英語力を底上げするシャドーイング
シャドーイングという言葉には、どのような意味があるのでしょうか。シャドーイングの概要と、注目される理由を見ていきましょう。
シャドーイングとは?
「シャドーイング(shadowing)」とは、英文を耳で聞きながら、少し遅れて発声するトレーニング方法です。
「シャドー(shadow)」には、「影」「尾行する」の意味があります。シャドーイングとは、聞こえてくる英文を、少し遅れて影のように追いかける様子を表しています。
耳と口をほぼ同時に動かすシャドーイングは、英文を最後まで聞き終えてから繰り返す「リピート」練習と比べて、難易度は高めです。その代わり学習効果も高く、英語力の底上げが期待できます。
子どもの学習方法として注目
2020年に全面実施された新しい学習指導要領では、小学校5・6年生で英語が必修科目に加えられました。入試に英語を採用する私立中学校も増えており、保護者としても子どもの英語教育に無関心ではいられない時代になっています。
言語をマスターする最良の方法は、現地で暮らし、ネイティブの発音を浴びることです。とはいえ、この方法を実践できる人は限られます。
その点、ネイティブの発音を追いかけるシャドーイングを使えば、実際に現地に行けなくても、聞く・話す力を効果的に身に付けられます。
そのため、シャドーイングは子どもの英語学習方法としても注目されており、子ども向けのシャドーイング教材も出始めています。
シャドーイングをするメリット
シャドーイングには、一般的な学習方法にはないさまざまなメリットがあります。主なメリットを具体的に見ていきましょう。
リスニング力と発音の向上
シャドーイングに取り組むと、英語を正確に聞き取る力や、ネイティブに近い発音が身に付きます。
文字の通りに発音すれば意味が通じる日本語と違い、英語には「リエゾン(リンキング)」と呼ばれる音声変化や、独特のイントネーションがあります。
例えば、「I’ll take it.」を日本人はそのまま「アイルテイクイット」と読んでしまいますが、本来の発音は「アイルテイキット」です。その事実を知らなければ、英語の読み書きはできても会話は難しいでしょう。
シャドーイングでは、聞こえた音を忠実に再現する作業を繰り返します。正しいと思い込んでいた発音やイントネーションの間違いに気付きやすく、より正確な聞き取りと発音ができるようになります。
語彙力や文法力が付く
シャドーイングは、語彙力や文法力の強化にも役立つ学習方法です。学生時代に覚えたたくさんの単語や文法を会話に生かせないのは、知識が「自動化」されていないからです。
日本語で会話する時に、日本人がいちいち単語の意味や文法を確かめることはありません。意識しなくても、伝えたい言葉が自動的に出てくるでしょう。英会話も同じで、単語や文法を無意識に操れる状態が理想です。
シャドーイングでネイティブの言葉を真似れば、知識として頭に入っているだけだった単語や文法の使いどころが分かり、自動的に出てくるようになります。語彙や言い回しのバリエーションが増え、表現力向上にもつながります。
親子でシャドーイングに挑戦してみよう!
シャドーイングに挑戦するなら、子どもと一緒に始めるのもアリです。初心者向けのシャドーイングのやり方を紹介します。
シャドーイングのやり方
シャドーイングの基本的なやり方は、以下の通りです。
1.テキストを読み、知らない単語や文法を調べておく
2.テキストを音読する
3.シャドーイングする
4.シャドーイングの際に録音した自分の声を聞き、間違えた箇所をチェックする
5.再度シャドーイングする
シャドーイングの目的は会話に必要なリスニング力や発音の向上であり、難解な文章を解読する必要はありません。パッと見て内容が分かる程度の、簡単な文章で始めるほうが効率的とされています。
簡単な教材なら親子で一緒に取り組めますし、子どもの成績アップにもつながるため一石二鳥です。
効果的なシャドーイングのポイント
シャドーイングを自己流で進めると、思うような効果が得られず、時間を無駄にするおそれがあります。シャドーイングの効率を上げるために、押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
はっきりと声に出す
会話の基本は、はっきりと大きな声で話すことです。ぼそぼそと小さな声で話しても、相手には伝わりません。また、声が小さいと正しく発音できているかどうかが分かりにくく、シャドーイングの効果が薄れてしまいます。
目の前の人に話しかけている場面を想像しながら、はっきりと声に出して練習しましょう。
分からない単語は都度チェックする
シャドーイングの最中に知らない単語が出てくると、単語の意味に気を取られて先に進めなくなります。最初にテキストを読み、分からない部分は調べる習慣を付けましょう。意味を調べるだけでなく、発音もチェックしておきます。
内容を理解した上でシャドーイングを始めれば、ネイティブの発音を再現することに集中でき、学習効率が高まります。
自分に合ったレベルの教材を使う
シャドーイングは、元々同時通訳のトレーニングに使われていた学習方法です。一般的な英語学習法に比べて難易度が高く、教材のレベルを間違えやすいため注意が必要です。
一見簡単そうに思える教材でも、いざ始めるとスピードについていけず、挫折することも珍しくありません。無理に背伸びしても効果は得にくいため、自分のレベルに合う教材を選ぶようにしましょう。
シャドーイングで英語力をレベルアップ
毎日シャドーイングに取り組めば、育児や仕事に多忙な人でも着実に英語力を身に付けられます。子どもと一緒に取り組みやすいのも、シャドーイングの大きな魅力です。
子育て世代に適した学習方法・シャドーイングを実践して、英語力をレベルアップさせましょう。
構成・文/HugKum編集部