「赤ちゃんってどうやってできるの?」と聞かれたら性教育の始めどき【医師夫婦ユニットが教える幼児期からの性教育】

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人気連載「アクロストン式おうち性教育Q&A」でおなじみの医師夫婦ユニット「アクロストン」が、性教育を子どもと一緒に楽しく学べるシール絵本『おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社)を上梓。発刊を記念して、2~6歳の親子を対象にした「アクロストンのオンラインワークショップ」が開催されました。絵本の楽しみ方をはじめ、低年齢からの家での性教育の始め方や質疑応答など、盛りだくさんのワークショップの様子をレポートします。

オンラインセミナーは、アクロストンのお二人の読み聞かせからスタート

0歳からの親のかかわり方が、スムーズな性教育につながります

セミナーは、アクロストンの二人による『おうちせいきょういくえほん』の読み聞かせからスタート。ポップな絵や図のうえに、シールをペタペタ貼りながら、赤ちゃんが生まれる過程をやさしい言葉で語りかけます。「せいし」「らんし」といった言葉も出てきますが、科学的に説明されているせいか恥ずかしさは全くありません。

性教育とは、自分の体や自分の生き方を幸せにしていくための「科学的な知識」

そもそも性教育とはどういうものでしょうか。読み聞かせを終えた二人は、こう語ります。

「性教育というのは、生理や妊娠について話すことと、ずっととらえられてきましたが、実はもっと大きな話。自分の体や自分の生き方をより幸せなものにしていくために、科学的な知識を身につけることが性教育です。自分の体は自分だけの大切なものであって、自分の体のことは自分で決める権利があることを柱にしています」

性教育をスムーズに始めるために 【0歳~5歳】年齢別 親のかかわり方

【0歳】体に触れるときは声かけする習慣を

「0歳から1歳は、おむつがえをしたり、おふろに入れたり、一日に何度も赤ちゃんの体に触れる機会があります。そのときにぜひしてほしいのが、体に触るときに声をかけるということ。赤ちゃん自身、最初はわからなくても、いつも体を触られるときに声をかけられていると、それが当たり前になり、声をかけないで触ってくると、何かおかしいぞ、と感じます。ですから『おしりをふこうね』『おちんちん、きれいになってよかったね』と、いろいろと声をかけてあげましょう。大人が声をかけるうちに、性器にまつわる言葉を子どもの前で言うことも抵抗がなくなってきます。また上のお子さんがいる場合も、よい性教育になりますので、0歳のときから声がけは大事にしてください」

 

【2~3歳】大人の言葉を繰り返す時期の2~3歳 オウム返しを利用して体のことを一緒に学ぶ

「この時期はイヤイヤ期で大変ですよね。ただこのイヤというのは、大きくなってからイヤなことはイヤと言っていい、自分のイヤには力があるんだと思う、大事な練習です。もちろんすべてがイヤでやらないというのは、生活が成り立たないので、子どものイヤに対しては『そっか、イヤなんだね』と一回、受け止めて、そのうえでちょっとこうしてほしいと伝えます。また、この時期は大人の言う言葉を繰り返す時期。ですから、この言葉のオウム返しをうまく利用しながら、『体をきれいにしよう』『きれいにすると気持ちいいね』と体のことを一緒に話せるようになるのが理想です

 

【4~5歳】子どもに許可を得る「同意」を大切に

だんだんと会話が成立してくるのが4、5歳。この時期は、どんなことを心がけておけばよいのでしょうか。

「この時期は同意を大切にしてください。子ども同士で物の貸し借りをするときも『貸して』『いいよ』ということを教えますが、体に関することも同じです。『おててつないでいい?』『ギュウしていい?』……、たとえ親子でも、それをしていいかどうか子どもに許可をとる、同意をとることを忘れないでください。

イヤイヤ期を脱してもイヤは多いですが、引き続きこのイヤは大切にしてほしいですね。

また子どもだけでなく、大人自身のイヤも大切にしてください。大人が我慢してイヤイヤやっていると、子どもに伝わります。そうすると『大人になったら、いろいろなことを我慢してやらなきゃいけない』『大人のイヤは大切にされなくていい』というメッセージを子どもに送ることになってしまうので、すべてのイヤは難しくても、自分がイヤと思っていることを自分自身で認めてあげること。そして子どもに対しても、私はこれがイヤだと伝えることは、この時期から始めてOKです」

テレビアニメに潜むメッセージにも注意を

さらに、この頃から子どもは、テレビ番組を見るようになりますが、その意味も理解しているそう。

「全てではありませんが、日本のアニメには『女の子は弱いから守ってあげる』『男の子だから強くなきゃいけない』というメッセージが残っているものがあります。ですから、そういった番組を見るときは、親子で一緒に見ながら『お母さんはそう思わないけどね』『男の子だって泣いてもいいよね』といった言葉をお子さんにかけてあげるといいですね」

子どもに「赤ちゃんってどうやってできるの?」と聞かれたら、性教育の始めどき

今回の絵本のテーマである「赤ちゃんってどうやってできるの?」という質問が出てくるのも4~5歳だそう。

「答え方としては性教育に関する絵本を一緒に読むのがおすすめですが、一度に全部を伝える必要はありません。この絵本であれば『赤ちゃんのもとは女の人と男の人の両方に入っていて、それがくっつくと赤ちゃんになるんだよ』というぐらいでOK。

