不登校でも出席扱いになり、 通信簿もつく!在宅学習成功のきっかけになる新しい仕組みとは?

小中学校で不登校になっても、義務教育だから進級はできる、卒業もできる。けれど、実際に勉強していないと知識がつきません。また、欠席の扱いになり、成績表の記入もないのが一般的です。となると、ますます学校を居場所と感じにくくなるのではないか……? けれど、自宅で適切に学べば出席扱いになり、成績がつく可能性もあるとか! 朗報ですよね! 在宅学習をサポートし、学校で評価してもらう働きかけをするクラスジャパン小中学園代表の中島武さんに、その内容を伺ってみました。

不登校の子を学校に戻すことだけが支援ではない

――家で学んだことが、学校の出席扱いになる、というのはどういうことなのですか?

 文部科学省によって、平成17年に「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」という通知が出され、自宅での学習活動が、出席扱いになる可能性が提示されました。その後、令和元年に、都道府県や指定都市の教育委員会教育長等に向けて、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」が出されました。この通知の中の1の内容は以下のとおりです。

1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

 

そして、(2)学校教育の意義・役割には、以下のように書かれています。

(前略)

児童生徒の才能や能力に応じて,それぞれの可能性を伸ばせるよう,本人の希望を尊重した上で,場合によっては,教育支援センターや不登校特例校,ICTを活用した学習支援,フリースクール,中学校夜間学級(以下,「夜間中学」という。)での受入れなど,様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと。
その際,フリースクールなどの民間施設やNPO等と積極的に連携し,相互に協力・補完することの意義は大きいこと。

学校にいずれ行くための準備として在宅学習をするなら出席扱い

――つまり、文部科学省は、不登校の子を「学校に登校させる」ことだけを目標にせず、才能や能力に応じて、本人の希望を尊重しながら、本人に合ったやり方で学習することを、教育委員会や学校が支援すべき、と通知しているということですね。こうして勉強をしたことが、出席扱いになるのでしょうか?

 

文部科学省の「別記」に「義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」という文章があります。その中の「2 出席扱い等の要件」には、

 

「不登校児童生徒が学校外の施設において相談・指導を受けるとき,下記の要件を満たすとともに,当該施設における相談・指導が不登校児童生徒の社会的な自立を目指すものであり,かつ,不登校児童生徒が現在において登校を希望しているか否かにかかわらず,不登校児童生徒が自ら登校を希望した際に,円滑な学校復帰が可能となるよう個別指導等の適切な支援を実施していると評価できる場合,校長は指導要録上出席扱いとすることができる。」

 

とあります。ちょっとわかりにくい文章ですが、今は登校を希望していなくても、要件を満たし、本人が行きたいと思うようになったときの準備としてその勉強をしていると評価できれば、校長が出席扱いにできる、ということですね。

民間業者が提供する教材で勉強したら成績もつく可能性が

さらに、

「出席扱いとした場合,必ずその成果を評価に反映しなければならないわけではありませんが、すべての教科・観点について観点別学習状況及び評定を記載できない場合でも,たとえば自宅における学習状況を所見欄に文章記述するなど,学習の努力を認め,次年度以降の指導に生かすという観点から適切な記載がのぞまれます。また,民間業者が提供する教材やインターネット上の学習システムを活用する場合は,当該教材の学習履歴や学習時間,確認テストの結果などに基づいて評価を行うことも考えられます。」

 

という文章もあります。民間業者の教材で義務教育を補い、学習の履歴やテストを行えば、それをもとに学校が成績の評価をすることも考えられる、と言っています。

 

生徒のがんばりを表現したら成績評価がつく可能性も

――在宅学習でも、「出席扱い」「成績評価」の道が開けるんですね!

中島さんが代表を務めるクラスジャパン小中学園は、オンライン教材を用いて、家で勉強しながらも、「出席扱い」「成績評価」を学校と話し合い、実現に向けるネットスクールなのですよね?

