2016年にユニセフ(国連児童基金)が発表した報告では、世界中の新生児の2人に1人は、生後1時間以内に母乳を与えられていません。その大きな原因は母親に対する家族、医療従事者、政府などからの支援やケアの不足です。

これは、新生児の命をリスクにさらし、病気のリスクを高め、母親による母乳育児そのものの機会を失うことにもつながります。

2023年の「世界母乳育児週間」はいつ?

世界母乳育児週間は、いつなのでしょうか?  2023年の世界母乳育児週間の日付を確認しましょう。

「世界母乳育児週間」は8月1日(火)〜8月7日(月)まで

2023年の世界母乳育児週間は、8月1日火曜日〜8月7日月曜日までです。毎年、8月1日〜7日と定められています。過去3年間と来年以降3年間の曜日は以下のとおりです。

・2019年8月1日木曜日〜8月7日水曜日
・2020年8月1日土曜日〜8月7日金曜日
・2022年8月1日月曜日〜8月7日日曜日

・2024年8月1日木曜日〜8月7日水曜日
・2025年8月1日金曜日~8月7日木曜日
・2026年8月1日土曜日~8月7日金曜日

ただし、国によっては別の日付に母乳週間を定めているところもあります。ヨーロッパやカナダ、ブラジルなどでは、10月に母乳週間を実施しているようです。

「世界母乳育児週間」とは?

現在では、世界170ヶ国以上で世界母乳育児週間が実施されています。国際的にも大きな関心を集めているキャンペーンといえます。ここでは、世界母乳育児週間が定められた目的・歴史・由来を解説します。

目的

世界母乳育児週間の目的は、母乳育児の必要性について国際的な関心を持ってもらうことです。

世界中の母乳育児中の母親を保護し、支援するために制定され、目的実現に向けてさまざまな取り組みが行われています。また、赤ちゃんの「母乳権(授乳される権利)」普及を目指し、母乳育児を推進する1週間と定められています。

歴史

1990年8月1日にユニセフとWHO(世界保健機関)は、30ヶ国の政府や複数の国際団体とともに「イノチェンティ宣言」を発表しました。この宣言は、新生児の母乳育児を推奨するもので、これを記念して、この日を「世界母乳の日」に定めました。

その翌年の1991年、ユニセフとWHOの援助によって「世界母乳育児行動連盟(WABA)」が設立され、そのWABAが1992年に8月1日〜8月7日の1週間を世界母乳育児週間として制定しました。

由来

2016年時点で、生後1時間以内に母乳を与えられない新生児の数は、世界で約7,700万人にのぼっています。その大半が、低中所得国で生まれた赤ちゃんです。

新生児の育児環境が不十分な国では、栄養豊富で、免疫性に優れた母乳育児が赤ちゃんの生存率を大きく左右します。母親が赤ちゃんを母乳で育てるためには、なによりも最適な環境を提供しなければなりません。そして、それを世界中に広報・啓発していく必要があります。

「世界母乳育児週間」の取り組み

毎年8月1日からの1週間、世界中で、さまざまな取り組みが行われている世界母乳育児週間。具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。ユニセフやWHO、政府・自治体・市民団体などの主な活動内容をご紹介します。

ユニセフとWHOによる共同メッセージの発信

世界母乳育児週間では、毎年テーマが掲げられます。そのテーマに沿って、ユニセフとWHOが共同メッセージを発信。すべての女性が熟練した母乳育児カウンセリングを利用できるように、環境の保護・改善・促進を各国政府へ呼びかけています。2023年のテーマは「働きながら母乳育児を続けられる社会へ」です。働いているからと母乳育児を断念することのないよう、できることについて考えていきましょう。

