【お雑煮豆知識】お雑煮がないお正月がフツウなのはどこの地方?丸餅と角餅は?

コロナ禍の影響もあり、近年では「おせちは通販で」という動きが加速してきましたが、いまだ各家庭の味を味わえる正月料理といえば、お雑煮。餅の形に調理法、だしに具材は地域によってさまざまで、なんと100種類以上もあると言われています。歴史や東西の違いなど、お雑煮を深掘りしていきます!

お雑煮を正月に食べるようになったのはいつから?

お雑煮を食べるようになったのは室町時代からとされています。初めは酒宴に出る酒の肴として出されていたそうです。そして新年に雑煮を食べるようになったのは室町時代末期。歳神様に供えたお餅をおろし、ほかの供物と煮たのが始まりでした。

 キリシタン宣教師の日本語修得用に江戸草創期に刊行された辞書『日葡辞書』(1603)には「ザゥニ」が立項されており、「正月に出される、餅と野菜都で作った食物の一種」と書かれています。すでに正月には雑煮を食べるという風習が庶民にも広まっていたんですね。

 また、日本で最初の料理書とされる寛永20年(1643)刊の『料理物語』には

 中みそ又すましにても仕立て候 もち とうふ いも 大こん いりこ くしあわび(乾アワビ) ひらがつほ くきたちなど入よし

 とあり、この時点で味噌仕立てとすまし仕立ての両方で作られていることがわかります。

江戸時代からだった、東は角餅 西は丸餅

 そして、東が角、西が丸というお餅の形の違いが出てくるのも江戸時代。

江戸後期の風俗誌『守貞漫稿』によると、大坂では丸餅で、小芋や焼豆腐、大根、乾燥鮑を加えた味噌仕立て、江戸では焼いた切餅(角餅)に小松菜を加えた鰹節のダシで醤油の煮出しを加える、と書かれています。

 角餅と丸餅の境はどこ?

では、東の角餅と西の丸餅の境目とはどこでしょう?

岐阜、石川、福井、三重、和歌山の5県の雑煮は角餅と丸餅が混在していることから、この地域を結んだ線が境界線だと考えられます。しかし例外もあり、東の山形庄内地方では江戸の北前船の寄港地だったため京都の文化が影響しており丸餅、また西の高知や鹿児島では角餅がお雑煮に用いられているのです。

すまし汁か白みそか

近畿地方は、白みそ味のお雑煮が一般的

 

しかし、調理法は「すまし」と「みそ」で東西二分というわけにはいきません。東は、ほぼ、すましですが、西では近畿は、ほぼ白みそ。中国、九州地方ではすましが主流です。

香川は白みそ仕立てに、あんこ餅入り

雑煮のお餅で異色なのは、香川の「あんもち雑煮」。いりこだしに白味噌仕立てのお雑煮ですが、丸餅には甘いあんこが入っています。讃岐地方の白砂糖は、江戸時代「讃岐三白」 の名で知られる塩、綿と並ぶ三大特産物の一つでした。当時砂糖は貴重で一般家庭ではなかなか手に入らず、年に一度、正月の特別な料理として、砂糖を雑煮に取り入れるようになったのが始まりとされています。

鳥取は小豆雑煮が主流

鳥取の中部、東部では小豆の煮汁に丸餅が入っている甘い小豆雑煮が主流。小豆の赤に邪気を払う力があるとされていて、小豆は古くからこの地方ではハレの日の食材として用いられてきたんだとか。小豆雑煮はほかにも兵庫や岡山、三重に点在。

三重県伊勢湾口に位置する神島のお雑煮は「かんの餅」と呼ばれる小豆雑煮。こちらの雑煮は塩みの勝った甘みだそうです。

「だし」も地域によってさまざま

 北海道のお雑煮のつゆは甘い

また、お雑煮に使う「だし」はバラエティ豊か。全国的に鰹と昆布が主流ですが、海が近い地域ではいりこにトビウオのあごだし、スルメや焼き海老でダシをとるところも。そして北海道のダシはとてもユニーク。そして北海道のダシはとてもユニーク。北海道限定販売のめんつゆ「キッコーマン めんみ」と、鶏がらスープがダシの代表格なんだそう。みりんを使わず砂糖を使うので、北海道は甘いお雑煮なんだとか。

兵庫県・明石市は焼きアナゴのだし

近畿のお雑煮は煮た丸餅に白味噌仕立てで埋め尽くされていますが、唯一兵庫は「すまし」と「白みそ」が共存。明石はアナゴの名産地なので、明石市や隣接する神戸市では昆布とアナゴの骨と頭でダシを取り、焼きアナゴを具材にしたすましのお雑煮を食べるご家庭も。

  全国で唯一お雑煮文化がない地域とは?

豚の腸を使った「中味汁」

「豚正月」の沖縄

さて、唯一お雑煮文化がないのは沖縄。「豚正月」と言われるほど、正月には豚肉料理をたくさん食べるんだそう。豚の腸を使った「中味汁」や骨つきあばら肉が入った「ソーキ汁」がお正月の定番だそうです。

 

コロナウイルスの蔓延がおさまっており、年末年始は故郷で過ごす方が今年は多いかも。実家の味を堪能するもよし、旅気分で違う地域のお雑煮に挑戦するもよし。元旦に美味しいお雑煮を食べて、新年を元気に迎えましょう。

 

構成/tsurumaki

 

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