『なんで体の中に赤ちゃんのもとがあるの?』とくわしく知りたがったら、『女の人の体の中にある赤ちゃんのもとは卵子っていうんだよ。男の人の中に入っているのは精子っていって、おちんちんの先から出てくるよ』というふうに話すとわかりやすいでしょうね。最終的に子どもがもっと知りたがり、大人ももっと伝えておきたいというタイミングなら、卵子と精子はどうやって出合うのかなって、一緒に考えていくと面白いですね。

一緒に考えつつ、図をみながら正しい知識を伝えるというのがいいですね。よく保護者の方から『こうのとりが……とか適当なことを言って、もう手遅れですかね』と聞かれますが、全く問題ありません。『ちょっと説明がわからなくて、間違えちゃったよ。本当はね……』と、ぜひ気づいた時点で訂正して、正しいことを伝えてください」

幼児期の性教育は思春期を迎えるための前準備

なぜ子どもが小さい頃から性の話をしておくとよいのでしょうか。

「いちばんは思春期以降に困ったときのための関係づくりです。小さい頃から性の話をしておけば、成長してもお互いに照れもなく、当たり前のこととして話せます。また思春期は一時的に自己肯定感が下がってしまう時期。その前に自分は自分のままでいいんだと思える土台づくりをしておいてほしいですね。

具体的なポイントとしては、親自身の小さい頃や周りの友だちと比較しないこと。褒められるにせよ、けなされるにせよ、比較されることは、自分は常に比較される存在だと認識し、思春期になると、自ら人と比較してしまうようになります。また外見についてコメントするのもNGです。見た目には一定の正解があって、それが刷り込まれてしまうと、そこに固執したり、逆にコンプレックスになったりすることがあるので、褒めるのもけなすのもやめておいたほうがよいでしょう。これは本人や友だちだけでなく芸能人に対してもそう。テレビに出ている芸能人を見て、つい『この人やせたね』『美人だね』といってしまいますが、これもやめたほうがよいでしょう。

じゃあ、いったいどこを褒めたらいいの? と思うでしょうが、褒めるなら、外見ではなく、本人の選んだもの、たとえば髪型や洋服など、自分がこうしたいと思ってしたことは『よく似合っているね』『いいのを買ったね』と、ぜひ積極的に褒めてあげましょう。自分の選んだものが認められたと感じて、自分に対する信頼感も上がっていきますから」

 

もし子どもがトラブルにあってしまったら、親はどうしたらよいのでしょうか。

「トラブルの大小によりますが、親は動揺から『なんでそんなことになったの』と子どもを責めるように言ってしまうかもしれませんが、一言目は『教えてくれてありがとう』が絶対です。そのうえで、くわしく聞く必要がある場合は『もう少しくわしく教えて』『どんなことがあってそうなったの』と落ち着いて聞くと、子どもは具体的に話してくれますので、言葉の選び方も重要です。

もし幼稚園や保育園に通うお子さんで『スカートめくりをされた』など、小さいことと思われるようなことでも、子どもに『園にちょっと言うね』と一言伝えたうえで、ぜひ園に伝えください。そうすると園の意識も変わって、園から子どもたちにそういう話をしてくれる可能性があります。

また、その子にとっても、自分の性の問題に関して、親が真剣に受け止めて対処してくれたことが伝わって、今後何か起こったときにも話してくれるようになります。そこで『大したことないよ』と言ってしまうとその後、話しにくくなってしまうので、小さなことでも園に伝える姿勢が大事です。

トラブルが大きい場合は、警察に伝えることも頭に留めておいてください。園や学校など内々で終わらせてしまって、何かおかしいなということもけっこうあります。そういう場合は、警察に相談して、地域で考えていくことも大切になってきます」

「教えてあげる」でも「教えなきゃ」でもなく、親も一緒に学ぶ姿勢が正解

性教育は子どもに「教えてあげる」「教えなきゃ」と焦って頑張るよりは、肩の力を抜いて、一緒に学んでいくのが正解、とアクロストンの二人。

 

このあとは「赤ちゃんが生まれる方法を聞かれたらどうやって答えればいいの?」「父親に性教育に取り組ませるにはどういう働きかけが必要?」など、子育て中の親なら誰もが抱える悩みにこたえる質疑応答タイムを経て、約1時間のセミナーが終了。

参加した方からは「モヤモヤと悩んでいたことがスッキリした」「科学的に教えればいいんだと気が楽になった」といった声が聞かれました。

性教育の仕方について悩んでいる人は、まずはこの絵本を手に取ってみてはどうでしょう。

 

絵本の巻末には本文で使うシールを用意。楽しく遊びながら学べます。

『おうちせいきょういくえほん』/主婦の友社

伝えづらい性のことを、シールをぺたぺた貼りながら学べる「おうちせいきょういくえほん」が誕生! 性教育を広める活動を行う医師ユニット・アクロストンが監修し、『Sassy』の絵本などを手がけているLa ZOOが絵・作を担当。シールを貼りながら絵本を読みすすめるうちに、赤ちゃんができる仕組みがわかる仕掛けになっています。

教えてくれたのは

アクロストン

妻のみさとは産業医、夫のたかおは病理医をしながら、2018年に「アクロストン」としての活動をスタート。公立の小学校の授業や企業主催のイベントなど、日本各地で性にまつわるワークショップを行う。『3~9歳ではじめるアクロストン式「赤ちゃんってどうやってできるの?」いま、子どもに伝えたい性のQ&A』(主婦の友社)、『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになっているなんて!』(主婦の友社)が発売中。公式HP

いま、子どもに伝えたい性のQ&A』主婦の友社/刊

思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』主婦の友社/刊

構成/池田純子

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