母乳育児を促進するイベントやシンポジウムの開催

世界中の政府や自治体、国際機関や市民団体などが、さまざなシンポジウムやイベントを開催しています。

日本でも世界母乳育児週間が制定された1992年から「日本母乳の会」主催による「母乳育児シンポジウム」が開催され、毎年約1000人もの参加者を集めています。

参考:日本母乳の会

「母乳育児成功のための10ヵ条」の広報・啓発活動

WHOとユニセフは、母親・新生児へのケアを提供する保健施設において、母乳育児へのサポートを拡大するためのガイドラインを発表しています。それが「母乳育児成功のための10ヵ条(Ten Steps to Successful Breastfeeding)」です。

ガイドラインには、母乳育児の指針、スタッフの能力、母親への母乳育児支援を含む出産前後のケアについての指針が欠かれています。

参考:保健施設対象の新ガイドライン「母乳育児成功のための10ヵ条」ユニセフとWHO共同で発表

赤ちゃんが生まれて1時間以内で母乳を飲めるようにする取り組み

生まれたばかりの赤ちゃんにとって、母親の母乳は、命と健康を守る最初のワクチンといわれます。新生児が出生直後1時間以内に母乳を飲めるようにするために必要な取り組みをご紹介します。

参考:メデラ「新生児への授乳: 1週目によくあること」

出生直後の赤ちゃんは必ず胸元に

生まれたばかりの赤ちゃんは、必ず胸元に抱きます。赤ちゃんがすぐにおっぱいに届く姿勢をとるためです。赤ちゃんに母乳を飲む機会を与えることが大切なポイントになります。

ブレスト・クロールさせる

赤ちゃんの体を支えて、赤ちゃんがおっぱいを見つけて、自力でくっつくことができるようにします。このときの赤ちゃんの動きを「ブレスト・クロール」と呼びます。母親は上半身を半分寝かせたような状態にするとよいでしょう。

母乳の準備をしておく

赤ちゃんが直接母乳を飲めないこともあります。その場合は手でさく乳したり、病院のさく乳器を使って、母乳の準備をしておきましょう。貴重な初乳は、後で赤ちゃんに与えることができます。

世界母乳育児週間に、わたしたちができること

8月1日〜8月7日までの世界母乳育児週間。個人でも参加・行動できることがあります。実際にわたしたちができる身近な活動をご紹介します。

SNSからメッセージを発信する

世界母乳育児週間にあわせて、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを利用し、世界中に母乳の重要性を訴えることができます。自分の体験談、母乳育児経験のある母親、育児中の友達の話などを発信してもよいでしょう。以下、主なハッシュタグです。

#WBW2023
#WABA
#worldbreastfeedingweek2023

参考:World Alliance for Breastfeeding Action

「お母さんが使えるお願いカード」をシェア

「TEN STEPSプロジェクト」は、WHOとユニセフが定めた「母乳育児成功のための10ヵ条(Ten Steps to Successful Breastfeeding)」の存在を広く伝えようというプロジェクト。妊婦検診や入院中、Ten Stepsに沿ったケアを受けたいと思ったときに、その思いを伝えるカードが「お母さんが使えるお願いカード」を準備しています。

参考:TEN STEPSプロジェクト「お母さんが使えるお願いカード」

ユニセフに募金・寄付

ユニセフの活動をいろいろな募金や寄付で援助することができます。募金は、クレジットカードや銀行振り込み、コンビニ払いなどで行えます。寄付も、さまざまな形で可能です。

参考:ユニセフ「募金・支援」

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母乳育児の必要性を知る、考える、行動する1週間

毎年8月1日~8月7日が世界母乳育児週間(WBW)です。2016年からは国連のSDGs(持続可能な開発目標)に合わせて、「WBW-SDGsキャンペーン」とも呼ばれています。

母乳は赤ちゃんにとって母親との絆を深める大切なコミュニケーションです。生まれてくる新たな命と健康を守るために、母親の母乳育児に最適な環境を整えなければなりません。世界母乳育児週間を通じて、わたしたちひとりひとりが母乳育児の重要性を知り、その促進につながることを考え、できることから行動に移していきましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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