悩みが尽きない子どものほめ方・叱り方。5つのヒントを井桁容子先生に聞いた

「できるだけほめて育てたいけれど、どんな言葉をかければよいのかわからない」「毎日、叱ってばかりで疲れてしまう」など、子どものほめ方・叱り方に関する悩みはつきないもの。人気保育士の井桁容子先生にお話を伺いました。子どもと気持ちを通わせながら、親子の時間を楽しくするためのコミュニケーションのあり方について考えていきましょう。

 

うまくいかないときの接し方で成長が変わります

感情的に怒ると、考えたり工夫したりする力が育たない

ほめる・叱ることの目的は、大人の思い通りに子どもをコントロールすることではありません。大切なのは、うまくいかなかったときに、「どうすればよいか」という考える力が育ち、次のときに生かせるようにすること。感情的に怒ると、「叱られる」という印象だけが残って、考えたり工夫したりする力が育たなくなるのです。

子どもは経験が足りないだけで、本当はいろいろなことを理解しています。そのため、大人が「困った」と感じるような場面でも、子どものことをひとりの人間として尊重し、共感する気持ちを示せば解決することも多いものです。子育ては調教ではないので、ダメなところを直そうとするのではなく、子どもの努力や気づきを認めて気持ちに寄り添っていきましょう。

 

「ほめる」「叱る」のほかにもさまざまな伝え方があります

子どもとのコミュニケーションにはさまざまな方法があり、「おもしろいね!」といった感想をそのまま言葉にしてもいいですし、「あなたはこれをやりたいんだね。でも、お母さんはこういう理由で困ってしまうの。どうしたらいいかな?」と解決策を一緒に考えていく方法もあります。正論を貫くだけではなく、時にはユーモアでかわしたり、「今日だけは特別ね」という日があるのもワクワクしますね。世の中の物事は○と×だけで判断できるわけではないので、「ほめるか、叱るか」という視点から自由になって、柔軟な心で子どもと接していきましょう。そうすることが、子ども自身のしなやかに物事を考える力を育むことにもつながります。

 

 

がんばりすぎないために「なぜ叱るのか」を考えてみませんか?

子どもをつい叱ってしまうのは、子育てをがんばりすぎているからかもしれません。「なぜ叱るのか」を考え直してみると、叱る必要のない場面も多いことが見えてきて、気持ちにゆとりが生まれるはずです。

叱らないといい子に育たないのでは?

共感してもらうことで人への信頼感が育ちます

何でも大人の言いなりになる子が「いい子」なのでしょうか。それは違いますよね。「わが子には、自分の意思をしっかり主張できる人になってほしい」と願う人が多いのでは? そのためには、幼児期に共感してもらう体験を積み重ね、「自分の意見は周囲の人に受け入れてもらえる」という人への信頼感を育むことが大切です。この年代の「イヤ!」は「ダメな理由が自分でわかるまでやらせてほしい」という意味なので、叱らなかったからといって悪い子にはなりません。

 

怒鳴ってしまうのは言うことをきかないから

ママの言動が子供のお手本に

子供は、一番身近な大人である親の言動からコミュニケーションの取り方を学びます。日ごろから「言うことをきかないと怒鳴られる」という経験をしている子は「自分の思い通りにならないときは怒鳴ればよい」と学ぶので、周囲の人にもそのような態度で接するように。逆に、親が子どもの声によく耳を傾けていれば、その態度がお手本になります。

 

失敗しないように注意してあげないと……

失敗も子供には大切な体験です

例えば、靴を左右反対に履いたときに無理やり直されると、子どもには「いつか自分の思い通りにやってみせる」というモヤモヤした気持ちが残ります。この気持ちが積み重なると、思春期に爆発してしまうことも。「左右が逆だと歩きにくい」ということを自分で体験して理解すると、子どもは納得して正しい履き方をするようになります。失敗も大切な体験なので、命にかかわること以外はあたたかい目で見守りましょう。

 

子供の気持ちに寄り添う関わり方のヒント

子供がうれしいのは、「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じるときです。無理することなく子どもの気持ちに寄り添えるよう、5つのヒントを参考にしてください。

ヒント1

評価ではなく自分が感じたことを言う

子供への共感を示すには無理にほめる必要はなく、「感動した」「びっくりした」「おもしろいね」といった素直な気持ちを伝えるだけで十分です。感情を表すさまざまな言葉を耳にすると、「こんな気持ちのときはこう言うんだ」ということがわかるようになり、子供自身の感情表現を豊かにすることにもつながります。

 

ヒント2

感情的になってしまったら素直に「ごめんなさい」を

親も人間なので、感情的になるときがあるのは仕方のないこと。そんなときは冷静になってから、「さっきは怒りすぎてごめんね」と謝りましょう。態度で察してもらおうとするのではなく、きちんと言葉で伝えることが大切です。親のそのような態度が、子供にとって「まちがえたときは素直に謝ればよい」というお手本になります。

ヒント3

子供の気持ちを想像して言葉にする

この年代の子供はまだ自分の気持ちを言葉で十分に表現することはできません。でも、相手が言うことに対して「そうだ」「それは違う」という意思表示はできることが多いので、子供の気持ちを想像して言葉にしてみましょう。「自分の気持ちをわかろうとしてくれている」ということが伝われば、それだけでも子供は安心できます。

 

ヒント4

「あなたが好き」の気持ちは変わらないことを伝える

子供にとって母親は「自分の命を支えている存在」なので、その人に否定されるのは生命の危機と言ってもよいほどの一大事です。叱ったときは必ず理由を伝え、「この行為がダメなのであって、あなたのことが大好きなことに変わりはない」というフォローを。「ダメな子ね」など、人格を否定するような言い方は避けて。

 

ヒント5

「こうするといいね」と次に役立つアドバイスを

子供が何かできなくて困っている場合には、「次はこうするといいね」と必要な知識を教えたり、「こんな方法やあんな方法もあるよ」といくつかの解決策を示したりするとよいでしょう。ただし、子供は自分で実際にやってみなければわからないので、最初から「こうしなさい」と命令するのではなく、試行錯誤のプロセスを見守ることも大切です。

 

井桁容子先生の保育現場から

「それはおかしいね」と伝えた子供から返ってきた言葉は……

ある日、長靴を「履けない!」と投げ捨ててしまったAちゃん。先生は「あらあら、それはおかしいですね」と声をかけ、Aちゃんが自分で靴を取りに行けるまで見守りました。すると、翌朝、登園してきたAちゃんからは「先生、大好き!」という言葉が。先生が自分と誠実に向き合っているからこそ「おかしい」と指摘してくれたのだということは、幼い子供でもちゃんと理解しているのです。

 

お話をうかがったのは

井桁容子 先生

東京家政大学ナースリールーム主任。一人ひとりに寄り添う温かな保育に定評があり、『ありのまま子育て』(赤ちゃんとママ社)、『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』(小学館)など著書多数。男女2人を育てたママでもある。

『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』(小学館)

 

イラスト/Chao 構成/童夢

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