Q 園の友だちのまねをして、子どもが「バカ」「キモい」などと言うようになりました。𠮟ってもやめないので、困っています。
A 𠮟るより、その言葉の意味を教えてみて
「使ってほしくない言葉を使う」ことは、成長の過程ですべての子どもが通る道です。2,3,4歳頃のお子さんに関して言えば、気になる言葉を口にする場合でも、意味を正しく理解していないことがほとんどです。響きのおもしろさや、それを言ったときの周りの反応などに興味をそそられているだけで、だれかを傷つけたり、不快感を与えたりしようとしているわけではありません。
子ども自身の「言葉を選ぶ力」を伸ばす工夫を
子どもが気になる言葉を使ったときの対応の基本は、言葉の意味やその言葉が及ぼす影響を教えることです。人を傷つけるような言葉なら「そんなことを言われたら、お友だちは悲しくなるよ」、下品な言葉なら「今は言わないほうがいいね。ごはんがおいしくなくなっちゃうよ」など、子どもにもわかるように伝えてみましょう。
大切なのは、頭ごなしに𠮟ったりむやみに禁止したりするのではなく、「なぜダメなのか」を子ども自身に感じさせることです。自分の言ったことにはどんな意味があり、その言葉が人をどんな気分にさせるのか。それを少しずつ知ることで、TPOに合わせて言葉を選ぶ力がついていくからです。
また、子どもの語彙は、身近で使われている言葉を聞くことによって増えていきます。いわゆる「汚い言葉」も、友だち、身近な大人、メディアなど、さまざまな「仕入れ先」からインプットされたものなのです。そのため、言葉づかいを注意したとき、子どもが「〇〇ちゃんも言っている」などと言うこともあるかもしれません。そういった場合に注意したいのが、「そんなことを言うなんて、〇〇ちゃんは意地悪だね」のように、「人」を否定しない、ということです。問題なのはあくまで「言葉」なのですから、「〇〇ちゃんは、テレビのまねをしたのかもしれないね。でも、この言い方はやめようね」などと対応すればよいでしょう。
子どもの「辞書」にポジティブな言葉を増やす
公共の場で人を不快にさせることを言ったり、友だちにひどいことを言ったりした場合は、その場ですぐに、親が謝罪を。子どもを注意するのは、その後です。悪気がなかった、言葉の意味を理解していなかった、などの理由があっても、まずは他人にいやな思いをさせたことに対しておわびをするのがマナーです。同時に、自分が言ったことのせいで親が謝っている姿を見ることは、子どもに「まずいことを言ってしまったんだな」と気づかせるきっかけにもなります。
言葉は文化であり、育つ過程で囲まれてきた言葉によって、それぞれの「辞書」ができ上がります。人が幸せを感じるメカニズムを研究する「幸福学」では、「人の会話はポジティブな表現だけでも成り立つ」とされているとか。子どもは、親の反応から多くのことを学びます。自分の言動を親が肯定的に受け入れるかどうかで、「言ってよいこと」「言うべきではないこと」を感じとっていくのです。子どもの辞書にポジティブな言葉を増やしていくためにも、日頃から親自身が「気持ちのよい言葉」「聞いてうれしい言葉」を選ぶことを心がけてみましょう。
記事監修
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子 構成/野口久美子 『めばえ』2019年2月号
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。