海のプラごみ「マイクロプラスチック」問題を考えよう!【親子で学ぶSDGs】 

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SDGsとは、Sustainable Development Goals の略で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。これは、国連で採択された、2030年までに達成を目指す17の目標と具体的な行動計画のことです。最近、よく耳にする(目にする)SDGs を「キーワード」を通して学びながら、暮らしの中でできることを実践! 子どもと一緒に「生きたい未来」をクリエイションしましょう。

 

今月のキーワード : マイクロプラスチック

小さくなったプラスチックが、魚介類に蓄積。30~40年後には、魚が食べられなくなる!?

ここ数年、廃棄された漁網に絡まって溺死した海ガメや、座礁したクジラの胃袋から大量のプラスチックゴミが出てきたなどのニュースが流れてきます。さらに、海洋に漂うマイクロプラスチックが世界的な問題として頻繁に取り上げられるようになりました。水中写真家として海の環境問題に携わり、マイクロプラスチックに対する取り組みを続けている豊田直之さんにお話を伺いました。

──まず、マイクロプラスチックについて簡単に教えてください。

豊田直之さん(以下、豊田) 定義としては、5mm以下のプラスチックのことを指します。街中から川を経由し海にたどり着いたプラスチックゴミは、太陽の光などで組成が崩れもろくなり、海の波の力でバラバラになってしまいます。実際には、さらに細かいナノプラスチック(顕微鏡でないと見えないもの)が海中に漂っています。

──そのまま小さくなって消えるわけではないのですか?

豊田 プラスチックが自然分解するためには、300~400年の月日が必要だと考えられています。さらに、海中のマイクロプラスチックには、海の中にある有害物質が付着してしまうという、厄介な性質があることもわかってきました。

街から川へ、川から海へ流れたプラゴミはどうなるの?

NPO法人海の森・山の森事務局と横浜SUP倶楽部との協働で、横浜市内を流れる大岡川のゴミ拾いを行っています。写真下は1時間ほどで回収したゴミ。写真右は、神奈川県・茅ヶ崎沖の海底に散乱するプラゴミ。やがて小さな粒子となるものの、数百年以上も自然界に残ったままなのだとか…。

 

──有害なマイクロプラスチックが増え続けると、どのようなことになってしまうのでしょうか?

豊田 魚がマイクロプラスチックを食べてしまうので、食物連鎖に悪影響が出始めています。つまり、今のうちにこの状態を食い止めないと、30~40年後に、私たちは魚介類が食べられなくなってしまう可能性があるのです。

──豊田さんは、いつ頃から海の状況に危機感を抱いていたのですか?

豊田 私は40年以上、海と関わり水中写真を撮っていますが、20年ほど前「海底にゴミがあるな」と気づき、それから加速度的に増え始めました。マイクロプラスチックという言葉は、3年くらい前から耳にするようになったと思いますが、同時にゴミの量がさらに目立つようになりました。

豊田さんが撮影した、美しい海の世界。この美しさを後世にも残すために、活動中。

 

──マイクロプラスチックの問題は世界規模での取り組みが必要だと思いますが、豊田さんはどのようなアクションをしていますか?

豊田 まずは海にプラゴミを流出させないこと、そして、出てしまったゴミを回収することが必須だと考え、NPO 法人海の森・山の森事務局を設立し、川や海のゴミ拾いをしたり、出したゴミを記録してゴミを減らす「レコプラダイエット」を実践しています。

神奈川県の海岸線435.09kmのゴミ拾いを行っている「プラゴミバスターズ」。その様子は、YouTubeチャンネル「海の森山の森」で!

 

──小学校での出前授業も多いと聞きました。どのような授業内容なのでしょうか?

豊田 はい、海洋プラスチック汚染やマイクロプラスチック問題をテーマに総合学習のサポートを行っています。可能な限り、実際に子どもたちを海岸へ連れていき、マイクロプラスチックの粒子を採取します。その体験は子どもたちにとって衝撃的なことで、「僕たちの未来はどうなってしまうの?」と将来を案じ、関心を示してくれます。

ある学校では、給食の牛乳についているストローは不要だと子どもたちの意見がまとまり、ストローのいらないパッケージデザインを企業にプレゼンしました。今、実用化に向けて動いています。また、ペットボトルを集めてペットボトルから作られた布と交換し、それでエコバッグを作って、近所のスーパーマーケットに無償で配布したという実践例もあります。自分ごととしてポテンシャルを引き上げ、考え、そして行動する。これこそが「生きた教育」だと、逆に子どもたちの姿から教わっています。

子どもたちの関心を引き出すマイクロプラスチック出前授業

ここ数年、マイクロプラスチックをテーマにした出前授業の依頼が増えてきたそうです。子どもたちを海へ連れていき、マイクロプラスチックを回収。その粒子で万華鏡を作り、楽しみながら、課題解決のヒントを探求していきます。

親子で体験! マイクロプラスチックを学ぶ話題の絵本&Movie

マイクロプラスチックのことがよくわかる、絵本と映画を紹介します。親子で一緒に読んで、観て、感想を話し合いながら、自分たちができることを考えて、実践してみましょう。

マイクロプラスチック問題について、美しい絵とやさしい文体で語りかけてくれる絵本『プラスチックのうみ』。翻訳を小学生の川上拓土くんが担当したことでも話題です。

作/ミシェル・ロード 絵/ジュリア・ブラットマン 訳/川上拓土小学館1650円(税込)

この絵本では、人間が出したプラスチックごみが、どのように海を汚し、海に暮らす生き物に影響を及ぼしているのか、そしてきれいな海を取り戻すにはどうしたらいいのかを、美しいイラストと分かりやすい言葉で伝えます。

映画『マイクロプラスチックストーリー〜ぼくらが作る2050年〜』は、ニューヨークの小学生が、マイクロプラスチック問題に取り組み、様々なアクションで社会を動かしていくドキュメンタリー。子どもたちが描いたポップなアートワークも見事。大人にこそ観てほしい作品。

監督・プロデューサー/佐竹敦子&デビーリー・コーヘン

記事監修

冒険写真家、NPO法人海の森・山の森事務局理事長
豊田 直之

1959年神奈川県生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)水産部卒業。船舶用電子機器メーカー退職後、神津島で漁師、ダイビングインストラクターなどを経て、写真家中村征夫氏に師事。1991年に独立し、雑誌や書籍、広告で水中撮影を中心に活動。2012年NPO法人海の森・山の森事務局を設立。海の環境問題に取り組む。
https://www.uminomoriyamanomori.com

 

『小学一年生』2021年8月号 別冊HugKum 構成・文/神﨑典子 写真/NPO法人海の森・山の森事務局

 

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

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