まぎらわしい度1<初級> モモンガとムササビ
モモンガとムササビは、どちらもリスの仲間です。さて、どっちがどっち?
【ヒント1】
ムササビは広葉樹、モモンガは針葉樹の森が好き。
【ヒント2】
眼が大きいのがモモンガ、眼の横に模様があるのがムササビ。
【こたえあわせ】モモンガとムササビは「ここがちがう!」
左がモモンガ、右がムササビです。
大きさ
モモンガはハンカチサイズ、ムササビは座布団サイズ。
皮膜の形
ムササビは尾と後ろ足の間にも皮膜がある。モモンガはない。
尾の形
モモンガより、ムササビの方が、尾が長く丸々している。
モモンガはこんな動物
モモンガ【ネズミ目リス科】
日本にはニホンモモンガとエゾモモンガがいます。
エゾモモンガはユーラシア北部にいるタイリクモモンガの亜種(※クイズの写真はエゾモモンガです)。
ニホンモモンガ 分布/本州~九州。日本固有種。大きさ/14~20cm
エゾモモンガ 分布/北海道 大きさ/15~16cm
ムササビはこんな動物
ムササビ【ネズミ目リス科】
分布/本州~九州。日本固有種。大きさ/27~48cm
こんなふうにちがう、モモンガとムササビ
ムササビとモモンガは、どっちもリスのなかまです。手足を広げてわきの皮をのばすと、高いところから、ジャンプ! グライダーのように遠くまで飛んでいきます。
いちばんのちがいは大きさ。ムササビはモモンガの2倍くらいあって、別名「空飛ぶざぶとん」。さらによく見ると、飛膜のつきかたもちょっとちがいます。
どちらも夜行性なので、暗い森ではわかりにくいですね。手がかりは標高です。モモンガは標高が高めの針葉樹の森に、ムササビは低めの広葉樹の森にいます。というのもモモンガは北で、ムササビは南で進化したから。その証拠にムササビの仲間の多くはアジアにいます。
ムササビは北海道にはいないので、北海道の森で見かけたら、それはエゾモモンガです。
似ているのにはワケがある。
クイズはいかがでしたか? なぜ、このように、そっくりな外見や習性を持つ動物がたくさんいるのでしょうか。そこには動物たちのサバイバル戦略があります。
動物たちにとって、自分の体こそが生き残るための道具です。どんな所に棲んで、何を食べているのかで、体の形は決まってきます。樹上ではバランスをとるのに長い尾が役に立ち、水中では流線形の体が便利です。肉食なら鋭い牙が役に立ち、草食なら茎をくいちぎる前歯を必要とします。
こうして長い時間をかけて、自然環境に適応して生き残ったものたちは、もともとが別の種であったとしても、なぜかよく似た形(キャラクター)と、習性(ビヘイビア)を持つようになるのです。
こうした現象を、動物学の世界では「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼びます。この収斂進化に着目すると、進化の不思議をわかりやすく理解することができます。
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【おまけ】まぎらわしい「モモンガとムササビ」がいる主な動物園
※太字は両方いる動物園です。
※2021年11月22日現在。動物の飼育状況により展示されていない場合もあります。
■ホンシュウモモンガ/盛岡市動物公園、埼玉こども動物公園、上野動物園、井の頭文化園、富山ファミリーパーク、 茶臼山動物園、東山動物園、神戸どうぶつ王国、高知アニマルランド、安佐動物公園
■エゾモモンガ/ 円山動物園、旭山動物園、おびひろ動物園、釧路市動物園
■ムササビ/ 埼玉こども動物公園、多摩動物公園、富山ファミリーパーク、小諸動物園、茶臼山動物園、飯田動物園、東山動物園、京都動物園、とべ動物園、安佐動物公園、徳山動物園、熊本市動植物園
構成/HugKum編集部
協力/『世界一まぎらわしい動物図鑑』編集部