 

中島:はい、上記の文科省の通知に沿って、学校と連携して在宅学習のサポートを行います。教材は「デキタス」「すらら」ほかクラスジャパンが提携・用意したものがあります。これらを使うと、お子さまが学習した進捗状況なども、クラスジャパンが把握することができ、その結果をもとにレポートを作成して可視化する。そして、学校に「こんなにきちんとやっていますよ」と、生徒さんのがんばりを学校に伝え、上記の通知に照らし、出席扱いをお願いしています。

実は上記の通知は出たものの、教育委員会宛てだったので、現場の先生方は「出席扱い」「成績評価」について情報がよく伝わっておらず、逆に「そんなことができるんですか?」と言われることすらあります。そういう先生にも、客観的な資料などを交えながら、丁寧にお伝えし、出席扱いや評価の実現をサポートします。

 

現在ではだいたい、クラスジャパンがサポートした案件では、出席扱いが8割程度、成績評価が4割程度。成績評価については、中学は「定期考査を受けていないと難しい」と言われてしまうケースもあります。困難もありますが、学校の意見も聞きながら、双方が歩み寄り、評価につながる道を粘り強く探ります。

 

地道な積み重ねなのですが、家での勉強を評価していただく努力を続けることは、不登校のお子さんが「学びやすい場で学びたいことを学ぶ」ことに結びつきます。それによって勉強や生活、コミュニケーションに自信をつけたお子さんが、自然に学校に行くようになるケースも半数以上あるのです。保護者のみなさんも、ねばり強く、また寛容に学校に出席扱いや成績評価をお願いしていくといいと思います。

 

 保護者が在宅学習で教え、評価するより第三者のほうがスムーズ

――最近では、自治体によっては不登校の生徒に対して、小学校や中学校側が、学習指導要領に沿った勉強ができるオンライン教材などを渡し、それによって家で勉強した場合でも「出席扱い」する、というケースも多くなってきたと聞きます。

 学校側も、ずいぶん不登校について理解が進んできたんですよね。また、コロナ禍でオンライン授業が身近になったことも、在宅学習への理解につながってきたと思います。

 

こうした在宅学習のサポートとレポート提出は、保護者の方がやってもいいわけですが、親御さんが勉強を教えるとつい「こんなこともわからないの!?」となり、お互いにストレスを感じることも多いでしょう。また、これまでの経緯から、保護者のかたが学校に対してさまざまな思いをお持ちの場合は、学校とぶつかってしまうこともあります。むしろ我々のような第三者が、研修を受けた教師による学びとレポートを用いて、家庭と学校をつなぐほうが、スムーズに行く場合が多いと実感します。

 

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子どもの心の居場所をつくることが教育には重要

――でも、そんなふうに学校とつないでもらっても、成績評価がなされるのは4割程度なのですよね。6割は通信簿の評価欄に斜め線が引いてあったり空欄になっている……。すると、義務教育まではいいにしても、高校進学ができるのか、と心配になります。

 

成績評価がないと内申点がつかないので、心配になるかもしれませんが、今は評価がつかなくても入学できる高校が増えてきました。どの高校にも行けるわけではないですが、「どこにも行けない」などと心配する必要はありません。

 

ただ、がんばって自宅学習をして、出席扱いになり、そして成績がつくと、モチベーションが上がります。たとえば、1学期に3だった評価が4になったりすると、「勉強してよかった」「楽しい」「やればできる」という思いが、前向きな学習意欲や自己肯定感につながり、生活全体に意欲が持てるようになることが多いです。その気持ちの変化が起きることが、一番大事なのだと私は思っています。

クラスジャパンでは、授業のほかに、ネット部活や、オンラインでの海外旅行体験など、さまざまなプログラムを用意しています。これまで人と関わること、世界に目を広げることに興味がなかったお子さんが「楽しい!」と感じ、ネットを通じて全国の仲間と集うようになると、また大きく成長しますよ。

 

子どもにとって、「居場所」を作ることはとても大事です。学校に行けなくても、在宅学習をする。そして家にいても「出席扱い」になり、「成績評価」を受けることで学校とつながれる。単純に勉強ができるようになるとか、進学に有利というだけで考えないほうがいいと、私は思います。保護者のみなさんは、子どもにどう居場所を作ってあげられるか、そこからどんな体験ができるのか、という目線で、在宅学習に取り組むといいですね。

 

中島 武

複数の通信制高校運営・設立に関わる。オンライン声優スクール設立を経て、2014年より「ネットの高校・N高等学校」の設立準備段階から発起人として参画、設立メンバー。その後、小中学校との直接連携によるネットスクール「クラスジャパン小中学園」を開校し、不登校小中学生の新しい自立型の学びのカタチを推進している。

 

 

「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年1025日:文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm

*平成17年の通知は元年の通知をもって廃止

 

不登校児童生徒の中には,学校外の施設において相談・指導を受け,社会的な自「(別記1) 義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」

title (mext.go.jp)

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