「世界教師デー」とは? 目的・歴史・由来、日本や海外の取り組みをわかりやすく!

記憶に残る先生やお世話になった恩師の存在は大切なものです。そんな教育に携わる人たちを祝う記念日があることをご存じでしょうか? 国連が定める「世界教師デー」です。
この記事では、世界教師デーが制定された目的・歴史・由来をはじめ、日本や海外における取り組みを取り上げます。さらに、世界教師デーにわたしたちができることを考えていきます。

「世界教師デー」ってどんな日?

「世界教師デー」は「国際連合教育科学文化機関(以下:ユネスコ)」が制定した国際デーのひとつです。
英語表記は「World Teachers’ Day」。日本では、まだ記念日として認知度が低いため、知っている人は限られます。

そこで今回は「世界教師デー」が定められた目的・歴史・由来、日本や海外での取り組みなどを取り上げます。

2023年の「世界教師デー」はいつ?

「世界教師デー」は国際デーのひとつですが、日本ではほとんど知られていません。そもそも、何月何日なのでしょうか?  ここでは2023年の日付と曜日を確認します。

今年の「世界教師デー」は10月5日木曜日

「世界教師デー」は毎年10月5日と定められており、今年は木曜日です。過去3年間と、来年以降3年間の曜日は以下の通りとなっています。

・2020年10月5日月曜日
・2021年10月5日火曜日
・2022年10月5日水曜日

・2024年10月5日土曜日
・2025年10月5日日曜日
・2026年10月5日月曜日

「世界教師デー」とは?

毎年10月5日、国際的に祝福される「世界教師デー」。そもそも、どのような意図や経緯で、この記念日が定められたのでしょうか?

ユネスコが「世界教師デー」を制定した目的・歴史・由来を見ていきましょう。

目的

ユネスコが「世界教師デー」を制定した目的は、世界中の教師に対する支援と理解を求めるためです。また、この国際デーを通じて、教師が教育をおこなう権利と将来を担う子どもたちが教育を受ける権利、それぞれの重要性を訴えることも狙いとしています。

歴史

1960年代、ユネスコと「国際労働機関(ILO)」は、小学校や中学校教師の地位向上を目標とした活動に乗り出し、1966年10月5日には「教員の地位に関する勧告」が採択されました。

この日を記念し、1994年に定められたのが「世界教師デー」です。教育を受ける権利は基本的人権であり、皆に適切な教育を提供することが国の責任であることをアピールしています。

現在、世界100ヵ国以上が10月5日には「世界教師デー」を祝い、この日を中心にユネスコは国際会議などを開催しています。

由来

世界教師デー制定のきっかけとなった「教員の地位に関する勧告」は、教育の専門職にふさわしい教員の地位に関する諸原則や具体的条項を記した勧告書です。教員の権利や責任をはじめ、その養成や教育、雇用やキャリア、授業・学習条件などに関する国際基準の重要性をアピールしています。

また、教育分野の決定に教員が参加することを提案。さらに、教育そのものの地位と機能、教育を受ける権利や国の責任などに対しても勧告を行う内容になっています。

世界一勤務時間が長い日本の教師

日本の教師は、勤務時間が世界一長いといわれています。2018年に発表された48ヶ国・地域の中学校と15ヶ国・地域の小学校を対象とする経済協力開発機構(OECD)の「国際教員指導環境調査」によると、諸外国の場合、中学校教員の週労働時間は平均38.3時間。小学校教員の週労働時間は平均46.4時間でした。

これに対して、日本の場合、中学校教員の週労働時間は平均56時間、小学校教員の週労働時間は平均54.4時間になっています。さらに注目すべき点は、
これほどの長い勤務時間にもかかわらず、授業時間は国際平均よりも短いことです。中学校教員を例に見ると、授業に費やす時間(準備を含む)は週平均27.4時間と48ヶ国中28位、その時間は勤務時間の半分にもなっていません。

原因としては、部活動、事務作業や保護者対応といった授業以外に時間をとられていることが指摘されています。

「世界教師デー」の日本の取り組み

ユニセフが10月5日に定める「世界教師デー」は、日本ではまだほとんど浸透していませんが、知名度や取り組みを広げるために、日本国内でもいろいろな啓発・広報活動がおこなわれています。「世界教師デー」の日本における取り組みをいくつか紹介します。

