「アレルギーの子が増えている」なんて噂をよく聞くけれど……。うちの子はどうかな? どんな治療をすればいいのかな? ママ・パパの不安や疑問はいろいろ。まずは、「アレルギー」について、基本的なことを正しく知っておきましょう。
小児科医で、アレルギー専門医でもある澁谷紀子先生に教えていただきました。
目次
Q1 「アレルギー反応」って、なんですか?
A「異物」を排除しようとする「免疫」か過敏に反応することです
人の体には、体内に入ってきたウイルスなどの「異物」を排除しようとする「免疫」という仕組みが備わっています。でも免疫が過敏だと、本来は無害なものを「異物」とみなしてしまうことがあります。こうした体の働きが原因で不都合な症状が現れることを「アレルギー反応」と言います。
Q2 「アレルゲン」って、なんですか?
A アレルギー反応を引き起こす原因となるもの
アレルギー反応を引き起こす原因を「アレルゲン」と言います。食べることで体内に入る食品のほか、花粉やハウスダスト、ペットの毛やカビなど、触れたり吸い込んだりすることで体内に入るものもあります。
Q3 アレルギー反応によって現れる症状って?
A 症状の現れ方や強さはさまざまです。
おもな症状には下の表のようなものがあります。「全身性症状」は、ごくまれに見られるものです。
症状別アレルギーの分類表
皮膚症状
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じんましん、かゆみ、湿疹、肌の赤み など
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呼吸器症状
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鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどがゼイゼイする、呼吸がしにくい など
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粘膜症状
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目の充血、まぶたが腫れぼったくなる、唇の腫れ など
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消化器症状
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口の中がイガイガする、腹痛、おう吐、下痢、胸のむかつき など
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神経症状
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頭痛 など
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全身性症状
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複数の症状が全身に現れる(アナフィラキシー)
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Q4 「アナフィラキシーショック」って、なに?
A 命にかかわることもあります!
アレルギー反応による複数の症状が急激に現れ、血圧の低下や意識の乱れが見られる状態を「アナフィラキシーショック」と言います。命にかかわることもあるので、下のような症状が見られる場合は、すぐに救急車を呼びます。アナフィラキシーショックは、食物のほか、薬や虫刺され(スズメバチなど)によって起こることもあります。
こんな症状が見られるときは救急車を!
・がまんできないほどの腹痛
・くり返すおう吐
・のどや胸がしめつけられるように苦しい
・声がかすれる
・犬が吠えるようなせき
・強いせき込みが続く
・息がしにくい
・ゼイゼイする呼吸
・ぐったりしている
・脈が弱い、または不規則
・尿や便をもらす
・意識がもうろうとしている
・唇や爪が白っぽい
Q5 アレルギーと関係の深い病気って?
A 食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症など
上記のようなものがあります。ただし、アレルギー「だけ」が原因であるわけでない、と考えられているものもあります。
Q6 同じものに対して、アレルギー反応を起こす子と起こさない子がいるのはなぜ?
A 主にその子の体質に関わっています。
特定のものにアレルギー反応を起こすかどうかは、おもに体質にかかわっています。アレルギー反応を起こしやすい体質のことを「アレルギー体質」と言います。
Q7 アレルギー体質かどうか、調べることはできる?
A 血液検査や皮膚テストができます。
食物アレルギーや重度のアトピー性皮膚炎の場合、血液検査や皮膚テストを行うことがあります。ただし、これらの検査は、あくまで医師が治療方針を決める際の参考にするため。とくに症状がない場合、アレルギー体質かどうかを知るために検査をする必要はありません。
Q8 アレルギー体質って、遺伝する?
A 一概にはジャッジできない
両親がともにアレルギー体質である場合、子どもがアレルギーによる病気を発症するリスクは高くなります。例えば、気管支喘息では、両親が喘息だと子どもが喘息になる確率は3~5倍になる、と言われています。ただし、病気の発症には環境なども深くかかわっています。アレルギー体質を受けついだからといって、必ずアレルギーによる病気を発症するとは限りません。
Q9 食物アレルギーがある子は、アトピーやぜんそくにもなりやすい?
A そういった症例もある
アレルギーによる病気のうち、もっとも早い時期に起こりやすいのが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーです。その後、気管支ぜんそく、4~5歳頃からは花粉症などを発症する子も増えてきます。アレルギー体質の場合、成長とともにこういった病気を次々に発症してしまうこともあります。ただし、「アレルギー体質=すべての病気を発症する」というわけではないので、現時点で症状が見られない病気については、あまり心配しすぎないほうがよいでしょう。
Q10 アレルギー体質そのものを改善する方法はある?
まず、専門医に相談。安全で簡便な治療法が保険で認められるようになってきています。
A 今まで、アレルギーの治療としては、環境からアレルゲンを除去し、症状を抑える薬を使用する対症療法が一般的でした。体質改善として、花粉症やアレルギー性鼻炎、気管⽀ぜんそくには、定期的にアレルゲンを注射して体のアレルギー反応を弱める「減感作療法」が古くから行われてきましたが、治療に時間がかかること、注射の痛みが伴うこと、強いアレルギー反応の危険があることなどから、広く普及するには至りませんでした。
減感作療法や経口免疫療法という治療法も
最近になって、花粉やダニのアレルゲンエキス製剤を毎日口に入れる、より簡便で安全な治療法(舌下免疫療法)が保険で認められるようになり、減感作療法が見直されています。食物アレルギーについても、アレルゲンとなる⾷品を少量ずつ⾷べさせてアレルギー反応を起こりにくくする経口免疫療法が行われるようになりました。いずれの方法も、必ず専門の医師の指示に従って行います。
記事監修
総合母子保健センター 愛育クリニック 小児科・母子保健科部長
小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。