「教師の日」普及委員会の設立

2016年に設立された一般社団法人「教師の日」普及委員会は、「世界教師デー」を日本にも定着させるための活動をおこなっています。10月5日を中心に、記念フォーラムや先生からの言葉を集めたパネル展、感謝セレモニーなどのイベントを展開しています。

「教師の日」制定に向けての運動

「世界教師デー」を「教師の日」として広めようという運動もおこなわれています。前述の「教師の日」普及委員会のほか、一般社団法人 全国教育問題協議会も、毎年開かれる教育研究大会において、「教師の日」を定める提言を何度もおこなっています。

「教師の日」記念イベント/感謝セレモニー

これまで「世界教師の日」である10月5日には、日本での「教師の日」の普及活動として、記念フォーラムや「先生のコトバ展」、感謝の手紙と花束を渡すサプライズセレモニーなどが行われていました。
2021年は「Teachers at the heart of education recovery(教師を中心とした教育の復興)」をテーマに、教師をサポートすることに焦点を当てました。また5日間にわたるグローバル及び地域イベントでは、パンデミックが教職にどのような影響があったのかや、効果的で期待できる政策対応を紹介し、教師が最大限に能力を発揮するために必要な道筋を示しました。

「世界教師デー」の海外の取り組み

海外に目を向けると、実に100ヶ国以上で「世界教師デー」を祝うイベントがおこなわれています。教師に感謝を伝える記念日として広く認識され、国民の祝日に制定している国も珍しくありません。

「世界教師デー国際会議」の開催

ユネスコは、10月5日の「世界教師デー」に合わせ「世界教師デー国際会議」を開催。年ごとにテーマを設け、教育に関する教師の権利や子どもの権利をはじめとした数多くの問題・課題などを解決するために、提案や議論を重ねています。

「エデュケーション・インターナショナル」の啓蒙活動

1993年に世界各国の教職員組合で組織された「エデュケーション・インターナショナル」は、「世界教師デー」の重要性を国際社会に訴える啓蒙活動を展開しています。その一例として、教師と生徒が持つ教育の権利を求めるため、世界中の政府や国際機関に働きかけたり、教育に関するさまざまな調査や企画などを実施しています。

世界中で定められている「教師の日」

ユニセフが定める10月5日の「世界教師デー」とは別に、独自に「教師の日」を定めている国が数多くあります。たとえば、中国は9月10日、台湾は9月28日、オーストラリアは10月の最終金曜日、スペインは1月29日、ハンガリーは6月の第1日曜日など、制定の背景は国によって異なるため、日付もさまざまになっています。

「世界教師デー」に、わたしたちができること

「世界教師デー」にあたって、わたしたちにできることがあるのでしょうか?  ここからは、身近な活動から「世界教師デー」の認知度、取り組みを広げていく方法を紹介します。

SNSで「世界教師デー」を拡散

10月5日に、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを使って、「世界教師デー」に自分の考えや思い出などを発信できます。先生に対する感謝の言葉や記憶に残る先生の思い出話などを書いてみることがおすすめです。

「教師の日」イベントに参加

「世界教師デー」に合わせたいろいろなイベント参加することもできます。「教師の日」普及委員会は、記念フォーラムを開催。オンライン開催は、日本中どこからでも気軽に参加できます。心に残る先生の言葉をパネルで紹介する「先生のコトバ展」に足を運んでみることもおすすめです。

子どもが教育を受ける権利を守る

「世界教師デー」は、世界中で祝福されている記念日です。教師の存在価値や大切さが国際的に認められているといえます。

ですが、教師の労働時間が世界一長いとされる日本では、この国際デーはほとんど認知されていません。授業以外にも、時間を部活動や生活指導などに費やしてくれる日本の教師こそ、この日に感謝と敬意を持って称えられるべき存在といえるでしょう。
わたしたちひとりひとりが10月5日の「世界教師デー」を祝し、「先生ありがとう」の気持ちを表すことは、子どもが教育を受ける権利を守ることにつながります。

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文・構成/HugKum編集部

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